ローカルM&Aマガジン

突然社長になった私が選んだ「事業をつなぐ」道――福祉事業を守った再生型M&A

投稿日:2026年6月15日

[著]:小川 潤也

地域の福祉・介護に関わる事業を展開している企業の従業員だったK・S様。ある事情により、突然社長を任されることになりました。ところが、厳しい経営の実態が明らかになり、このままでは事業の継続も危ぶまれる事態に……。追い込まれたK・S様が選んだのはM&Aという道でした。会社再生へ向けての大きな決断と、その過程をご紹介します。

準備も知識もないまま突然、一従業員から社長へ

――御社の事業内容についてお聞かせください。

地域密着で介護・福祉サービス事業を行っております。社員は正社員・パートを合わせて数十名規模になります。業界全体の傾向に違わず経営状態は楽ではありませんが、先代の創業以来、数字だけを見ればまあまあなんとかやれている、というような状況でした。

――K・S様が先代から経営を引き継いだのはどのような経緯でしたか?

先代の社長がある事情で急に退任し、一従業員だった私が経営を引き継ぐことになったのです。先代は後継者も決めておらず、小さな会社ですので役員体制も整っていませんでした。それで従業員の中では古株の一人であった私が、周囲から請われる形で社長に就任しました。
とはいえ突然のことでもあり、私自身は経営についてはほとんどわからない状態だった上、社内に経営のことを相談できるような人もいません。先行きが見えず、途方に暮れていましたね。

突然の承継や社長交代では、経営の引き継ぎだけでなく、資金繰りや社内体制の整理も大きな課題になります。後継社長が注意すべきポイントについては、こちらの記事でも解説しています。
参照:https://www.kizuna-corp.com/column/hikitsugi-point/

資金繰りの限界――唯一の道はM&A

――事業の引き継ぎを経て、M&Aという選択肢が浮上したのはどのような経緯ですか?

いざ引き継ぎをしてみると、介護保険の請求まわりに不備があり、受け取っていたお金を返還しなければならないことが判明したのです。返還額は非常に大きく、資金繰りは厳しい状態に追い込まれました。このままだと半年後には廃業という可能性もあります。銀行に相談してみたところ、弁護士さんにつなげていただき、その弁護士さんから絆コーポレーションの小川さんを紹介されたのです。タイムリミットが非常に短かったこともあり、M&Aは、選んだというより、「そうせざるを得なかった」という感覚ですね。

資金繰りが厳しい状況でも、早い段階で選択肢を整理することで、廃業以外の道が見えることがあります。企業再生や倒産回避の考え方については、こちらの記事も参考になります。
参照:https://www.kizuna-corp.com/column/jigyousaisei/

全面的に信じて任せることで道が開けた

――絆コーポレーションの小川さんとお話をされた印象はいかがでしたか?

一昨年の冬に初めて相談に行ったのですが、当時は経営のことで精神的にもいっぱいいっぱいで、正直なところ、初対面の際の記憶はほとんどありません。M&Aについても、何を相談すればいいのかもわからない状態でしたから、必要な情報や準備などについては一から手取り足取り教えていただく感じで、ほとんど丸投げに近かったてす。自分では判断できないことばかりだったので、「小川さんの言うとおりに動くしかない」と腹をくくり、全面的に任せる形で進めていきました。

――実際のM&Aにあたってはどのように進められましたか?

まず、一番大きかった不安は、「こんな状態の会社に、本当に買い手が見つかるのか」ということでした。資金繰りの期限も迫る中、やはり見つからないのではないか、という思いもたびたび頭をよぎりました。それでも、小川さんが示す手順に沿って必要な資料を揃え、候補先とのやりとりを進めていった結果、道がひらけたという感じです。何もわからない私に、辛抱強くお付き合いくださった小川さんには、感謝しております。

M&Aを進める際は、どの相談相手に依頼するかも重要なポイントです。相談先の選び方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
参照:https://www.kizuna-corp.com/column/contact-information/

守りたかったのは利用者と従業員の居場所

――M&Aにあたっての条件などはありましたか? また、それを受けて最終的に買い手となったのはどのような企業ですか?

サービスの利用者と従業員を、できるだけこれまでと同じ状況で引き継いでくれる相手先を希望していました。小川さんに選んでいただいたいくつかの候補先から、最終的に買い手に決まったのは、同じ地域で福祉・生活支援領域に携わっている企業でした。結果として、期限の半年以内に無事にM&Aを成約させることができたので、ほっとしました。

――従業員の方々の反応はいかがでしたか?

弁護士からの助言もあり、M&Aの件は従業員には伏せてあったため、説明はぎりぎり譲渡の直前でした。先代の急な退任以降、社内には多少不安な空気もあったと思いますが、説明の結果今まで通り事業も雇用も継続されるということがわかり、安心したのでしょう。数名を除き、ほとんどの従業員は残ってくれることになりました。

M&Aでは、従業員の雇用や取引先・利用者との関係をどう引き継ぐかも大切な論点です。M&A後に会社や社員がどうなるのかについては、こちらの記事でも解説しています。
参照:https://www.kizuna-corp.com/column/small-business_ma/

社長退任後も現場に残って支え続ける

――K・S様ご自身は、会社に残られるのでしょうか?

そうですね。社長は退任ということになりますが、訪問介護などの現場で業務を続ける予定です。実際には、社長としての処理がまだ残っていますし、個人の連帯保証人としての処理もまだ完全には終わっていないのです。それが済めば、ようやく肩の荷が下ろせるというところですね。

――近い将来、M&Aを考えている経営者の方に、経験者としてメッセージをお願いいたします。
当初「本当に買い手が見つかるのか」と半信半疑だった状況から、事業を引き継いでくれる相手が見つかり、利用者や従業員の居場所を残すことができたのは何よりでした。まったく何も知らない一従業員から社長になった私にとっては、小川さんを信じ、言われたことを一つ一つ進めていくしかなかったのですが、その結果、実現できるとは思っていなかったM&Aが形になったことは本当にありがたい思いです。私と同じように追い込まれた状況にある経営者様には、「自分では何をしていいかわからない局面でも、専門家を信じて動くことで道が開ける場合もある」ということを、お伝えしておきたいです。

M&Aは「売って終わり」ではなく、その後の引き継ぎや関係者への説明も含めて進める必要があります。M&A後の経営者や会社の変化については、こちらの記事もご覧ください。
参照:https://www.kizuna-corp.com/column/second_career/

――進退窮まる状況でやむを得ず選んだ道ではあるものの、結果的に最善の形でM&Aを成功させたK・S様。今後も福祉の現場で地域の皆様との絆を深めつつ、充実した日々を送られますよう、お祈りしております。

絆コーポレーションでは、新潟を拠点に中小企業の事業承継・M&Aをサポートしています。地方の中小企業に寄り添った相談窓口として、地域の実情と経営者の心情を踏まえたご提案を心がけています。しつこい営業は一切いたしません。判断軸の整理だけでも、無料でご相談いただけます。

無料相談はこちら→
https://www.kizuna-corp.com/contact/

著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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