ローカルM&Aマガジン

会社を売るにはどうしたらいい? 中小企業M&A「はじめ方」完全ガイド【流れ・相場・失敗回避】

投稿日:2026年3月3日

[著]:小川 潤也

「後継者がいない」
「自分の代で会社を畳むべきか、それとも第三者に託すべきか……」そんな深い悩みを抱えて、この記事にたどり着いた経営者の方も多いのではないでしょうか。

長年、手塩にかけて育ててきた会社です。その将来を決めることは、経営者人生における最後にして最大の決断と言えるでしょう。

かつて「M&A(会社売却)」と聞くと、大企業による敵対的買収や「乗っ取り」「身売り」といったネガティブなイメージを持つ方が大半でした。しかし、現在は状況が全く異なります。

中小企業庁と帝国データバンクのデータによれば、日本国内の企業の約99%を占める中小企業において、後継者不在率は依然として高水準です。これを受け、M&Aは「第三者への友好的な事業承継」という手段として、中小企業の間でも当たり前に活用されるようになりました。

参照:「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/

参照:「中小企業白書小規模企業白書 2025年版」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf

では、もし「廃業」を選択した場合、どうなるでしょうか。

在庫の処分、店舗・工場の原状回復、従業員への退職金支払い等々、多額のキャッシュフローが出ていきます。結果として手元に現金が残らないばかりか、借入金の個人保証が残り、老後も返済に追われるケースさえ珍しくありません。

一方で「M&A」を選択すれば、以下のような未来が開ける可能性があります。
•創業者利益: 会社の価値に見合った現金を対価として得られる
•経営者責任の承継: 事業存続や借金の重圧から解放される
•事業の存続: 従業員の雇用を守り、取引先との関係も維持できる

本記事では、会社売却を検討し始めた経営者の皆様に向けて、M&Aの基本的な流れから、「いくらで売れるのか」という相場の計算方法、手数料や税金の仕組み、そして失敗を避けるためのポイントまで解説します。

M&Aは一生に一度あるかないかのイベントです。知識不足で損をしたり、後悔したりしないよう、ぜひこのガイドをブックマークして読み込んでください。

なぜ今、「廃業」ではなく「会社を売る」のか?

廃業の現実:黒字でも残らないお金

近年、後継者不在を理由に「黒字廃業」を選ばざるをえない企業が増えています。

「誰にも迷惑をかけずに、自分の代できれいに畳みたい」

そう考える経営者の責任感は素晴らしいものですが、廃業には想像以上のコストがかかることをご存知でしょうか。

具体的な「廃業コスト」として何がかかってくるかを整理してみましょう。

【廃業コストの例:年商3億円の製造業】
•原状回復費: 工場の機械撤去、土壌汚染調査、建物の解体・修繕費など(数百万〜数千万円)
•在庫処分損: 商品や原材料を二束三文で売却、あるいは廃棄処分する費用
•従業員対応: 解雇予告手当、退職金の割り増し支給(誠意として支払う場合)
•違約金: リース契約の途中解約金、取引先への補償

たとえ貸借対照表(BS)上の純資産がプラスであっても、これらのコストを差し引くと、最終的に手元に残る現金はごくわずか、あるいはマイナスになるケースが多々あります。

最悪の場合、会社の資産を整理しても借入金を返しきれない場合、経営者個人の貯蓄や自宅を売却して返済に充てるという、過酷な老後が待っています。

関連記事:会社をたたむのに費用はどのくらいかかる?
https://www.kizuna-corp.com/column/grocerystrore/

M&Aがもたらす「三方よし」の未来


対して、M&Aによる会社売却は、売り手・買い手・従業員の三者にメリットをもたらす「三方よし」の選択肢です。

1. 売り手(経営者)のメリット
最大のメリットは「創業者利益の獲得」と「個人保証からの解放」です。

長年の苦労が報われる形でまとまったキャッシュを手にすることができ、ゆとりある老後資金や、新たな挑戦のための原資を確保できます。

また、多くの中小企業経営者が頭を悩ませている金融機関への「個人保証(連帯保証)」は、M&Aによって買い手企業に引き継がれ、解除されるのが一般的です。

借金の重圧から解放されることは、金銭的な利益以上に、精神的な大きな自由を意味します。

参照:「中小 M&A ガイドライン(第3版)」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf

2. 買い手のメリット
買い手企業にとってのメリットは「時間を買える」ことにあります。

新規事業をゼロから立ち上げるには、人材採用、育成、販路開拓、許認可取得など、膨大な時間とコストがかかります。M&Aであれば、すでに稼働しているシステムを一括で手に入れられるため、事業拡大のスピードを劇的に早めることができます。

