ローカルM&Aマガジン

よくわかるM&A仲介の選び方!仲介とFAの違いや、押さえるべきポイント

投稿日:2024年12月16日

[著]:小川 潤也

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M&Aを考えているが、どの会社にサポートを頼めばいいのかわからない――中小企業の経営者から、しばしば聞かれる悩みです。M&A業界には、仲介とアドバイザリーの2タイプあり、大手から少数精鋭まで無数に専門会社が存在します。

M&A初心者である経営者からすれば、わからなくて当然。本記事では、M&A会社のタイプの違いから、自社のM&Aを成功させるための会社選定時に押さえるべきポイントや注意点を解説します。

M&A業社には、「仲介」と「FA:ファイナンシャルアドバイザリー(以下「FA」という」の2つのタイプがある!

まず、M&Aをサポートしてくれる業者には、大きく分けてM&A仲介会社とFA(助言)会社の2つのタイプが存在します。

大手・上場企業や海外では、FA契約を結び、日本の中小企業はM&A仲介契約を結ぶことが一般的です。どちらが良いというものではなく、役割と特徴を理解して選びましょう。

M&A仲介会社の役割と特徴

M&A仲介会社とは、日本M&Aセンターなどがその代表例で、その名のとおり売り手と買い手の間に立って仲介役を務める会社です。

基本的には、着手金などの手数料と成功報酬を売り手・買い手の双方から得るビジネスモデルになっています。

売り手と買い手のどちらの情報も保有しているので、双方のことがよくわかり、スピーディに案件を成約まで導くことができる点がFA会社に勝るポイントでしょう。

M&A契約を締結する両者の希望に沿ったマッチングや、M&Aの成立や交渉などのプロセスにかかる時間が短縮されることにも期待が持てます。

しかし、売り手と買い手の2社をクライアントとして扱う性質があるため、M&A仲介会社はどちらか片方だけが有利なアドバイスはしてくれない点は注意が必要です。
公平な立場で仲介することが大前提です。

よってこの話をきくとM&Aで自社の譲渡を成功させたい経営者からすると、仲介よりもFAがいいのではと考えると思います。

しかし、中小企業のM&Aの場合、仲介会社が売り手の条件を取りまとめ、それを踏まえて、買い手を探すことでなんとか、成約までもっていけるというのが現状です。

なぜなら、それぞれがFAを立てると、譲渡側と譲受側の利益の最大化がミッションなので、条件交渉がシビアなものとなり、合意点を見いだすまでに時間とお金がかかります。どういうことかというと、それぞれ交渉する条件にはエビデンスを求めるので、それを専門家(税理士、弁護士など)が調査して、その結果のレポートをエビデンスとして交渉材料にします。

中小企業のM&Aには売り手、買い手の関係性も重要ですし、譲渡後に気持ちよく引き継ぎたい、引き継いでもらいたいというのがあるので、条件交渉を双方のFAがゴリゴリやることでうまくいくのかという問題もあります。

また、中小企業は企業として未成熟な場合、例えば会社として上場企業のようにすべて書類や制度が整備されているかというとそうでない会社の方が大多数です。なので、いままで回ってきた売り手側の企業をそういう未成熟な状態をわかった上で妥協点を仲介会社の担当者が公平な立場で双方の言い分を聞いて、双方が納得の上で同じ方向を向いて、M&Aのゴールに向かう方が最終的な満足度は高いのではないかと現場では感じております。

M&Aアドバイザリー会社の役割と特徴!

