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中小企業のM&Aが失敗する7つの理由と、成功の秘訣を解説!

[著]:小川 潤也

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M&Aによる事業売却は、大企業に限らず中小企業にも浸透してきました。実際、中小企業M&Aの成立件数は年々増え続けています。

しかし、一般的にM&Aの成功率は3割から5割といわれており、半分以上のM&A案件は、7つの理由で交渉が頓挫し、不成立に終わっているのです。

中小企業のM&A失敗における主たる敗因と、M&Aを成功に導くための秘訣を解説します。

中小企業のM&Aが失敗する7つの理由

中小企業のM&Aが失敗に終わる原因としては、以下の理由が挙げられます。

失敗の理由①情報漏洩


小さい会社ほどM&Aに関する情報管理が甘く、情報漏洩によってM&Aが破談になってしまうというのは、非常によくあるケースです。

具体的には、従業員に「会社が売られるらしい」という噂が広まって反発を招いたり、取引先に情報が漏れて不安を抱かせ、取引を打ち切られたりする場合があります。すると事業引き継ぎ後の経営が困難になることは必至で、買い手候補は、すぐにM&A交渉から降りてしまいます。

M&Aにおいては、最終契約を結んで関係者に発表する段階になるまで、M&Aを検討していること自体を絶対に秘密にしなければいけません。

失敗の理由②簿外債務の発覚

中小企業には、財務資料にない簿外債務が発生しがちです。M&Aが成立すれば、買い手は債務の返済も引き継ぐことになります。そのため、交渉段階で簿外債務が発生すれば、買い手に与える印象は非常に悪くなります。

売り手側の経営者が、悪意から債務を隠すのは論外ですが、従業員の未払い残業代や将来の退職金、係争中案件によって将来発生しうる賠償金などは、意図せず簿外債務になっていることがよくあるので、注意しましょう。

簿外債務については、以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひ参考にしてみてください。

・M&A交渉を決裂に陥れる「簿外債務」の恐怖

M&Aを検討する前に、自社に簿外債務がないか、税理士に細かく確認しておきましょう。顧問税理士だけでなく、M&Aに詳しい税理士にセカンドオピニオンを求めるのもおすすめです。

失敗する理由③必要書類が整備されていない

M&Aにおいては、以下の書類が必要になります。特に最終交渉前に行なわれるデューデリジェンスにおいては、必須の資料です。


・株主名簿
・試算表
・総勘定元帳
・株主総会議事録
・株式や不動産の権利書
・取引先との契約書

中小企業の場合、このような書類が整理されていないケースも散見されます。書類不足によってM&Aの段取りが遅滞したり、買い手候補から敬遠されたりして、結局M&Aがご破算になってしまう恐れがあります。

買い手候補が現れてから慌てて資料を準備しても、もはや手遅れ。信頼できるアドバイザリー会社に相談し、早めの段階で資料を揃えましょう。

失敗する理由④買い手の不誠実な対応

M&Aは「会社対会社」の行為ですが、特に中小企業の場合は、「人対人」のやりとりが、成功を左右する重要な要因となります。

買い手側の経営者が売り手のオーナーのこれまでの手腕や会社の歴史を軽んじる発言をする、あるいは「安ければ買ってやる」という傲慢な態度をとることでM&Aが破談になるケースは、意外に多いのです。

買い手側の経営者としては、あくまで「買わせていただく」という謙虚な姿勢で交渉に臨むことが必要です。

失敗する理由⑤売却に反対する株主がいる

M&Aにおいては、最低でも支配権が取れる割合の株式を譲渡するのが原則です。

株式が分散されていて、大株主のなかにM&Aに強く反対する人がいる場合は要注意。買い手から「株式譲渡が困難である」とみなされ、M&Aを中止されてしまう可能性があります。

中小企業は、「お世話になったお礼」などとして経営者が株式を安易に渡し、少数株主がたくさん存在するケースもあります。

M&Aの検討の前に、持ち株比率をしっかり整理し、スムーズに株式譲渡できるようにしておきましょう。

失敗する理由⑥業績の悪化


M&Aの交渉には、通常6ヶ月程度の期間を要します。

昨今は急激にビジネス環境が変化するケースも多く、M&Aの検討を始めた時点で好調だった業績が、交渉期間中に悪化してしまう恐れがあるのです。業績の悪化によって、「M&Aによる買い手にとってのメリットがなくなった」と判断されれば、交渉は中止されてしまいます。

「M&Aが成功すれば、経営業の肩の荷が降りる」と思って気が緩むかもしれませんが、実際の譲渡までは、業績を落とさないよう慎重に経営しましょう。

失敗する理由⑦経営者が突然引退することになった

M&Aを検討するオーナーは高齢者が多く、オーナーが突然体調を崩して経営を続けられなくなるリスクがあります。

M&Aが最終契約に至らないまま現経営者が倒れれば、社内の混乱は必至。その後の交渉で円満にM&Aを成立させることは、非常に難しくなります。

人間の体調を完全にコントロールすることはできませんが、健康上の不安が顕在化する前に、早めにM&Aの段取りを始めましょう。

まとめ

中小企業のM&Aが失敗する理由と、それらを乗り越えて成功する秘訣について述べました。

突き詰めると、失敗の理由は「準備不足」と「タイミング」という2つにつきます。

必要な準備や考えうるリスクについて、最初にアドバイザリー会社と綿密に話し合ったうえで、具体的な買い手探しを始めましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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