3. 従業員・取引先のメリット
何より「雇用が守られる」という安心感があります。廃業なら全員解雇(会社都合退職)となるところを、M&Aなら雇用契約が継続されるのが基本です。

また、買い手が大手企業であれば、資金力を背景に設備投資が行われたり、福利厚生が充実したりと、従業員にとってもプラスになる可能性があります。

取引先に対しても、供給責任を果たし続けられるため、サプライチェーンを寸断させることなく企業の責任を全うできます。

M&Aのメリット・デメリット完全解剖

M&Aには多くのメリットがある一方で、見落としがちなデメリットやリスクも存在します。綺麗な話だけでなく、影の部分も直視して比較検討しましょう。

経営者にとってのM&Aのメリット・デメリットは?

•メリット
o創業者利益:株式譲渡益(分離課税約20%)として現金が手に入る。
o個人保証解除:自宅担保や連帯保証が外れ、家族に資産を残せる。
o事業承継の完了:後継者問題の悩みから解放され、肩の荷が下りる。
oアーリーリタイア:体力があるうちに第二の人生をスタートできる。

•デメリット
oオーナーロス:長年育てた会社を手放すことで、アイデンティティを失ったような喪失感(燃え尽き症候群)に陥る可能性がある。
oロックアップ:売却後も一定期間(半年〜数年)、顧問として残り、業績達成の責任を負う契約(アーンアウト条項など)を結ぶ場合がある。
o競業避止義務:売却後、近隣エリアなどで同業種のビジネスを始めたり、競合他社で働くことが法律および契約で禁止される。

特に注意すべきは「オーナーロス」です。日々会社に行っていた経営者が、急に「明日から来なくていい」と言われた時の虚無感は計り知れません。

オーナーロスを避けるためには、後述する売却後の人生設計が重要になる理由はここにあります。

従業員にとってのメリットとデメリットは?

従業員にとっても、M&Aは大きな転機となります。

•メリット:
o雇用が維持される。
o大手グループ入りによるブランド力向上、信用力アップ。
o教育制度や福利厚生の充実。

•デメリット:
o企業文化の違い(管理体制の変更、人事制度など)への適合ストレス
o経営者の交代(株主、社長の交代)。経営方針の変更があります。
o配置転換や転勤の可能性。

「M&Aをしたら社員が辞めてしまうのではないか?あるいは、頑張ってくれていた社員たちが解雇されるのでは」

これは多くの経営者が抱く不安です。しかし、丁寧な説明と、買い手選び(従業員を大切にする会社かどうか)を慎重に行うことで、離職を防ぐことは十分可能です。むしろ、「会社が強くなった」と喜ばれるケースも少なくありません。そして、大手に買収された場合、ビックリするくらい従業員はニコニコしているケースが多いです。

【図解】会社売却の具体的な流れと期間

M&Aは思い立ってすぐできるものではありません。全体で平均6か月から1年程度かかります。

図 M&Aの全体フローチャート

一般的なM&Aプロセスのうち統合前の「準備」「マッチング・交渉」「最終契約・クロージング」の3フェーズについて、各ステップで経営者が「何をすべきか」を詳しく見ていきましょう。

フェーズ1:準備・検討期(1〜2か月)
M&Aの成否は「準備が8割」と言われます。

1.意思決定と目的の整理:
「なぜ売るのか」「売却後の従業員をどうしたいのか」「最低いくら欲しいのか」。この軸がブレると、交渉中に迷走してしまいます。

2.アドバイザー(専門家)の選定:
大手M&A仲介会社、地元のM&A仲介会社、FA(大手監査法人や証券会社)、銀行、地域の引継ぎ支援センターなどからパートナーを選びます。
o仲介会社: 売り手・買い手の間に入り、成約を目指す。マッチングスピードが速い。
oFA(ファイナンシャル・アドバイザー): 売り手側の味方として、利益最大化を目指して交渉する。売買金額が10億円以上の案件向け。

