ローカルM&Aマガジン

M&Aのレーマン方式を徹底解説――計算方法から知られざる実態まで!

投稿日:2025年2月17日

[著]:小川 潤也

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M&Aを行う際、仲介会社にはどのくらいの報酬を支払うのか気になることでしょう。

多くの場合、「レーマン方式」という計算方法が採用されます。今回は、レーマン方式の算出方法や注意点について徹底的に解説します。

レーマン方式とは?

「レーマン方式」とは、M&Aの仲介手数料の計算方法としてよく使われる報酬体系の1つです。M&Aの基準額(買収金額)に応じて段階的に手数料率が設定されます。

大手のM&A仲介会社の資料には「レーマン方式」としか書かれていませんが、じつはレーマン方式は1種類ではありません。「株価レーマン方式」と「総資産レーマン方式」など他にも数種類があります。

一般的なレーマン方式の手数料率は以下の通りです。

5%: 基準額が最初の5億円まで
4%: 基準額が5億円を超えて10億円までの部分
3%: 基準額が10億円を超えて50億円までの部分
2%: 基準額が50億円を超えて100億円までの部分
1%: 基準額が100億円を超える部分

レーマン方式で押さえておくべき2種類!

基準額は、M&A仲介会社によって算出方法が異なります。主に次の2つのやり方があります。

1.株価レーマン方式(譲渡対価レーマン)

売り手側から買い手側へ株式もしくは事業を譲渡するのがM&Aの一般的な手法。この株式もしくは事業譲渡の譲渡対価をそのまま基準額にするのが株価レーマン方式(譲渡対価レーマン)です。

「譲渡対価レーマン方式」と呼ばれることもあり、売り手が手にする譲渡対価額に対してパーセンテージがかかると理解すればいいでしょう。譲渡対価額には、株価や退職金も含まれます。

ほかの方式よりも報酬額が低くできるというメリットがあります。

2.総資産レーマン方式

株式の譲渡対価やオーナーからの借り入れ、有利子負債に加えて、買掛金や未払金などすべての負債の合計を基準額にする方式です。買掛金などのすべての負債を含むことから、基準額が高額になる傾向があります。

大手M&A仲介会社は、この総資産レーマン方式を採用することが大半です。このため手数料が高くなります。だからというわけではなでしょうが、最低手数料も2000万円に設定されている会社も多いです。

ローカルエリアの中小企業がM&Aをしたい場合、譲渡対価の他に固定資産や有利子負債が多いとかえって割高になることが多いので、どのくらいの手数料が発生するのか、事前に把握しておくことが大切です。

レーマン方式の計算方法

それでは、実際にレーマン方式による報酬を計算してみましょう。
基準額が15億円の場合、報酬は次のように計算されます。


5億円まで(5%)
5億円 × 5% = 2,500万円

5億円を超えて10億円まで(4%)
5億円 × 4% = 2,000万円

10億円を超える部分(3%)
5億円 × 3% = 1,500万円

これらを合計すると、報酬は以下の通りです。

2,500万円 + 2,000万円 + 1,500万円 = 6,000万円

レーマン方式を活用する注意点

一律定額の成功報酬と比べて、レーマン方式はM&Aの規模に応じた額になるため、公平性が高い計算方法だといえます。

ただ、レーマン方式には注意点があります。それは、レーマン方式は基準額が小さいほど報酬率が高くなること。たとえば、基準額が5億円以下のM&Aの場合、報酬は一律5%と規模が大きな取引に比べて高くなります。このため、小規模のM&A案件の場合、費用負担が割高になることがあります。

成功報酬以外にかかる手数料

M&Aを実際に取り組む場合、かかる費用は、成功報酬だけとは限りません。ほかの費用も見ていきましょう。

着手金

M&A仲介会社にサポートを始めてもらうときに払う手数料です。M&A仲介会社が依頼者の希望する買い手や売り手を探してきたり企業情報を分析したりするためにかかる初期費用です。相場は50万~200万円です。万が一、M&Aが成立しなくても着手金は戻ってきません。

しかし、これは仲介会社が案件を準備するための初期費用です。企業評価をするために資料を依頼し、それを分析するためには専門家の手間暇がかかります。

着手金はないに越したことはありませんが、M&A仲介会社や専門家へ相談するための安心料という位置づけです。最近は着手金ゼロをうたうM&A仲介会社が増えてきたのは案件を獲得するために初期費用をマーケティングコストと割り切ってM&A仲介会社が負担して、案件をより多くの案件獲得を目指しているからです。

中間報酬

売り手側と買い手側の条件交渉がひと段落して、基本合意書を締結するタイミングで支払う費用です。近年は、着手金を取らない代わりに、中間報酬を請求するケースがあります。中間報酬は、予想される成功報酬額の10~20%を支払うケースが一般的です。

中間報酬は契約段階で決められていることもありますが、M&Aのプロセスによって変動するケースもあります。

基本合意書を締結しても、時には破談になることも。その場合、中間報酬が返金されるかどうかは契約によります。

リテイナーフィー

月額報酬のことをリテイナーフィーといいます。相場は月額10万~100万円など仲介会社や案件の規模によって、異なります。

M&A仲介会社のほとんどはリテイナーフィーを取っていません。大手監査法人系のコンサルタントの会社やメガバンクや証券会社に依頼すると、リテイナーフィーが設定されていることがあります。

まとめ

レーマン方式とひと口に言っても、基準額の算定方法によって成功報酬は大きく異なります。さらに、成功報酬以外の手数料もM&A仲介会社によってさまざまです。

とくに大手M&A仲介会社はどのレーマン方式を採用しているかを明記していないことが多いので、M&A仲介会社に正式に依頼する前に、基準額の算定方法や最低手数料を確認するとともに、見積もりを取って内容をよく確認しましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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