帝国データバンクの調査によると、2024年度の「後継者難倒産」は507件に達し、2年連続で500件を超える高水準となりました。後継者難で倒産した企業の社長平均年齢は69.8歳と高齢であり、社長の平均年齢は60.7歳と34年連続で過去最高を更新しています。
「息子に任せて大丈夫だろうか」「古参社員が反発しないだろうか」……そんな不安を抱えていませんか?
この記事では、社長交代で業績が悪化する「本当の原因」を構造的に解説し、失敗する会社に共通する5つの特徴、そして承継を成功させるための5つのステップをお伝えします。
【2026年2月24日 最終更新】
目次
なぜ社長交代・代替わりで業績が悪化するのか?
社長交代による業績悪化は、単なる「後継者の力量不足」では説明できません。そこには構造的なメカニズムが存在します。
経営方針の断絶と、組織の「遠心力」
先代社長がカリスマ性で組織をまとめていた会社では、新社長の「新しいやり方」が導入された途端、組織に遠心力が働き始めます。
特に急激な改革は、古参社員のアイデンティティを否定することにつながりかねません。大塚家具のケースでは、父娘間の経営方針の違いが感情的対立に発展し、最終的には顧客離れを招く結果となりました。
重要なのは、「やり方の違い」は表面的な問題に過ぎないということです。本質は、社長交代によって組織内の力学が大きく変化することにあります。
人間関係を複雑にする「スリーサークルモデル」
ファミリービジネス(同族経営)の研究で用いられる「スリーサークルモデル」は、事業承継で起きるトラブルの構造を理解するのに非常に有効です。
このモデルでは、ファミリービジネスを構成する要素を3つの円(サークル)で表します。
1. ファミリー(家族):血縁関係、感情的なつながり
2. ビジネス(経営):会社経営への直接的な関与
3. オーナーシップ(所有):株主・オーナーとしての立場
この3つの円が重なり合う部分で、利害の衝突が生じやすくなります。それぞれのサークルに属する人々は、異なる視点や期待を持っているからです。
たとえば、経営に関与しない株主(叔父や親戚など)は「配当をもっと増やせ」「設備投資に反対だ」といった要求をすることがあります。一方、親族外の古参役員は、若い後継者に対して「現場を知らない」と面従腹背の姿勢を取ることも珍しくありません。
このモデルが示す重要なポイントは、事業承継におけるトラブルの多くは「性格の不一致」ではなく「立場の違い」から生まれる構造的な問題だということです。
だからこそ、事業承継を成功させるには、関係者それぞれがどのサークルに属し、どんな利害関係を持っているのかを事前に整理し、対策を講じることが不可欠なのです。
財務の「見えない時限爆弾」
金融機関は「会社の資産」だけでなく「社長の資質」も見ています。実績のない後継者に代わった途端、融資条件が厳しくなるケースは少なくありません。
また、優良企業ほど自社株の評価額が高くなります。後継者が株式を買い取れない、相続税が払えないという事態が「黒字廃業」の正体です。
さらに、後継者が連帯保証を引き受けることを拒否し、承継が頓挫するケースもあります。
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業績悪化・失敗する会社に共通する5つの特徴
ここからは、社長交代で失敗する会社に共通する5つの特徴を解説します。自社に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
【特徴①】準備期間が1年未満、または突発的
社長の急死や病気による緊急交代では、ノウハウや人脈が十分に引き継がれないまま、後継者が経営の舵取りを任されることになります。
中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、後継者の育成期間も含めると「5年から10年以上の準備期間が必要」とされています。平均引退年齢が70歳前後であることを考えると、60歳頃には事業承継に向けた準備を始めるべきです。
参考:中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf
実際、「まだ元気だから」「息子がその気になったら」と先送りしているうちに手遅れになるケースが後を絶ちません。
関連記事:事業承継でトラブル発生!よくある失敗事例とは?
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【特徴②】後継者が先代を「模倣しすぎる」または「否定しすぎる」
二代目社長が陥りやすいパターンは2つあります。
ひとつは「模倣型」。時代が変わっているにもかかわらず、先代の成功体験(勘と度胸の経営)をそのまま真似て失敗するパターンです。
もうひとつは「否定型」。自分の色を出そうと焦るあまり、先代の功績を全否定する改革を行い、組織を壊してしまうパターンです。
処方箋は「守破離」の精神です。まずは先代のやり方を「守る」ことから始め、徐々に「破り」、最終的に「離れて」独自の経営スタイルを確立していく。守るべき伝統と変えるべき革新を区別することが重要です。
関連記事:先代から会社を継いだ後継社長が注意すべきポイント
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【特徴③】古参幹部・ベテラン社員を掌握できていない
自分より年上で、先代と共に苦労してきた「番頭」格の社員との軋轢は、多くの後継者が直面する問題です。
こんな状況に心当たりはありませんか?
