ローカルM&Aマガジン

『まだ銀行が貸してくれる』は危険信号! 倒産が増える今、知るべき資金繰りの現実 黄色信号で動けるかが分岐点

投稿日:2026年5月25日

[著]:小川 潤也

「うちはまだ銀行が貸してくれるから、大丈夫」——そんなふうに思っていませんか?通帳の残高は減っていない。毎月の支払いも、なんとか回っている。けれども、漠然とした不安だけは消えない。実は、その「まだ大丈夫」こそが、倒産する会社に共通する最後のサインなのです。本記事では、現場で多くの中小企業の事業再生・M&Aを支援してきた経験から、倒産する会社の共通点と、まだ間に合う「黄色信号」の見分け方を徹底解説します。「運転資金」と「赤字資金」の違い、本当に危ない融資のサイン、リスケで時間が稼げる会社と稼げない会社の差まで、いま経営者が知っておくべき”資金繰りの現実”をお伝えします。

なぜ今、倒産が増えているのか?――コロナ融資の「返済フェーズ」が始まった

帝国データバンクの集計によると、2025年度の全国企業倒産件数は、1万425件。前年度から3.5%増加し、4年連続で前年度を上回りました。年度の倒産件数が1万件を超えるのは、これで2年連続です。

参照:「倒産集計 2025年度報(2025年4月~2026年3月)|帝国データバンク」
https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/20260408-bankruptfy2025/

さらに注目すべきは、負債5,000万円未満の倒産が、2000年度以降で最多となっていること。倒産はもはや「経営の弱い一部の会社」だけの話ではなく、小規模事業者を含めた中小企業全体に広がっているのです。

なかでも、いま現場で目立つのが、コロナ融資の「返済フェーズ」に入った企業の苦境です。現場でも、コロナ禍に日本政策金融公庫から無担保で5,000万円規模の借り入れをしたまま、返済できずに倒産するケースを多く見てきました。

帝国データバンクも、同レポートのなかで「2026年度は倒産が増加する可能性が高く、夏頃から急増する懸念がある」と指摘しています。

そしてもう一つ見逃せないのが、コロナ前から業績が悪かった会社が、コロナ融資で一時的に延命していただけというパターン。本来であれば、もっと早い段階で経営判断を下すべきだった会社が、融資による”猶予期間”のあいだに、傷を深くしてしまったケースが多いのです。

関連記事:「あのとき決断していれば……」――M&Aのタイミングを逃し、廃業に至ったある製造業の末路
https://www.kizuna-corp.com/column/ma_timing/

「運転資金」と「赤字資金」は、まったく違う――多くの社長が混同している

「運転資金が足りない」と銀行に駆け込む社長の多くが、実は赤字の穴埋めを運転資金と思い込んでいます。両者の違いと、自社の本当の返済能力の見方を整理します。

本来の「運転資金」とは何か

運転資金とは「売上の増加に伴って必要になる資金」のことを指します。たとえば、売上が増えると、先に仕入や給与の支払いが増えます。しかし、売上代金の入金は後になるため、黒字でも一時的にお金が不足することがあります。
この資金不足を埋めるために必要になるのが、本来の運転資金です。いわゆる「黒字倒産」の多くは、この資金ギャップへの対応ができなくなることで発生します。

「赤字資金」を運転資金と思い込んでいないか

ところが、ここに大きな落とし穴があります。多くの社長が「運転資金が足りない」と銀行に相談するとき、その実態が「赤字の穴埋め資金」になっていることが少なくありません。

営業利益がマイナスのまま、本来は赤字の穴埋めなのに「運転資金」として借りようとする。これが「赤字資金」です。銀行は、この赤字資金を慎重に判断します。なぜなら、営業利益から返済できない以上、貸しても回収の見込みが立たないからです。

売上が落ちて返済できなくなり、返した分をもう一度借りる「折り返し融資」に頼る——黒字なら通っていたその融資が、赤字に転じた途端に通らなくなる。これが、多くの会社が”突然”資金繰りに詰まる構造です。

通帳残高ではなく「営業利益+減価償却」で見る

経営者がまず見るべきは、通帳の残高ではありません。「営業利益+減価償却」をベースに年間いくら返済できるのか。これが、自社の本当の返済能力です。

低空飛行のまま利益が出ていない会社ほど、通帳残高だけを見て「お金は払えているから大丈夫」と判断しがちです。

しかし、営業収益で返済できない分は、稼ぐか、支払い条件を見直すか、売掛金回収を早めるか――返済原資が不足しているのであれば、利益改善、支払条件の見直し、売掛金回収の早期化など、早い段階で打ち手を講じる必要があります。
資金繰りが厳しくなってからではなく、金融機関と対話できるうちに手を打てるかどうかが、今後の経営を大きく左右します。

関連記事:リスケジューリングとは?経営者が知りたい基礎知識と銀行交渉のコツ
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銀行が貸さなくなったとき、すでに赤信号――本当のサインは「折り返し融資が出ない」

資金繰りの悪化そのものより、折り返し融資が出なくなった瞬間こそが本当の危険信号です。銀行の判断が変わるメカニズムと、ノンバンクに頼った先に待つ現実をお伝えします。

本当に危ないのは「資金繰りの悪化」より「折り返し融資が出なくなったとき」

資金繰りが悪化していること、それ自体は、まだ取り返しがつくサインです。本当に危ないのは、その先――「折り返し融資が出なくなったとき」です。

債務超過(資産より負債が多い状態)や2期連続赤字の状態になると、銀行は追加融資を出しにくくなります。銀行が貸さなくなった背景には、必ず本体の経営状態の悪化があるのです。

