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M&A交渉を決裂に陥れる「簿外債務」の恐怖

2020.06.23
[著]:小川 潤也
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M&A交渉において、「簿外債務」が問題になるケースはしばしば発生します。

買い手企業は、売り手企業の資産と負債の額を重要な判断材料としてM&Aを判断するもの。実は決算書に載っていない負債があった、ということになれば大問題です。

特にM&Aにおいて深刻な問題になることの多い「簿外債務」について説明しましょう。

簿外債務とは?


簿外債務とは、企業の貸借対照表に計上されない債務のことを指します。
特に中小企業の場合、以下のような帳簿に載らない債務が存在していることが多いです。

隠された借入金

借入金を確信犯で隠し、粉飾決算しているケースです。現金出納帳と実際の現金とが異なる場合もあります。齟齬が生じる部分は在庫や売掛金、代表者借入などの金額をいじって借入がないように見せることが多いですが、決算書類を見ることに慣れたプロにはすぐに見抜かれてしまいます。

回収不能な売掛金

得意先への売掛金のうち、回収不可能なものが発生する場合もあるでしょう。その場合は売掛金を損金として計上しなければいけません。しかし、実際に「回収不可能」と判断するのは基準が難しいところでもあり、回収の見込みがなくても金融機関の融資審査に影響するのを嫌がって売掛金として計上し続けることがあるのです。

当社の見てきた中でも、10年間回収できていない売掛金が貸倒損失として処理されていなかったケースがありました。これは正当な理由がなければ当然、貸倒損失として計上すべきです。

退職金

会計上、従業員に対して将来支払う退職金は、現在の価値に換算した上で負債に計上することになります。しかし、これが貸借対照表に計上されていないことがあるのです。

リース債務

複合機や従業員用のパソコンなどは、リースを利用している場合が多いでしょう。契約の内容次第では残りのリース契約の年数分の支払いが発生し、その分を負債として計上しなければならないのですが、簿外になっているケースが少なくありません。

偶発債務

現在はまだ発生していないものの、将来何らかの事態が発生した場合に払わなければいけない費用が偶発債務です。係争中の案件で将来支払わなければいけない可能性のある損害賠償金や、他人の借金の連帯保証人になっている場合の肩代わり費用がこれに当たり、負債として計上しなければいけません。しかし、これが簿外となっているケースが多いのです。係争中案件の存在を隠すために意図的に伏せていることもあります。

簿外債務はなぜ問題になるのか?

M&Aのプロセスにおいて簿外債務が発覚するということは、売り手が買い手に対して当初開示していた財務内容よりも実際の負債が多くなるということです。M&Aの売買価格においては資産と負債の状況が大きく関わりますから、買い手が簿外債務に気づかなければ実際の価値よりも割高な譲渡費用を支払うことになってしまいます。

譲渡価格が大まかに固まる基本合意後に発覚するケースはより悪く、最終契約前のDD(デューデリジェンス)で簿外債務が明らかになるのは最悪です。企業価値が途中で大きく変わってしまえば、買収の判断は一からやり直しになってしまいます。

また、もし買収後に簿外の偶発債務が実現して多額の費用が出てしまえば、買い手にとって「話が違う」となるのは当然でしょう。

買い手からすれば商品の瑕疵を隠して売られようとしていたようなものですから、心証も最悪です。後から債務が発覚したことにより、円満だったM&Aが感情論で破談になるケースもあります。

M&Aを検討する際には決算書類を完璧に

オーナー経営者としては「とにかく決算の内容を悪くしたくない」という一心で粉飾決算に手を染め、その結果として簿外債務をつくってしまいます。決算の内容が悪くなって金融機関からの融資条件が悪くなったり新規の借り入れができなくなったりしてしまえば、それだけで倒産してしまうリスクがあるからです。慌てて取り繕ってその期の決算を凌ぐようなことを一回、二回と続けるうちに、粉飾が慢性化している会社は決して少なくありません。

しかし、自社に価格をつけてM&Aする以上、必ずすべて会計上のルールに則って決算書類を作成する必要があります。

前述したとおり、簿外債務がM&Aのプロセスの中で発覚することは絶対に避けなければいけません。まずは正しく決算書類に反映させ、それで決算の内容が悪くなったのなら経営改善してから改めてM&Aの検討を進めるのが最上です。

まとめ

「決算は社長の通信簿」とも言われます。その通信簿を自分でつくるわけですから、より業績をよく見せたいという誘惑に経営者が駆られるのも理解はできます。

しかし、M&Aに際して、決算の誤魔化しはDDで必ずバレてしまいます。交渉が進んでから簿外債務が発覚して、「悪気がなかった」「知らなかった」では済まされないのです。

誤魔化せる、という気持ちは一片たりとも持たないようにしてください。

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小川 潤也

株式会社コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。

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