ローカルM&Aマガジン

後継者がいない会社、どうすればいい?――4つの解決策とは

投稿日:2024年8月6日

[著]:小川 潤也

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あなたの会社に後継者はいるでしょうか?

「跡継ぎは決まっていないけど、何とか会社を残したい……」――そんな思いを抱いている経営者は少なくありません。

それでは、どうすれば後継者候補のいない中小・零細企業を存続させることができるのでしょうか? 今回の記事では、後継者がいない中小・零細企業を残す方策を徹底解説します。

親族外の承継が増加して、後継者問題が改善傾向に?

「企業経営の継続に関するアンケート調査」(中小企業庁委託、2016年)によると、廃業を考えている理由として「業績が厳しい」(37.3%)が最多で、次が「後継者を確保できない」(33.3%)でした。「事業の将来性がない」「子どもには自分のような苦労をさせたくない」と考えて自ら廃業を選択する経営者もいますが、後継者不足・後継者不在が事業承継の大きなネックになっているのです。

事業継承が進まないこともあって、社長の高齢化が止まりません。帝国データバンクの2023年の調査によると、社長の平均年齢は60.5歳でした。これは実に33年連続の上昇です。しかも、50歳以上の社長が81.0%を占めています。片や40歳未満の社長はわずか3.1%しかいません。

ところが実は、後継者不在率は年々低下しています。帝国データバンクの2023年の調査によると、後継者不在率は6年連続で改善し、53.9%でした。行政による事業承継支援策の強化に加えて、親族承継に留まらずに従業員承継や第三者への売却といった多様な選択肢が普及してきたことが要因として考えられます。

「娘しかいないんだけど……」という相談が増加

当社にも、経営者から後継者不在のご相談が数多く舞い込みます。最近、たまに聞くのが「娘しかいなくて会社を継がせられない」というご相談です。

たとえば……
「娘の旦那に継いでもらいたくても、別の会社に勤めているからそうもいかない」
「娘はうちの会社で働いているけど、経理しかやっていないから経営は任せられない」
「そもそも娘本人に経営する意志がない」
といったものです。

地方の家族経営的なオーナー企業では、社長が娘に総務や経理を任せているケースが珍しくありません。この場合、幹部社員ら従業員が事業を承継すると、経理担当として残った先代の娘の扱いに困ることがあります。親が引退して、娘だけが残って、娘自身もやりずらい、残りずらいということであれば、娘には退職金を渡して、退職してもらうと方法もあります。また、株を娘に渡し、オーナーとして、会社を見守ってもらうという方法もあります。

ただし、M&Aの場合、娘が会社に残ってもさほど問題にはなりません。実際、会社を売った先代社長は引退するものの、娘はそのまま経理担当として残り、円満に働き続けているという成功事例があります。経営者の娘はお父さんを見て、育ってますので、譲受け先からも頼りにされるケースも多いです。

もし、子どもは娘しかおらず、その娘に引き継がせることができないという悩みを抱えているなら、M&Aを検討する価値はあるでしょう。

後継者がいない会社、解決策は?

ここで改めて「子どもが継がない」ケースの選択肢を考えてみましょう。

1.役員・従業員への事業承継

帝国データバンクの2023年調査によると、役員や社員を登用した「内部昇格」が35.5%を占め、子どもらへの「同族承継」(33.1%)を抜いて初めてトップになりました。

後継者が役員や従業員なら、事業や社内事情、顧客などことについて精通しているというメリットがあります。

一方で、後継者が自社株を買い取る資金の工面方法など、クリアしなければならない課題もあります。

2.M&A

親族も従業員も会社を継がないなら、第三者への会社売却・M&Aという手段があります。M&Aの比率も年々高まっており、2023年には20.3%に達しました。内部昇格と合わせると、50%を超えています。事業承継の「脱ファミリー化」が進んでいるといえます。

M&Aのメリットの1つは、創業者利益を得られることと。M&Aでは多くの場合、負債も含めて譲渡します。社長は個人保証も外すことができれば、引退後に負債を抱えなくてすむでしょう。

もう1つは、事業を継続できること。これまで積み上げてきたノウハウを後世に残すとともに、従業員の雇用も守ることができます。

3.株式公開(IPO)

株式を公開すれば、多大な創業者利益を得る可能性が高い。ただ、上場基準をクリアできる企業はほんの一握り。現実的には、後継者不在を理由に株式公開を検討する企業は極めて稀でしょう。

4.廃業

東京商工リサーチによると、2023年の「休廃業・解散」企業は、過去最多の4万9,788件でした。コロナ支援策による廃業先送りの揺り戻しがあったようです。

廃業とは、自ら会社をたたむこと。会社が持つ在庫や不動産、設備機器などを売却すればお金が手に入りますが、在庫や設備機器は二束三文にしかならないことが多い。資産の含み益や株式の清算配当には税金がかかります。多額のお金が手に入るケースは多くはありません。

まとめ

上で触れたように、同族承継の割合が低下し、従業員承継やM&Aが右肩上がりで伸びてきています。親族が承継しないケースでも、会社を残す選択肢が増えているのです。

もし、会社を残したくても後継者がいないなら、M&Aを検討する価値は大きいといえます。そのM&Aでもオプションはいつくかありますので、検討が必要ですが、中小・零細企業の事業承継の案件を多く実績のある、M&A仲介会社に相談してみましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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