ローカルM&Aマガジン

「納得できるM&A」のためには、信頼できるパートナーが重要! ――ある食品製造会社の事例に学ぶ

投稿日:2025年8月25日

[著]:小川 潤也

「事業を次の世代に引き継ぎたい」――そう思いながらも、M&Aに踏み出すには大きな不安がつきまとうことと思います。

本記事では、私たちの事例で、地域の特産品を手がける家族経営の食品製造会社がM&Aの実現までに4つの機関を経たというM&A体験談をご紹介します。

地元密着の家族経営企業3代目が下した決断の背景

この企業は、地方で地域特産の加工食品を製造・販売する家族経営の食品製造会社です。創業は約60年前、先々代が立ち上げ、現在の経営者が3代目にあたります。

地元の飲食店や小売店などの法人取引に加え、直売所や通販を通じた一般消費者からの支持も厚く、小規模ながらも地元に根ざした事業展開を続けてきました。

しかし、後継者不在に加え、近年は原材料価格の高騰や流通コストの増加、人手不足などの複合的な要因から経営は悪化。今後も従業員の雇用や取引先との関係を守っていくためには、自分の代での引き継ぎが不可欠だと考えるようになり、M&Aを模索しはじめたそうです。

後継者不在の企業が抱える課題については、過去コラム「後継者がいない会社、どうすればいい?――4つの解決策とは」もご参照ください。
参照:https://www.kizuna-corp.com/column/4_solutions/

1件目:地元の金融機関での失敗――提示されたのは“一択”だけ

最初に相談したのは、長年付き合いのある地元の金融機関でした。信頼もあり、まずは相談から始めてみようと訪ねたのですが、そこで提示されたのは「この会社にしましょう」という、まるで決め打ちのような提案だったそうです。

買い手候補はこの1社のみで、希望額のすり合わせもありませんでした。提示された金額は希望額よりも低く、純資産を下回るような内容です。営業利益はほぼトントンですが、役員報酬で数千万もいただいていたので、納得のいく条件ではないと判断し、早々にこの話は断ることにしました。

2件目:大手M&A仲介会社での失敗――営業は熱心でも、対応は画一的?

次に相談したのは、大手M&A仲介会社の営業マンです。きっかけは、ある日かかってきた営業電話でした。

「全国展開している会社だし安心できるかもしれない」と考えて相談し、担当者に任せてみることに。紹介されたのは別エリアで展開する中小の企業でした。

買い手候補の社長自らが「引き継ぎたい」と名乗り出てくれましたが、提示された金額はやはり希望よりも大きく下回っていました。しかし、「ここしか買い手はいないかもしれない」と考え、基本合意まで進めたそうです。

しかし、やり取りを重ねるなかで、「もう少し時間をかけて慎重に進めたい」という気持ちとは裏腹に、「早く契約を進めましょう」と急ぐような提案が続きました。

仲介会社の担当者としては、他に相談される前に早く成約へと導きたいという意図だったのかもしれませんが、こちらのペースや不安に対する配慮が足りないと感じる場面もありました。また、買い手の社長にした「私たちの抜けた補充の当てはあるのですか?」という問いに対し「私が代わりに行きますので大丈夫です。」との回答であったため、「幹部や社員を送りこめる余裕がないのか」と不安になり、結果的に「この人に任せて本当に大丈夫なのか」という迷いにつながり、最終的には、合意締結の直前で辞退を決断しました。

大手仲介会社に頼む「落とし穴」については、過去コラム「M&Aの相談相手、どこがいい?――大手仲介会社の落とし穴」もご参照ください。
参照:https://www.kizuna-corp.com/column/soudan_ma/

3件目:引き継ぎ支援センターでの失敗――マッチングが成立せず……

3件目の相談先は、地元の引き継ぎ支援センターです。地元の商工会議所を訪れたときにパンフレットを見つけ、相談してみることにしました。

引き継ぎ支援センターとは、中小企業庁の委託を受けて全国に設置されている公的機関で、後継者不在などの課題を抱える中小企業の事業承継を支援しています。地域の商工会議所や商工会、金融機関などと連携しながら、事業の引き継ぎに関する相談やマッチングを無償で行ってくれる点が大きな特徴です。

制度としてはしっかりしており、信頼感もありましたが、実際のマッチングは難航しました。というのも、引き継ぎ支援センターは積極的に買い手企業を直接探す仕組みは持たず、登録済みの買い手候補に対し、「こういった企業が売りに出ています」と、メールなどで一斉に紹介される方式だったからです。

売り手企業としては、基本的には待つしかないスタイルであることから、結局マッチングには至りませんでした。

4件目:信頼する士業の紹介で、ようやく納得の成約へ

3件の相談先でうまくいかなかったこの企業は、困った末に、長年付き合いのある士業の方に相談しました。そこで紹介されたのが、私たち絆コーポレーションです。

これまでの経緯を伺った上で、まずはじっくりとヒアリングの時間を取り、役員報酬や営業利益、譲渡額に対する希望など、細かな点まで丁寧に確認させていただきました。そのうえで、条件に合う買い手企業を慎重に検討し、ご提案を進めていきました。

成約に至るまでには試行錯誤もありましたが、結果として希望を上回る条件での引き継ぎが実現。成約後はとても喜んでおられて、「私たちの会社のことをよく理解してもらえた」「こちらの考えを尊重してもらえて、決断を待ってくれた」とおっしゃっていただき、うれしく思っています。

まとめ――妥協せず、信頼できるパートナーを探すことがM&A成功のカギ

 

今回ご紹介した企業は、最初の3件では思うような成果が出せませんでした。その背景には、いくつかの共通点が見えてきます。

1件目の金融機関では、提案が“決め打ち”であり、選択肢の提示や希望額のすり合わせがほとんど行われなかったこと。2件目の大手M&A仲介会社では、画一的な対応により、企業の実情や気持ちへの配慮が不足していたこと。そして3件目の公的支援機関では、仕組みの性質上、マッチングまでの道のりが遠く、スピード感が得られなかったことが挙げられます。

しかし、そうした経験を経ても、4件目でようやく納得のいく成約にたどり着きました。「どこに相談するか」「どんなふうに進めてもらえるか」は、M&Aの結果に大きな影響を与えることがわかると思います。その意味でも、信頼できるパートナーを見つけることこそが、M&A成功のカギといえるのではないでしょうか。

「うちも、そろそろM&Aを考えたほうがいいのかも……」と感じている方がいれば、まずはお気軽にご相談ください。

信頼できる仲介会社の選び方については、過去コラム「よくわかるM&A仲介の選び方!仲介とFAの違いや、押さえるべきポイント」もあわせてご参照ください。
参照:https://www.kizuna-corp.com/column/ma_fa/

著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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