3.プレデューデリジェンス(磨き上げ):
決算書や社内規定を整理し、会社を「買いやすい状態」にします。
o私的な経費(社長の個人的な交際費や高級車など)の洗い出し
o未払い残業代の確認
o株主名簿の整備(名義株の解消など)

フェーズ2:マッチング・交渉期(2〜4か月)
1.ノンネームシート(ティーザー)の作成:
社名が特定されない範囲(例:「関東地方の食品製造業、売上5億円」など)の概要書を作成し、買い手候補に打診します。これを「ネームクリア」のプロセスと呼びます。

2.秘密保持契約(NDA)の締結:
興味を持った買い手とNDAを結び、会社案内や決算書などの詳細情報(インフォメーション・メモランダム:IM)を開示します。

3.トップ面談:
経営者同士が直接会う、最重要イベントです。
【ここがポイント!】
トップ面談は「条件交渉の場」ではありません。お互いの「相性」「経営理念」「ビジョン」を確認するお見合いの場です。
o「なぜ当社に興味を持たれたのですか?」
o「買収後、従業員の雇用はどう考えていますか?」
o「御社の将来のビジョンを教えてください」

こうした質問を通じて、相手が信頼に足る人物かを見極めます。

関連記事M&Aのトップ面談とは? ――“ただの顔合わせ”ではない成功の鍵を解説

M&Aのトップ面談とは? ――“ただの顔合わせ”ではない成功の鍵を解説

4.意向表明書(LOI)の受領と基本合意:
買い手から、買収価格や諸条件が書かれた「意向表明書」が提出されます。条件が合えば「基本合意書(MOU)」を締結し、独占交渉権を付与します。

フェーズ3:最終契約・クロージング(1〜3か月)
1.デューデリジェンス(以下、DD):
買い手側の公認会計士や弁護士が会社にやってきて、財務・法務・税務・ビジネスなどのリスクを徹底調査します(買収監査)。

数日間にわたり、大量の資料請求やヒアリングが行われます。非常に負担がかかりますが、ここで嘘をついたり隠し事をしたりするのは厳禁です。発覚すれば即破談、あるいは損害賠償沙汰になります。

2.最終契約書(DA)の締結:
DDの結果を踏まえ、最終的な譲渡価格や条件(表明保証、補償条項など)を確定させ、契約書に調印します。

3.クロージング(決済・引き渡し):
株式の書き換えと、譲渡代金の決済(着金確認)を行います。通常は銀行の一室に関係者が集まり、手続きを行います。

4.ディスクロージャー(公表):
クロージングと同日、あるいは直後に、従業員や取引先にM&Aの事実を伝えます。伝える順番や言い方は、アドバイザーと綿密にシミュレーションする必要があります。

会社はいくらで売却できる? 相場計算式と費用(手数料)・税金

「結局、ウチはいくらになるのか?」

ここが最も気になるポイントでしょう。自社株の評価方法と、手取りを最大化するための知識を解説します。

自社の値段を知る「年倍法(年買法)」

上場企業のような複雑な計算式ではなく、中小企業のM&Aでは「年倍法(年買法)」というシンプルな計算式が実務上の目安として広く使われています。

企業価値 = 時価純資産 + 営業権(のれん代)
1.時価純資産:

決算書の「純資産」ではありません。土地や建物、有価証券などを「時価」に評価し直し、回収不能な売掛金などを引いた「実質的な純資産」です。

2.営業権(のれん代):
会社の「稼ぐ力(ブランド・信用力など)」を評価したプレミアム価格です。
一般的には 「実質営業利益(またはEBITDA) × 1年〜5年分」 で計算されます。
o独自の技術、ブランド、特許がある:3〜5年分つくことも。
o業績が横ばい、参入障壁が低い:1〜2年分程度。

