ローカルM&Aマガジン

M&Aのベストタイミングはいつ? ――50代経営者が“成長のピーク”で売却する理由とは

投稿日:2025年9月16日

[著]:小川 潤也

「M&Aの最適なタイミングはいつですか?」――これは事業承継や引退を考える経営者から非常によくいただく質問です。

実は近年、50代でM&Aを決断する経営者が増えています。その背景にあるのは「成長のピークで会社を売りたい」という、新しい意思決定のスタイル。

本記事では、M&Aの最適なタイミングの見極め方と、最近の動向について詳しく解説します。

なぜ今、M&Aを「早めに決断」する経営者が増えているのか?

近年、50代で事業譲渡を決断する経営者が増えています。以前であれば、70代・80代になってから「そろそろ後継者が見つからない」と相談されることが多かったM&Aですが、今では50代で売却を選ぶケースが目立つようになっています。

その背景には、次のような考えがあります。

「この先、同じテンションで20年30年と事業を続けるイメージが持てない」
経営者が50代を迎える頃、体力や気力の面で「あと20年走り続けるのは正直きつい」と感じ始める方は少なくありません。

特に創業社長の場合、これまで休みなく会社を引っ張ってきたことも多く、「この働き方をいつまで続けるのか」と自問するタイミングが訪れます。

人生のセカンドステージに思いを馳せ、「今ならまだ元気なうちに決断できる」とM&Aに前向きになるケースが増えています。

「いまの事業が右肩上がりで調子が良い『ピーク』の状態にある」
会社の成長には波があります。創業から拡大期を経て、ある程度の規模に達したあと、成長が鈍化したり、次の一手に悩んだりすることも。そんななか、「この業績を維持し続けるのは難しい」「そろそろピークを迎えそう」と肌感覚で捉えている経営者は多くいます。

今後の成長余地を買い手に託し、自らは“ピークで退く”という判断は、理にかなった出口戦略と言えるでしょう。

「このタイミングで売れば、高い評価額がつきやすいかもしれない」
M&Aにおける譲渡価格は、基本的に業績(売上・利益)をベースに算定されます。

つまり、業績が好調な今こそ、買い手から高い評価を受けやすい絶好のタイミングです。

一方で、売上が下がりはじめたり、事業の先行きに不安があると判断されると、評価額は一気に下がってしまいます。

高値での譲渡を望むなら、調子が良いうちに動くことが成功のカギとなります。

「手元資金で不動産や定期収入を確保し、次の人生設計を考えたい」
事業売却によって得られる資金を活用し、第二の人生を安定して送るための準備を始めたいという考えも、50代の経営者に増えている傾向です。

たとえば、不動産投資で家賃収入を得たり、金融資産を分割しながら生活費に充てたりと、リスクを抑えた人生設計が可能になります。「事業リスクから一度離れ、家族や自分の時間を大切にしたい」というライフステージの変化が、売却の大きな動機になるのです。

実際、「売ると決めたが、売ったあと何をするか」が決まっていないために、決断に踏み切れないという声もよく聞かれます。しかし、M&Aで損をしないためには、「売却の意思」が固まった時点で、早めに動き出すことが肝要です。

M&Aのベストタイミングは“成長のピーク”

M&Aにおけるベストタイミングとは、「会社がまだ元気で、業績も好調なうちに売却を検討すること」です。

例えば、業績が右肩上がりで、経営者自身も「そろそろピークを迎えそうだな」と感じるタイミングこそ、買い手から最も高い評価がつく瞬間です。

逆に、赤字になったり、売上が落ち込んでからでは、買い手も慎重になり、希望する価格での売却が難しくなってしまいます。

「もう少し伸びるかも」「まだやれるかも」と判断を先延ばしにしてしまうと、売却機会を逸し、結果的に買い手が見つからなくなるケースもあります。

業種を問わず、「事業のピークで売る」ことを意識している経営者は、最近では特に増えています。創業者だからこそ、自社の成長サイクルを肌感覚で掴めるのです。

売却後の人生設計もセットで考えることがポイント

「会社は売りたい。でもその後の人生が決められない」――そんな声も少なくありません。

ある経営者は、売却後はもう一切新規事業はせず、手元の資金を分割して生活費に充てながら、余生を過ごすという人生設計を選びました。逆に、「好きなことだけして生きていく」と、趣味に没頭する人もいます。

50代でM&Aを決断する方にとっては、「事業をもう一度ゼロから立ち上げる」という選択肢には疲れを感じることも多く、「いまが最後の売り時」と判断していることが多いのです。

売却後の過ごし方に正解はありませんが、人生設計とセットでM&Aを検討することが、迷いのない決断につながります。

このあたりの実情については、下記の過去記事もぜひあわせてご参照ください。
・【介護事業者】M&A体験談①

・先細りしていく将来を見越して、競合企業へのM&Aを決断! 「自分にとっても従業員にとっても、いい結末に終わりました」

「再生型M&A」が増えている?

一方、M&A業界では「再生案件」――すなわち業績が悪化してからの売却依頼――も増加傾向にあります。もちろん再生案件もM&Aによって活路を見出せるケースはありますが、「本当はもっと良い条件で売れたはず」という声も後を絶ちません。

売上・利益が落ち始めてからでは、買い手の選択肢も限られ、譲渡条件も妥協せざるを得なくなります。これは、あらゆる業種に共通する事実です。

だからこそ、「業績が好調な今こそが売り時」という視点を持つことが重要なのです。

「再生型M&A」については、下記の過去記事もあわせてお読みください。
・「再生型M&Aとは? 普通のM&Aとの大きな違いを解説」

・「企業再生とは?――具体的な方法やメリット・デメリットを徹底解説!」

まとめ――M&Aは「決断の速さ」が成功のカギ!

M&Aを成功させるための最大のポイントは、「タイミング」です。

・業績が好調な今のうちに売る
・自分のモチベーションがあるうちに行動する
・売却後の人生設計もセットで考える

これらを意識して早めに動くことが、希望に近い譲渡条件でM&Aを成立させるための近道です。

M&Aは「出口戦略」であると同時に、「新たな人生の入口」でもあります。
「そろそろかな」と思った今が、もしかするとベストタイミングかもしれません。

まずは一度、信頼できる専門家に相談してみてください。未来の選択肢を、いま広げておくことが何より大切です。

著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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