次に、M&Aアドバイザー会社、FA会社について解説しましょう。

M&Aアドバイザリー会社はFA(ファイナンシャル・アドバイザー)とも呼ばれ、売り手側あるいは買い手側のどちらか一方と契約してさまざまなアドバイスや支援をしてくれます。

M&Aアドバイザリー会社と契約してM&Aを実行する最大のメリットは、M&Aアドバイザリー会社は、契約先の利益を最重視してディールを進めてくれる点です。

M&A仲介会社のように中立の立ち位置ではなく、自社専属のパートナーとして知恵を振り絞ってくれます。M&Aを試みるのであれば、売却の候補先選定をはじめ、譲渡金額や諸条件の調整まで、可能な限り自社の利益を高めたいところ。アドバイザリー会社に魅力を感じる部分はあるでしょう。

しかし、実情は大手証券会社やメガバンク、監査法人の子会社などで、M&Aの取引金額は少なくとも10億円以上であったり、最低手数料3000万円以上などと、お客様を選ぶ傾向が強いところがデメリットといえるでしょう。会社(案件)規模が相応であれば、M&A成立のために売り手の意向を尊重し、経済合理性を突き詰め、理論武装をし、クライアントのため、フィーのために戦ってくれます。よって中小企業には向かず、大企業向けといってもいいかもしれません。

依頼する前に知っておきたい! M&A会社の選び方

仲介とアドバイザリーの2つのタイプについては解説しました。

正直に申し上げると、M&A会社は玉石混合です。契約形態だけでは判断難しく、最終的には会社選びが成否の鍵を握るでしょう。

では、どのような基準でパートナーとしてベストな会社を選べばよいのでしょうか。業者選びで失敗しないためのポイントを4つご紹介します。

ポイント① 自社の規模に合ったパートナーかどうか

M&Aは、規模の大小やジャンルによって求められる知識やネットワークが大きく異なります。大手だから安心とは言えず、中小企業が大企業案件を多く手掛けているM&A会社に相談しても、求めるスキルを相手が持っていない可能性が高いのです。

さらに、「会社譲渡ではなく事業譲渡で一部だけ売ろうと思っている」「海外の企業に売りたい」などとニーズが明確な場合、求めるジャンルの知識を持っているM&A会社かどうか、よく調べる必要があります。

ポイント② 報酬体系が納得できるかどうか

M&A会社の報酬体系は、各社一律ではありません。業務委託契約を結んだ時点で着手金が発生する会社もあれば、全額がM&A成功後の成功報酬や月額報酬の会社もあります。

さらに、「基本合意後に中間報酬」など、途中段階で費用が発生するシステムになっている場合もあるようです。

中小企業の場合、自社の企業評価(譲渡対価)に見合う、手数料体系のM&A会社を選ぶ方がいいでしょう。あとは親身に相談にのってくれるかどうか、相手のことを信頼できるかどうか。この3点を総合的に判断するのがいいのではないでしょうか。

ポイント③事例があり、スキームを提案している会社かどうか

M&A会社を採用する最低条件として、事例やスキーム(株や事業を譲渡する方法)をきちんと精通しているか、そして提案できるかどうかということがあります。

実は、M&Aの専門家を名乗るのには、とくに資格などは必要ありません。専門的にM&Aを行っているかのような専門家として不適格といわざるをえない会社も存在するのです。

「実は不動産会社での営業マンが物件売買の延長でM&A案件もこなせると考えて多角化した」「創業者は大手M&A仲介会社出身だけど担当者は未経験の新人が多い」など、怪しいM&A会社もあるようです。

そのため、発注を検討している会社にどんな実績、担当者に経験があるのか。期間や金額ではなく、どのようなスキームでM&Aを提案していたのかなど詳細部分まで事前にしっかり確認しましょう。

ポイント④地域に強いかどうか

売り手企業が地方の中小企業である場合、そのM&A会社が地元に強いかどうかも、重要なポイントです。

なぜなら、M&Aには知識だけでなくネットワーク力が求められ、M&A会社が地元の金融機関や有力企業、優秀な弁護士・会計士などと深い関係性を持っているかどうかで、ディールの結果がまったく変わってくるからです。

たとえば、当社は新潟と東京に拠点を持っていますが、2つの地域に持つネットワークが決め手となってM&Aが成功する事例も多くあります。

まとめ

残念なことですが、M&A業界には怪しい会社も多く、なかには得意などの表記があるにも関わらず、実績やノウハウがゼロに等しいのにプロを名乗っている事業者も存在します。

そのような業者を避けるために、上記のポイントを事前にしっかり確認して、相談先は信頼してまかせることのできるベストなパートナーと契約しましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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