【計算シミュレーション】
•時価純資産:5,000万円
•年間営業利益:1,500万円
•評価倍率:3年分(技術力が高く評価された)

この場合、「5,000万円 +(1,500万円 × 3年)= 9,500万円」が売却価格の目安となります。

ただし、これはあくまで「目安」です。

最終的な価格は、買い手がその会社をどれだけ欲しいか(シナジー効果)によって大きく変動します。複数の買い手が競合すれば、オークション形式で価格が跳ね上がることもあります。

関連記事:M&Aで気をつけたい「のれん代」――買収後に響く“見えないコスト”の正体とは?
https://www.kizuna-corp.com/column/noren/

手数料の仕組み(レーマン方式)

M&A仲介会社に支払う成功報酬は、多くの会社で「レーマン方式」が採用されています。

取引金額(基準額) 手数料率
5億円以下の部分 5%
5億円超〜10億円以下の部分 4%
10億円超〜50億円以下の部分 3%
(以下略)

重要な落とし穴として注意したいのは、手数料率を掛ける「基準額」が会社によって異なる点です。

•株価レーマン: 「株式譲渡価格(売れた金額)」に掛ける。(売り手に有利)
•移動総資産レーマン: 「株式価値+負債総額(総資産)」に掛ける。(手数料が高くなる)

例えば、負債が大きく、株式価格が1億円の会社の場合、「移動総資産レーマン」だと数倍の手数料になることがあります。契約前に必ず確認しましょう。

また、「最低報酬(ミニマムフィー)」として1,000万〜2,000万円が設定されている場合、小規模案件ではM&A後の手取りが大きく減る可能性があります。

関連記事:M&Aのレーマン方式を徹底解説――計算方法から知られざる実態まで!
https://www.kizuna-corp.com/column/lehmanformula/

手取りを最大化する税金の知識

会社を売って得た利益(株式譲渡益)には、20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)の税金がかかります。

通常の役員報酬(総合課税で最大約55%)に比べると、非常に優遇されています。
さらに手取りを増やすテクニックとして、「役員退職金」の活用があります。

譲渡代金の一部を退職金として受け取ることで、以下の強力な節税メリットを受けられます。

1.退職所得控除:
勤続年数が長いほど、非課税枠が大きくなります。

o勤続20年以下:40万円 × 勤続年数
o勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
o(例:勤続30年なら1,500万円まで非課税

2.2分の1課税:
控除後の金額をさらに半分にしてから課税されます。

【シミュレーション:譲渡益1億円、勤続30年の場合】
•株式譲渡のみ: 約2,000万円が税金。手取り約8,000万円。
•退職金を活用: 退職金を3,000万円支給し、株式譲渡額を7,000万円に調整。
退職金にかかる税金は大幅に低くなるため、全体の手取り額が数百万円単位で増える可能性があります。
※具体的な設計は必ず税理士にご相談ください。

【失敗回避】売れない会社の特徴と失敗事例と注意点

すべての会社がハッピーエンドを迎えるわけではありません。M&Aの失敗にはいくつかのパターンがあります。まず売れない会社の特徴を見ていきましょう。

売れない会社の主な特徴

1.債務超過で、再建の見込みが立たない
「借金ごと引き受けてほしい」という相談は多いですが、時価純資産がマイナスで、かつ将来の利益(キャッシュフロー)も出ない場合、企業価値がつかず、買い手は見つかりません。

2.オーナー・社長への依存度が高すぎる(属人性)
「オーナー・社長の人脈だけで仕事を受注している」「特殊な技術を社長しか持っていない」。
この場合、社長が引退したら売上が消滅するため、買い手はリスクと判断します。権限委譲を進め、「誰がやっても回る仕組み」を作ることが重要です。

3.コンプライアンス違反(簿外債務の存在)
oサービス残業が常態化し、未払い残業代が数千万円ある。
o社会保険に加入させていない。
o粉飾決算をしている。
これらはデューデリジェンスで必ず発覚し、破談の直接的な原因になります。

4.株主や権利関係が複雑
株券が紛失している、連絡のつかない少数株主がいる、会社と個人の資産が混同されている(会社の土地が社長個人名義など)。これらはM&A実行前の整理(プレDD)で解決しておく必要があります。

関連記事:M&Aの注意点は?――ネガティブな情報こそ、隠してはならない!
https://www.kizuna-corp.com/column/reveal/

M&Aの失敗事例・2選!