・会議で後継者の発言がスルーされる
・重要な情報が上がってこない
・「前の社長はこうだった」と比較される
これらは危険信号です。放置すれば「面従腹背」や「集団離職」につながる可能性があります。
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【特徴④】株式の分散・相続トラブルを放置している
経営に関与しない親族に株式が分散していると、重要な意思決定ができなくなります。定款変更やM&Aなどには「3分の2以上」の議決権が必要ですが、その確保ができていない会社は少なくありません。
また、遺言書を書いていても配慮が不足していると、死後に遺留分をめぐる泥沼の争いに発展することがあります。
「黒字なのに廃業」となる会社の多くが、このパターンに該当しています。
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【特徴⑤】相談相手がおらず「密室」で承継を進めた
従業員や取引先に事前の根回しをせず、突然「明日から息子が社長だ」と発表するのは最悪のパターンです。周囲の不信感を招き、組織の結束が一気に崩れます。
また、M&Aを検討する際に情報漏洩を恐れるあまり、専門家に相談せず独断で進めて失敗するケースも見られます。
事業承継は「密室」ではなく「専門家と共に」進めるべきものです。
関連記事:事業承継は誰に相談すべき?
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社長交代を成功させる5つのステップ
ここからは、中小企業庁の事業承継ガイドラインをベースに、実践的な5つのステップを解説します。
【ステップ①】現状の「見える化」(企業価値診断)
まず行うべきは、自社の現状を正確に把握することです。
決算書だけでなく、「知的資産(ノウハウ・人脈・取引関係)」と「負の資産(連帯保証・潜在的な係争リスク)」を棚卸しましょう。
また、自社株の評価額を把握していますか? 多くの経営者が「知らない」と答えますが、これを知らないままでは相続対策も立てられません。
まずは専門家による簡易診断を受けることをおすすめします。
【ステップ②】経営の磨き上げ(属人性の排除)
不採算事業の整理、業務のIT化・マニュアル化を進め、「社長がいなくても会社が回る仕組み」を作ることが目標です。
この「磨き上げ」は、親族承継だけでなくM&Aでの売却価格向上にもつながります。
【ステップ③】承継計画の策定と専門家マッチング
「親族内承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」のどれが最適かを、先入観なくフラットに検討しましょう。
帝国データバンクの調査では、2024年の事業承継において「内部昇格」(36.4%)が「同族承継」(32.2%)を上回りました。無理に子供に継がせることが正解とは限りません。
参考:帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2024年)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/succession2024/
税理士・弁護士・M&A仲介など、必要な専門家を早めに選定することも重要です。
関連記事:後継者がいない会社、どうすればいい? 4つの解決策
https://www.kizuna-corp.com/column/4_solutions/
【ステップ④】PMIと「最初の100日」プラン
社長交代直後の「最初の100日」が勝負です。この期間に以下のことを実行しましょう。
・新社長による全社員との面談
・主要取引先への同行挨拶
・金融機関への説明と信頼構築
また、先代社長は「相談役」に退き、決定権は新社長に完全に譲ることが大切です。口は出さずに、資金援助と人脈だけを残す——これが理想の「院政回避」です。
関連記事:ジャパネットたかたに見る「勝ち組事業承継」のポイント
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【ステップ⑤】法的手続きとアフターフォロー
株式譲渡、登記変更、金融機関との保証解除交渉など、法的手続きには税務・法務の専門知識が必須です。独断で行わず、必ず専門家のサポートを受けてください。
承継後も定期的なモニタリングを行い、問題があれば早期に対処することが重要です。
まとめ――社長交代は「第2の創業」。早期準備が会社を救う
社長交代はリスクであると同時に、会社を若返らせ、次の成長ステージへ進む最大のチャンスでもあります。
失敗する会社の共通点は「先送り」と「相談不足」。
成功する会社は「早期着手」と「専門家の活用」を徹底しています。
事業承継は一社一社事情が異なります。まずは専門家による「事業承継診断」を受けることから始めてみませんか?

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●FAQ:
【Q1】社長交代にはどれくらいの準備期間が必要ですか?
A:一般的には5〜10年が理想的とされています。後継者の育成だけでなく、株式の移転や個人保証の解除にも年単位の時間が必要です。「まだ早い」と思った時が始め時です。
【Q2】後継者がいない場合、どんな選択肢がありますか?
A:主に「従業員承継」「第三者承継(M&A)」「廃業」の3つがあります。近年はM&Aによる承継が増加しており、従業員の雇用を守りながら会社を存続させる選択肢として注目されています。
関連記事:後継者がいない会社、どうすればいい?4つの解決策
https://www.kizuna-corp.com/column/4_solutions/
【Q3】事業承継の相談はどこにすればいいですか?
A:顧問税理士、取引銀行、事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)、M&A仲介会社などが選択肢です。相談先によって得意分野が異なるため、複数の専門家に相談することをおすすめします。
関連記事:事業承継は誰に相談すべき?
https://www.kizuna-corp.com/column/contact-information/
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役




