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M&Aの注意点は?――ネガティブな情報こそ、隠してはならない!

[著]:小川 潤也

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企業が事業承継の方法としてM&Aを検討するときに、よくある失敗例の一つがネガティブな情報を隠すことです。

情報を隠してディールを進めても、最悪の場合、交渉が破談になってしまうこともあります。

今回の記事では、M&Aを成立させるため、どこに注意するべきかを徹底的に解説します。

「ネガティブな情報こそ、隠さない」は最重要

M&Aにおいては、売り手側は当然のことながら、できるだけ高く売却したいと考えます。売ると決めたら、なんとか成約させたいと思うのは当然です。その気持ちは痛いほど、よく分かりますし、そんな局面に何度も遭遇しております。

ここでやってはいけないのは、経営者が直感で「これはやばい」という問題が発生した時に、M&Aに影響でるかもと思ってその問題を隠すことです。

ネガティブな情報を隠し通そうとしても、ディールの過程で大体わかってしまいますし、デューデリジェンス中であれば公認会計士や税理士、弁護士が厳重にチェックを行うため、隠し通すことはほぼ不可能です。

ネガティブな情報を隠してディールを進めて後に発覚した場合、買い手に価格を下げる材料を与えるばかりでなく、交渉の主導権を握られてしますことになります。

まして、クロージング後に発覚した場合は損害賠償の対象になる恐れもあります。

経営者が隠したがるポイントは?

M&Aを検討する際に経営者が隠したがる情報として、次の3つがあります。

①従業員の離職事情!

経営者が隠したがる情報として特に多いのが、従業員の離職事情です。

実際、従業員の退職の申し出を隠すケースはたまに見られますが、これは買い手が成約後に経営者となり、従業員と面談してみればすぐにバレるものです。

いつから辞めたいと言っていたとか、前の社長には伝えていたので、新しい経営者にも伝わっていると思っていたなど、、、それは事実として、辞めることが確定しなくても、「申し出がある」と伝えておくことが賢明です。

②取引先事情!

取引先からの契約変更の申し出を隠すこともよくありません。

たとえば、M&Aを進める過程で、「取引先から契約を切られる可能性がある」といったネガティブな情報を確定していないからと言った理由ですぐに連絡しない売り手の社長もたまにいます。

買い手企業にとって、取引先との契約状況などは会社の売上に直結する重要なポイント。売り手側はなぜ、契約が発注がなくなるのか、その理由も含め、まずはアドバイザーに連絡しましょう。

経営では、ときとして売上が落ちることもあり、それは仕方のない部分もあります。しかし「売上が落ちる可能性が発生した」という事実を、それに伴う背景や理由を成約前に共有しておくことで、買い手企業は事前になんらかの対策を考えることができます。

③不動産や設備の老朽化に伴う不具合

本社や店舗や工場、施設など不動産を自社で保有している企業は多いです。設備は当然、長く使っていれば、定年劣化しますし、不具合も生じます。とくによくあるのが、設備で「まだなんとか使えるから」という理由で壊れかけや修繕が必要なことを事前情報として伝達しないケースです。

決算書の明細に償却資産の一覧に記載されていないもの、例えば、法定耐用年数が経過して、帳簿に載っていないもの、減価償却済みのものによくあります。これは現地を見て回るときによく発覚するケースが多いです。

M&Aで会社を売りたいと思ったら、自社の不動産や設備が傷んでないか、点検してみることをお勧めします。

残業代未払いがM&A後に発覚すると、損害賠償の可能性も!

意外と厄介なのが、従業員への残業代の未払い問題です。

M&A成立後に残業代の未払いがあったことが発覚すれば、損害賠償請求されるリスクがあります。

ディールの最中でも、残業代未払い問題を隠そうものなら、譲渡対価から減額されることもあり、最悪の場合ブレイクの可能性があることは、あらかじめ認識しておきましょう。

たとえば、経営者がみなしの残業規定を従業員に了解をとったつもりでも、本音では納得しておらず退職後に請求する人もいます。

とにかくM&Aを円滑に進めるためには「隠し事をしない」「未払い問題を解決しておく」ことが重要です。

企業の価値は、決算書だけでははかれない

会社の業績や負債をどんなに隠そうとしたところで、決算書を確認すればすべてが明るみに出ます。ここで覚えておいていただきたいのが、買い手側は、決算書上の数字だけで買収を決断するわけではないということです。

会社には、決算書上でははかれない魅力や価値がさまざま存在します。それまで存続してきたのであれば、それなりの「理由」があるはずなのです。

売り手が自社の価値をきちんと把握するためには、客観的に会社の内情を分析してくれるパートナーが必要となります。

その意味では、仲介会社のアドバイザリーを信頼して会社の「ありのまま」を説明し、どうしたら成功させるかを密に相談しながら進めることが、M&Aを成功させる最大のポイントともいえます。

M&Aを検討していることを、他人に話さないことも重要!

M&Aにおいて、他人に情報を明かすこともしばしばトラブルの種となります。

結論をいえば、経営者が社内向けにアナウンスすべきタイミングは、M&Aの最終契約書を締結した後。それ以前は、従業員にももちろん外部の人にも、誰にも話してはいけません。

万が一情報漏洩が起これば、M&Aどころではなく会社存続の危機にすらなり得ます。

M&Aの手続きを進めるにあたっては、財務関係の資料を提出する必要がありますから、副社長や腹心となる従業員、あるいは家族には言わざるを得ないケースは出てきますが、最小限にとどめたほうがいいでしょう。

まとめ

とくに中小企業の場合、「ネガティブな情報を明かすと、会社が高く売却できないのではないか」と不安になる経営者もいるでしょう。

ただし、ある程度存続している会社であれば、その会社ならではの強みや魅力が必ずあるはずです。

M&Aを検討しているなら、まずはM&Aアドバイザリーに相談することをおすすめします。親身になって考えてくれるM&A専門の仲介会社であれば、会社の魅力を一緒になって探してくれるでしょう。

ネガティブな情報があったとしても、百戦錬磨のアドバイザリーを信頼して包み隠さず相談すれば、打開策が見えてくるものです。

M&Aを成功させるためには、取り扱う情報は慎重に、そしてネガティブな情報は包み隠さずに開示することが、とても重要なのです。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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