ローカルM&Aマガジン

会社売却後の「その後」は?――M&A後の経営者のリアルなセカンドキャリア3選!

投稿日:2025年10月6日

[著]:小川 潤也

Pocket

M&Aはゴールではなく、新たな人生のスタートです。しかし会社を売ったあと、経営者たちは実際どんな日々を送っているのでしょうか?

本記事では、実際のM&Aを支援してきた現場の視点から、事業売却後のリアルなライフスタイルと心境の変化を紹介します。セカンドキャリアの選択肢に迷う方、M&Aを「その後の人生設計」から考えたい方は、ぜひご一読ください。

「会社を売ったら、その後ってどうなるんですか?」

M&Aの相談を受けていると、必ずといっていいほど聞かれるのがこの質問です。事業承継や第三者への売却を検討している経営者にとって、それは現実的かつ切実なテーマでしょう。

売却額がいくらで、どんな条件で、どのように譲渡されるのか――そこまでは想像がついても、売却後の自分が「何をして、どんな気持ちで日々を過ごすのか」までリアルにイメージできている方は多くありません。
しかし、実はこの「その後の人生」こそが、M&Aを通じて得られる最大の成果とも言えるのです。

私たち絆コーポレーションはこれまで、数多くの経営者のM&Aをサポートしてきましたが、その中で見えてきたのは、「売却後の人生」は十人十色だということ。そこで実際のエピソードを交えながら、会社を売った社長たちの「その後のリアル」をお伝えします。

【パターン1】売却後、まずは「のんびり」――でも、意外と長くは続かない?

もっとも多いのは、「まずはゆっくりしたい」というパターンです。

長年会社を守り続けてきた経営者にとって、売却後はまさに「自由」を手に入れた瞬間。それまでの経営上の悩みから解放され、心が軽くなる方は多いでしょう。

実際、「毎日、趣味の釣りができる」「旅行三昧の日々だ」といった声を聞くことは少なくありません。趣味に没頭したり、家族との時間を取り戻したり、束の間のリタイア生活を楽しむ姿はとても印象的です。

ただし、3ヶ月、半年……と時間が経つにつれ、「なんだか物足りない」と感じ始める方も少なくありません。

「誰にも必要とされないのは寂しい」「刺激がない」「また何かやりたい」――

経営という仕事は、単なる労働ではなく「生き方そのもの」になっている方も多く、完全に静かに過ごすのは、むしろ難しいという現実があります。

実際に、新潟県のあるIT系企業の社長は、社員と顧客の将来を守るためにM&Aを決断し、売却後は経営から離れ、ゆっくりとした時間を過ごしていらっしゃるのかと思って、電話してみました。なんと、現役時代よりもバイバリ働いておりました。

M&A前は相談相手もなく、一人で休みもそこそこに社長業兼プレーヤーで日々奮闘されており、「ゆっくりしたい」が都度、おっしゃっておりました。M&A後は大きな会社が親会社となったので、相談相手もでき、増員されて、むしろやりたいことだけに集中できる環境が整ったようでした。

今後は「エンジニアとして現場に戻るのもいいかもしれない」と語っていましたが、「M&Aは売って終わりじゃない。その後もどう関わるかを考えておくことが大切」と話す姿が印象的でした。M&A後もこんなにバイバリと働く経営者もいるのかとびっくりしました。

★この「M&A成功体験」について、下記の記事もぜひあわせてご参照ください。
「M&Aは、『売って終わり』ではない」――「社員とお客さまの安心」を最優先で追求し・実現したM&A成功体験談!
参照URL:https://www.kizuna-corp.com/column/interview_multi2410/

【パターン2】「会社に残る」という選択――顧問として緩やかに関わるメリット

M&A後も、売却先の企業に「顧問」として一定期間関わるケースは少なくありません。

急に完全リタイアしてしまうのではなく、後継者や新たな経営陣とともに“橋渡し役”として一定期間関与することで、従業員や取引先との関係性もスムーズに引き継がれていきます。

特に、長年地域で築いてきた信頼が“社長個人”に紐づいているような企業では、「社長が残っていてくれて安心した」と言われることも少なくありません。

私たちがM&A支援を行ったある老舗ガラスメーカーでは、M&A後も先代社長が「最低2年間は顧問として関与」することで、従業員や取引先との信頼関係を維持しながら、異業種からの新社長へのスムーズな引き継ぎが実現しました。

現場同行から少しずつ仕事を教え、代表の役割も譲っていく――そんな「段階的なバトンタッチ」は、地方企業における現実的な承継モデルとして注目されています。

★この「M&A成功体験」について、下記の記事もぜひあわせてご参照ください。
地元で愛される「ガラス店」を、まったくの異業種出身の後継者に承継!――異例ずくめのM&A成功談
参照URL:https://www.kizuna-corp.com/column/glass/

【パターン3】“次の挑戦”へ――第二創業や本業回帰という道

一度は会社を売却したものの、その後新たなビジネスを立ち上げる――そんな「第二創業」を選ぶ方もいます。

「本業をしていたときは守りの経営だったけど、今は攻めでいい」
「資金的な余裕があるから、あえて利益度外視でやれる」
「やっと自分が本当にやりたかったことに向き合える」

そんな想いを胸に、規模の小さい新事業やスタートアップを立ち上げる社長も少なくありません。
法人格や社員の雇用、固定費といった“しがらみ”がないぶん、個人事業や業務委託など柔軟な形で「好きなことだけに集中する」生き方を実現する方もいます。

売却という決断が、新しい人生のスタートを切るための準備期間だった――そう話す方もいるほどです。

このように、M&Aをきっかけに「次の挑戦」へと向かう経営者も少なくありません。売却によって手元に資金的な余裕ができたことで、以前からやってみたかった事業に再挑戦する方や、本業に集中する選択をする方もいます。

実際に、不動産建設業を本業としながら介護施設を経営していたある経営者の方も、コロナ禍による経営悪化をきっかけに、事業の将来を守るためM&Aを決断。社員と利用者の生活を守ることを最優先に、条件面を明確にして相談をスタートし、スムーズに引き継ぎを実現されました。

現在は、もともとの本業である不動産建設業に専念しながら、次のビジョンに向けて新たな一歩を踏み出しています。

★この「M&A成功体験」について、下記の記事もぜひあわせてご参照ください。
悩むよりも断然、行動したほうがいい!「はじめの一歩」を踏み出したらあとは「おまかせ」で、ストレスなくM&Aを成功させた体験談
参照URL:https://www.kizuna-corp.com/column/kaigo_jirei/

まとめ――M&Aの先にある“新しい自分”を描くことが大切

会社を売るということは、単に資産を現金化するという話ではありません。
それは、これまで背負ってきた看板や責任を下ろし、「新しい人生を始める準備」でもあります。

自分はこの先、どう生きていきたいのか。
もう一度何かを創りたいのか、それとも誰かを支えたいのか。

M&Aを決断する前に、そうした「未来の自分」を考えておくことで、後悔のない選択につながっていくのだと思います。

私たち絆コーポレーションは、M&Aが成立するまでだけでなく、成立した「その後」までご一緒する存在でありたいと考えています。
M&Aを「終わり」ではなく、「次の人生をつくる手段」として――「未来から逆算して」考えてみてください。

Pocket

著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
最新M&A情報を届ける 登録無料のメールマガジン 売買案件 体験談 最新コラム