しかし、こういった問題を解決して事業承継を成功させる、「持株会社方式(ホールディングス化)」という手法をご存じでしょうか?
今回の記事では、持株会社方式による事業承継について、その仕組みとメリットを紹介します。
持株会社方式の事業承継とは?
まず、持株会社方式の事業承継について概要を説明しましょう。
「持株会社」とは?
持株会社とは、事業を営む子会社の株を保有することにより、事業子会社を支配・保有する会社のことです。大企業にある「株式会社○○ホールディングス」といった会社が、持株会社です。
持株会社には、「事業持株会社」と「純粋持株会社」の2種類があります。
事業持株会社とは、自社でも事業を営みながら、子会社を管理する持株会社の機能を果たす会社のことで、1997年以前は独占禁止法によって、日本では事業持株会社しか認められていませんでした。
一方、純粋持株会社とは1997年の独占禁止法改正によって認められるようになった、製造や販売などの機能を持たずに、事業子会社の管理だけを機能とする会社を指します。
純粋持株会社は単体では事業を営む機能を持っておらず、保有する子会社株式の配当金を受け取る形で利益を得ます。
持株会社方式の事業承継とは?
持株会社方式の事業承継は、具体的には次の3つのプロセスで進められます。
① 後継者が、持株会社となる新法人を設立する
② 新法人が金融機関からの融資を受ける
③ ②で調達した資金によって新会社が先代オーナーから株式を買い取る
通常の事業承継では株式を先代個人から後継者個人に移転しますが、持株会社方式の事業承継においては株式を移転する先が後継者個人ではなく、後継者がオーナーとなる新法人(持株会社)である点が、通常の事業承継との大きな違いです。
持株会社方式の事業承継では、承継したい会社は新法人の事業子会社として事業を継続するスキームとなります。
持株会社方式の事業承継のメリットとは?
それでは、持株会社方式は通常の承継とは異なるメリットがあるのでしょうか?
後継者に資金がなくても事業承継できる!
個人へオーナー企業を事業承継する場合に常につきまとうのが、株式移転に伴う費用の問題です。
事業承継のために株式を売却する場合は後継者が譲渡代金を払わなければならないし、相続や贈与によって移転するのであれば相続税・贈与税が生じる恐れがあります。
しかし、持株会社方式の事業承継では、新法人が銀行から資金を借り入れて、株式の移転費用を払うことができるのが大きなメリットです。資金のない個人が承継するケースでは、新法人を間に挟んでスムーズに株式を移転できる可能性が高くなります。
しかし、新法人が銀行から融資を受けられるか、どうか、これがこのスキームの最大のポイントです。融資の返済原資は事業会社からホールディングスへの配当金となります。配当金と返済金、そして、保証人。融資を受ける際にはこれらを銀行と相談する必要があります。
承継後の株式分散を防止できる!
特に相続をきっかけに株式を親族に移転する場合、事業承継後に株式が分散してしまうリスクがあります。そうして実際に経営に関与しない親族が大株主になり、後になってトラブルにつながる事例は決して少なくありません。
しかし持株会社方式をとれば、後継者が100%オーナーである法人にすべての株式を譲渡することができます。株式が分散して会社の支配権がバラバラになる危険を排除できるのです。
節税効果が期待できる!
繰り返しになりますが、株式の承継に伴う相続税・贈与税の発生は、事業承継における大きな問題です。
持株会社方式の事業承継では、受け渡し先になる新法人に株式譲渡代金の支払いが生じるものの、承継者が個人として税負担は発生しません。
ただし、先代のオーナーには承継によって株式の譲渡代金が入ってくるため、譲渡益に対して約20%の株式譲渡益課税が発生する点には注意が必要です。
とはいえ、税金は株式の譲渡代金を原資として支払えるので、先代が税金を払えないリスクはほとんどありません。
まとめ
「ホールディングス」というと大企業にしか関係のない話だと思われるかもしれませんが、中小企業でも持株会社を利用して事業承継することは可能であり、メリットが非常に大きい方法です。
事業承継に伴う株式移転でお悩みの経営者は、いちど持株会社方式について検討してみることをおすすめします。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役