事例1:高値にこだわりすぎて……(「高値づかみ」の逆)
A社長(65歳)の会社は業績好調。仲介会社から「5億円で売れる」と評価されました。しかしA社長は「もっと高く売れるはずだ」と欲を出し、8億円を希望。数社からオファーがあったものの、「安すぎる」とすべて断ってしまいました。

その後、主要取引先の倒産により業績が悪化。慌てて売りに出しましたが、時すでに遅し。最終的には当初の評価額を大きく下回る1億円でしか売れませんでした。

教訓:株価同様、企業の評価額は常に変動するもの。売り時(業績が良い時)を逃してはいけない。

事例2:隠していた事実が発覚して訴訟に
B社長は、工場の土壌汚染の可能性を知りつつ、買い手に告げずに売却しました。

しかし売却後、買い手が再開発のために調査したところ汚染が発覚。契約書の「表明保証違反」に基づき、巨額の損害賠償請求を受けました。結果、売却益の多くを賠償金に充てることになりました。

教訓:不都合な真実こそ、最初に開示しなければならない。

関連記事:中小企業のM&Aが失敗する7つの理由と、成功の秘訣を解説!
https://www.kizuna-corp.com/column/seven_reasons/

成功への鍵を握る「パートナー選び」と必要書類

★図解挿入ポイント3:必要書類マップ
指示: 「すぐに用意できるもの(定款・決算書)」と「時間をかけて整備するもの(契約書・台帳)」を分けたチェックリスト形式の図。スマホで保存して使えるようなデザイン。

M&Aは誰に相談すべきか?

M&Aの成功は、アドバイザー選びで9割決まると言っても過言ではありません。

1.M&A仲介会社:
oメリット:情報量が多く、マッチングが早い。
oデメリット:大手仲介会社は両手取引(売り手・買い手双方から手数料を取る)で、コンサルタントが手数料=インセンティブで成約しないと生き残れないので、ディールの中味よりも成約を優先させる傾向がある。
o地元の地域密着でやっている仲介会社は少ないが、親身な対応が期待できる。コンサルタントとの相性は重要。情報量は大手には劣後するが、顧客満足度は総じて高い。

2.地元の銀行・信用金庫:
oメリット:付き合いが長く安心感がある。
oデメリット:M&A専門のノウハウが弱い場合がある。自行の取引だけで完結させようとする傾向がある。

3.事業承継・引継ぎ支援センター:
oメリット:公的機関なので相談無料。中立的。
oデメリット:民間のような積極的な営業(買い手探し)は期待しにくい。

まずは公的機関や無料相談ができる仲介会社数社と面談し、「自社の業界に詳しい担当者がいるか」「悪い情報も含めて正直に話してくれるか」を比較検討することをお勧めします。

必要書類チェックリスト

M&Aをスムーズに進めるため、以下の資料は早めに準備しておきましょう。特に赤字の書類は初期段階で必須です。

•会社基本資料: 商業登記簿謄本、定款、株主名簿、会社案内・パンフレット
•財務・税務資料:決算報告書・勘定科目内訳明細書(直近3期分)
        直近の月次試算表、税務申告書
•人事・労務資料: 組織図、従業員名簿(年齢・勤続年数・給与)、就業規則
•事業・契約資料: 主要取引先リスト、不動産賃貸借契約書、借入金返済予定表、許認可証の写し

これらが整理されているだけで、買い手に対し「管理が行き届いている会社だ」という安心感を与え、評価アップにつながります。

売却後の人生(ポストM&A)を考えると?

