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企業再生とは?――具体的な方法やメリット・デメリットを徹底解説!

投稿日:2025年5月19日

[著]:小川 潤也

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東京商工リサーチの調査によると、2024年の企業倒産は11年ぶりに1万件を超えました。コロナ禍の融資による過剰債務やインフレ、賃金上昇、人手不足といった要因が重なり、多くの企業が資金繰りの悪化に直面しています。

しかし、経営が苦しくなったからといって、すぐに倒産を選ぶ必要はありません。適切な手法を活用すれば、企業の再生が可能なケースも多いのです。

本記事では、企業再生の方法や進め方について詳しく解説します。

企業再生とは?


企業再生(事業再生ともいう)とは、経営不振の原因を取り除き、資金繰りを改善して会社を立て直すことを指します。債務超過や赤字が続く中で、コスト削減や不採算部門の整理、債権者との交渉などを通じて、経営を健全化させることが目的です。

企業再生の2つの方法――自力再生とスポンサー再生

企業再生には、大きく分けて「自力再建型」と「スポンサー型再生」の2つの方法があります。大型の企業再生で特に債権カットや、DES(デットエクイティスワップ)等の権利変更が必要な場合には資金供給、信用維持、再生のスピード等の観点から、まずはスポンサー型が追及されることが多いようです。また、大型再生案件では、スポンサーとして業績不振に陥った企業を買収し、新たな事業機会を模索する企業やファンドもそれなりにあります。ではそれぞれにメリット・デメリットがあるため、状況に応じた適切な選択が求められます。

自力再生とは?

自力再生とは、企業が自らの努力で経営を立て直す方法です。経営改善のために専門のコンサルタントが入ることもありますが、最大の課題は「資金繰り」と「借金の返済」です。
再生フェーズに入るとリスケジュール(返済条件の見直し)で元本の返済を止めてもらうので、その間は新規融資を受けることができません。営業を見直し、コストカットし、事業の立て直しを手元資金の範囲内で資金を回しながら、再建を目指さなければなりません。

また、収益改善のためにコストカットだけでは不十分で、新たな商品やサービスを生み出す必要があります。しかし、それができるのであれば、そもそも経営が悪化することはなかったはずです。短期間(1~3年)で抜本的な収益改善を実現するのは、現実的に考えても非常に厳しいと言えるでしょう。

スポンサー型再生とは?

スポンサー型再生とは、外部企業(スポンサー)からの支援を受けて経営を立て直す方法です。この場合、事業譲渡や第二会社方式により、株式譲渡でのスポンサーが資金を提供し、金融機関側から債権カットがなされる代わりに経営責任が求められ、経営者の交代が必須となります。

自力で抜本的な収益改善ができない場合、スポンサーを探すのが現実的な選択肢となります。ただし、スポンサーを見つけるのは容易ではありません。

スポンサーが支援する前提として、「借金がなくなれば、再生できる事業かどうか」が重要なポイントとなります。

たとえば、設備が営業用資産であり、その設備投資のために借入が10億円あり、年間売上10億円、営業利益500万円、減価償却1500万、EBITDA2000万円の会社を例にしてみましょう。返済原資はEBITDAの2000万円であり、10億円の借金を返済するには50年かかってしまい、今の経営者の代ではほぼ不可能です。しかも、利益率が低いため、売上が減少傾向となれば、資金繰りも大変となり、倒産の危機です。それを回避するために金融機関に支援をお願いして、スポンサー型の再生をするとしましょう。

スポンサー企業をFAが探し、事業価値が2億円であれば、なんとか手を上げてくれるところがありそうとなったとします。そうしますとスポンサーがこの事業を2億円で買い、金融機関が10億のうち、8億円を放棄してもらえるなら、EBITDA2000万円なので、2億円/2000万円=10年で投資を回収できることになります。シナジーが発揮されれば、EDITDAが2500万となれば、8年で投資回収となります。そして、この会社の経営者は経営者保証ガイドラインに基づいて、連帯保証を解除してもらう代わりに代表を辞任して、事業をスポンサーに2億円で譲渡し、残った借金は銀行に免除してもらうことになります。簡単にまとめるとこういうことがスポンサー型の企業再生です。

スポンサー型再生を成功させるには?

スポンサー型再生を進めるには、財務アドバイザー(FA)や専門家のサポートが不可欠です。

適切な再生計画を立てるには、弁護士や公認会計士などの専門家の協力が必要ですが、事業再生に必要な法務、財務の知識や経験が求められるため、対応できるFAは限られています。(大手のM&A仲介会社は再生案件を扱ってないのが現状です)さらに、スポンサー探しには業界、地域の理解が必要であり、ロングリストで100件以上の候補先を上げて、そこからスポンサー候補として手を上げてもらえる先を探し出すには経験とスキルが求められます。そのため、首都圏では再生を専門とするFA会社はありますが、地方都市では皆無といった状況です。

企業再生の進め方!

企業再生の方法は大きく「法的整理」と「私的整理」の2種類に分かれます。

法的整理

法的整理は、裁判所の監督のもとで行われる手続きで、民事再生や会社更生が代表的です。

民事再生:企業が再建計画を策定し、裁判所の承認を得ながら進める方法。スポンサー型と自力再生型に分かれる。
・会社更生:特に大企業向けの手続きで、経営陣が退陣し、更生管財人の管理下で再建を進める。
・特定調停:裁判所が仲介し、債権者と債務者の合意を促す方法。

法的整理は、スポンサーにとっては債務が法的に切り分けられ、負担するリスクがなくなるメリットがありますが、法的整理となった事実は公表されるため信用が低下し、取引停止やブランド価値の損失につながるリスクもあります。

私的整理

私的整理は、裁判所を介さずに金融機関との間で債務整理が行わるもので、代理人弁護士や公認会計士、FAによって、金融機関などの債権者との交渉を通じて、事業再生の道を切り開いていくものです。

私的整理では、私的整理ガイドラインや中小企業再生支援スキームを活用し、債権者と協議しながら再建計画を進めるケースが多いです。これらのスキームを利用することで、スポンサーが事業を譲り受ける対価を金融債務の返済や手続きにかかる費用に充て、残った金融債務は免除してもらい、その事業がスポンサーの元で続くことで、雇用や取引先が守られて、地域経済のダメージを最小に食い止めるための利害関係者が協力するものです。

また、地域経済活性化支援機構(REVIC)や企業再生ファンドのサポートを受ける方法もあります。REVICは、専門家の派遣や事業再生ファンドの運営を通じて企業の再建を支援します。一方、企業再生ファンドは、投資家から集めた資金をもとに、経営難に陥った企業への出資や債権の買い取りを行い、再生を促します。

私的再生は、裁判所を介さずに進められるため、スピーディーに対応できるメリットがありますが、債権者の理解を得ることが課題となるケースもあります。そのため、適切な支援機関を活用しながら、計画的に進めることが大切です。

まとめ

企業再生には、「自力再生」と「スポンサー再生」の2つの方法がありますが、多くの企業にとっては、スポンサーの支援を受けながら経営を立て直す「スポンサー再生」が現実的な選択肢になることが多いです。

どちらの方法を選ぶにしても、企業単独での再生は難しく、専門家のサポートが不可欠です。適切な財務アドバイザーやM&A仲介会社に相談することで、最適な再生方法を見極めることができます。

事業再生は決して簡単な道ではありませんが、正しい手順を踏み、適切な支援を受けることで、再スタートを切ることは十分可能です。経営の立て直しを考えている場合は、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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