つまり、銀行から「もう貸せません」と言われた時点で、自社の状態はすでに赤信号。「銀行が冷たくなった」のではなく、「自社が貸せない状態に陥っている」と捉え直すべきです。

ノンバンク・カードローンに依存し始めた時点で、再生の選択肢は急速に狭まります。

資金繰りが厳しくなった社長の中には、ノンバンクやビジネスカードローンに手を出す方もいます。しかしこれは、最も避けるべき選択です。ノンバンクから借りた瞬間、銀行は「もうこの会社は危ない」と判断します。残された時間が、一気に短くなってしまうのです。

最終的に、どこからも借りられなくなれば、破産申立に進むしかありません。さらに、破産にも費用がかかります。

裁判所への予納金を確保するため、弁護士に依頼して支払いを止め、ぎりぎりのタイミングで破産手続きに入る――そんな苦渋の判断を迫られる会社も、実際にあります。

「お金が払えているから、まだ大丈夫」――そう思っていても、実は社長個人の借入やカードローンでつないでいるだけ、というケースは珍しくないのです。

関連記事:「事業再生」で倒産を回避し、企業を再生させる!――タイミングから要件、手法まで徹底解説
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手遅れになる会社と、立て直せる会社の違い――「リスケで時間が稼げるか」が分岐点

同じ赤字でも、立て直せる会社と救いにくい会社があります。その差を分けるのは「リスケで何か月の時間を稼げるか」。実際の支援事例を交え、判断の分岐点を解説します。

「リスケして1か月か、6か月か」で見える未来

資金繰りが厳しくなった会社で、まず見るべきポイントは「銀行返済をリスケジュール(リスケ)して、資金繰りが回るかどうか」です。

銀行返済を一時的に止めても、1か月しか資金がもたない会社は、率直に言ってかなり厳しい状況です。一方で、返済を止めれば6か月程度もつ会社であれば、その間にスポンサー(買い手)を探すという選択肢が残されています。

リスケで時間を稼げるか、リスケしてもすぐ資金が尽きるか――この差は、経営者の人生にも、従業員の生活にも、大きな違いを生みます。

ただし、6か月以内に資金繰りが破綻し、なおかつ買い手から見て魅力的な商品・技術・顧客基盤がない会社は、残念ながら救うのが難しい。「立て直せる会社」と「救いにくい会社」は、次のような違いに表れます。

① 立て直せる可能性が高い会社 ② 救いにくい会社
銀行返済を止めれば6か月以上もつ 銀行返済を止めても1か月しかもたない
黒字経営、または黒字化の見込がある 2期連続赤字・債務超過が続いている
商品・技術・顧客基盤に買い手から見た魅力がある 売れる価値が見出せない
ノンバンクやカードローンには手を出していない すでに個人借入・ノンバンクでつないでいる

【事例】ある中小の製造メーカーのギリギリのタイミング

当社で実際にご支援したある製造メーカーのケースをご紹介します。

その会社には、翌年2月までに一括返済しなければならない借入がありました。売上は下がり、営業利益も出ていない。

自力での返済は、ほぼ不可能な状態でした。社長から「2月までにスポンサーを探してほしい」とご相談をいただいたのは、前年のゴールデンウィーク明け。残された時間は約9か月。スポンサー探しとしては、かなりギリギリのタイミングです。

さらに、また、支払い手形による仕入決済も多く、取引先の信用不安が広がれば、一気に資金繰りが悪化するリスクを抱えていました。

昔は銀行が手形やつなぎ融資を出してくれることもありましたが、現在の金融機関は、返済原資が見えない先への追加融資には慎重です。債務超過で営業利益も出ていない会社には、追加融資はまず通らない。

だからこそ、自力再建ではなく、スポンサーに事業を委ねる――その判断を早めにできたことが、結果的に従業員の雇用を守る道につながりました。

※本案件の詳細は、別記事の取材レポートにてご紹介しています →https://www.kizuna-corp.com/column/connect/

関連記事:再生型M&Aの成功のポイントとは?――買い手企業も売り手企業も知っておくべき7つの視点
https://www.kizuna-corp.com/column/buyercompany/

まとめ:黄色信号のうちに動けるかどうかが分岐点

倒産は、ある日突然やってくるものではありません。必ず「黄色信号」が先に出ています。本記事のポイントを整理すると、次の3点に集約されます。

1.「運転資金」と「赤字資金」を混同しない
→本来の運転資金は売上増加に伴う資金、赤字資金は赤字の穴埋め。銀行が出してくれるのは前者だけです。

2.本当に危ないサインは「折り返し融資が出なくなったとき」
→銀行が貸さなくなった時点で、すでに赤信号。ノンバンクに手を出す前に、外部の専門家に相談を。

3.リスケで6か月以上の時間が稼げるなら、まだ打つ手がある
→自力再建が難しくても、スポンサー(M&A)という選択肢が残されています。

「うちはまだ銀行が貸してくれる」――その「まだ」のうちに動けるかどうか。それが、会社と従業員、そして社長自身の人生を守る、最後の分岐点になります。

「もう手遅れかも」と感じてからではなく、「まだ大丈夫だろうか」と感じたタイミングで――。

絆コーポレーションでは、新潟を拠点に、中小企業のM&A・事業承継・事業再生をご支援しています。資金繰りや事業の先行きに不安をお持ちの経営者様からのご相談を、無料でお受けしています。しつこい営業は一切いたしません。まずは現状を整理するところから、ご一緒させてください。

無料相談はこちら→ https://www.kizuna-corp.com/contact/

著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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