KIZUNA ローカルM&Aの
絆コーポレーション

ローカルM&Aマガジン

社長と番頭の二人三脚で乗り越えたM&A

[著]:小川 潤也

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A社のメイン事業は通所介護などの介護関連サービスで、介護保険が始める頃に創業して以来、地域密着型で信頼と実績を積み重ねてきました。

そんなA社がM&Aによる事業承継を成功させた経緯を、社長と番頭役の専務に聞きました。

借り入れの返済が苦しく、後継者もいない……

M&Aを検討したとき、会社はどんな状態だったんですか?

社長売り上げは上がっていたものの、借り入れ返済の負担が重いことが長年の課題でした。事業の収益はちゃんと出ているのに、返しても返しても融資の返済が終わらない……そんな、真綿で首を締められるような状況が続いていたのです。

この課題を解決するために、以前からお世話になっていた新潟県の公益財団法人であるNICO(にいがた産業創造機構)に相談し、経営改善計画を作ったのです。そして3年計画で経営改善に取り組んでいましたが、いざ3年目がやってくると、じゃあ改善計画が完了したあとはどうしようか、という新たな課題が生まれました。

専務:社長は当時85歳でしたから、健康的にもそろそろ社長を続けるのは厳しいよね、という話になりましたね。

後継者問題ですね。

社長:私にも子どもがいましたが、今の時流もあって、継いでもらうという選択肢はなかった。だから親族内承継の選択肢がまず消えました。

そこで従業員承継を考えて社内で希望者を募ったんですが、結局だれも手を挙げずに頓挫。非常に厳しい状況でした。

専務:そこでNICOさんに相談したら、「M&Aでの事業承継でまずは買い手がつくか探してもらいましょう。」とアドバイスを受け、従うことにしたんです。

なんとすぐに買い手が現れた!

M&Aで初めての買い手探しの反応はどうでしたか?

社長:借入金問題に苦しむ私どもの財務状況で、M&Aしたいという会社がはたして現れるのかとても不安でした。NICOさんに相談して、そこで紹介してもらったのが、絆コーポレーションさんです。

専務:以前から、M&A業者のDMはたくさん会社に届いていました。だから自分たちで業者を見つけることもできたんですが、大量のDMから信頼できる業者を見つけるのは非常に難しい。眺めているうちに、どの業者も怪しく思えてきましたね。NICOさんのご紹介ということで、絆コーポレーションさんは信頼していました。

絆コーポレーションさんにお願いすることは、すぐ決められたのでしょうか?

社長: M&Aを実行するまでの猶予が1年もなかったという事情もありますが、なにより県の関連団体であるNICOさんが紹介してくれた会社で、身元がはっきりしていましたから、すぐに決断してお願いしました。

その後は、絆コーポレーションさんとディールを進めました。絆コーポレーションの小川社長は当初からとても親身に相談に乗ってくれ、とてもスムーズでした。

あえてディール中のトラブルを挙げるとすれば、途中、小川社長が足を骨折するアクシデントがあったことでしょうか。それでも小川社長はリモート会議で週に一回、打ち合わせをしてくれましたね。

専務:骨折の話を聞いたときはちょっとビックリしましたが、ケガをして動けないにもかかわらず、進捗の報告や課題点の洗い出しなどに親身になってくれて、とても頼もしかったですよ。

M&Aで大変だった局面はありましたか?

社長:大変だったのは、株式の分散問題ですね。私は地域で長年事業をやってきて、身内や関係者に細かく株式を分配してきたので、なんと数十人も株主がいたんです。まず株主たちに私と専務で一軒一軒あいさつに行って、事情を説明して、自分に株式を集中させるところからM&Aの準備を始めました。

専務:みなさん、誠心誠意で説明したら理解してくださいましたが、手間はかかりましたね。

そうして、ようやくM&Aが成立したんですね。

社長:買い手になったのは地元の新潟で、さまざまな事業を展開する大きな企業さんです。介護事業強化のために、私たちの地区に拠点を立ち上げる方法として、買収を決断してくれました。

とくにうれしかったのは、「買収後も顧問としてしばらく残ってほしい」というオファーをいただいたことです。「創業してからここまで地域で信頼を築いてくれた社長の存在を引き続き会社に残すことで、買収後の社内外との信頼関係構築がスムーズになる」と言ってくれて、純粋にありがたく思いました。

専務:実は、私にも同じく「残ってほしい」と言っていただきました。顧問としてということでしたが、私は来年には定年なんでね。円満にお断りさせていただきました。

社長:本当にうちの会社がM&Aできるのかとても不安でしたが、結果的に心配はすべて杞憂に終わってホッとしています。

社長と一緒に築いてきた実績や信頼を無事に承継できてとても嬉しい、という専務の笑顔がとても印象的でした。トップと番頭役の2人3脚で築いてきた会社を、M&Aによりスムーズに事業承継できた好例だといえます。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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