M&Aはゴールではありません。あなたにとっては、新しい人生のスタートです。

ハッピーリタイアの落とし穴――「オーナーロス(燃え尽き症候群)」

会社を売却し、数億円の大金を手にした経営者。悠々自適な海外旅行や趣味三昧の日々……と思いきや、半年もすると「暇で仕方がない」「誰からも電話がかかってこない」という孤独感に襲われるケースが少なくありません。

経営者は、無意識のうちに「社長である自分」にアイデンティティを置いています。その肩書きがなくなった瞬間、生きる目的を見失ってしまうのです。

セカンドライフの選択肢

しかし、あなたの長年の経営経験は、社会にとって貴重な財産です。自分の経験・ノウハウを活かして、さまざまなセカンドライフの可能性があることを一度整理してみると良いでしょう。以下はほんの一例です。

•エンジェル投資家:
若手起業家に資金と経験を提供する。自分の経験が次の世代を育てる喜びを感じられます。

•経営顧問・社外取締役:
他社の相談役として、週に数回のアドバイスを行う。現役時代の知見を活かせます。

•連続起業家(シリアルアントレプレナー):
売却益を元手に、全く新しいビジネスを立ち上げる。「やはり現場が好きだ」という方に最適です。

•地域貢献・慈善活動(フィランソロピー):
NPOの運営や、地元のまちづくり活動に参加する。利益追求とは違う充実感があります。

重要なのは、売却手続きと並行して「引退後に何をしたいか」をワクワクしながら具体的にイメージしておくことです。次の目標があれば、喪失感は「達成感」へと変わり、素晴らしい第二の人生を歩み出せるはずです。

まとめ:M&Aは「会社を売る」ではなく「未来を託す」選択

ここまで、中小企業M&Aのリアルについて、メリット・デメリットなど多岐にわたって解説してきました。

M&Aは決して「身売り」や「敗北」ではありません。従業員の生活を守り、取引先に迷惑をかけず、あなたが人生をかけて育てた事業を次世代に残すための、極めて前向きで戦略的な決断です。

もし後継者が見つからずに廃業を選べば、思い出の詰まった会社は消滅し、手元には借金と虚無感しか残らないかもしれません。

しかしM&Aなら、創業者利益を手にし、個人保証の重圧から解放され、胸を張って第二の人生を歩み出すことができます。そして何より、あなたの会社のDNAは買い手企業の中で生き続けます。

もちろん、不安はあると思います。「本当に売れるのか?」「騙されないか?」
だからこそ、一人で抱え込まずに専門家を頼ってください。

「自分の会社はいくらになるのか?」まずはこれを確認するだけでも、心の霧が晴れ、選択肢が大きく広がるはずです。

経営者としての最後の仕事。それは、会社の未来を託せる最良のパートナーを見つけることです。

その第一歩を、今日ここから踏み出してみませんか。

[無料相談・株価算定シミュレーションのお申し込みはこちら]
https://www.kizuna-corp.com/contact/

よくある質問(FAQ)
Q1. 赤字会社でも売れますか?
A. 可能です。M&Aでは現在の利益だけでなく、持っている技術、特許、不動産、人材、販路などが評価されます。買い手の事業と組み合わせることで黒字化できるシナジーがあれば、高く売れる可能性もあります。諦めずに相談してください。

Q2. 従業員に知られずに進められますか?
A. 絶対に知られないように進めるのがM&Aの鉄則です。情報漏洩は「ウチの会社、売られるらしいよ」という噂となり、従業員の離職や取引先の離反を招きます。最終契約まで、情報は経営者とごく一部の幹部だけで管理し、開示はクロージング直前に行うのが一般的です。

Q3. 借金はどうなりますか?
A. 基本的に、会社の借入金は会社に紐付いているため、株式譲渡と同時に買い手企業が引き継ぎます。経営者個人の連帯保証についても、買い手の信用力に問題がなければ、金融機関との協議を経て解除されるのが一般的です。事業譲渡の場合、譲渡金額で返済することになります。

Q4. 売却までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 早ければ3ヶ月、通常は6ヶ月〜1年程度です。ただし、条件にこだわりすぎたり、特殊な業種であったりする場合は、数年かかることもあります。

Q5. 仲介会社への相談は無料ですか?
A. 多くの仲介会社では、「着手金無料」「相談無料」を採用しています。完全成功報酬制(成約して初めて費用が発生する)の会社を選べば、リスクなく自身の会社価値を知ることができます。

著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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