トップ面談はただの顔合わせではありません。M&Aを成功させるため、売り手企業と買い手企業がお互いの心理をくみ取ったうえで交渉を進める必要があります。
トップ面談の目的とタイミング
トップ面談は、M&Aの相手先企業の理解を深めるために、とても重要な場です。相手から交渉に必要な情報を引き出し、計画的に事前準備を進めていきます。
トップ同士で深く理解し合う
トップ面談の一番の目的は、売り手と買い手双方の企業や人、ビジネスの内容について深く理解し、疑問点を解消していくことにあります。トップ同士の第一印象が大事な場です。
面談にあたって、質問事項や提案すべき内容は事前に整理しておきましょう。ぶっつけ本番で臨むのは禁物です。
トップ面談は複数回にわたることも
トップ面談は、M&Aの交渉が本格的になったタイミングで実施されます。厳密なタイミングの決まりはありませんが、買い手企業が自社の意向や希望条件を伝える、意向表明書の提出前に行なわれるのが一般的です。
疑問点が一度の面談で解消できなければ、複数回にわたって実施されることもあります。
トップ面談における売り手と買い手の心理
M&Aでは、売り手はいい会社であると見せたいし、買い手は妥当な価格で買いたいと考えるのが通常の心理です。それぞれの利害関係が一致することはまず考えられないので、交渉における互いの心理と優先順位を理解しておく必要があります。
金銭的条件における双方の心理
売り手と買い手の間で最大の論点となるのは、売買金額と支払い条件です。
前述したとおり、基本的に売り手は「できるだけ高く売りたい」、買い手は「安くとは言わないまでも妥当な価格」と考えます。
くわえて、支払い条件について、売り手の心理としては「一括払い」で売却費用をすぐにでも欲しいと考えます。
一方、買い手は「分割払い」でキャッシュアウトを遅らせつつ、買収後の成果次第で残金の支払い額を調整したいと目論むケースもあります。
経営引き継ぎの条件は案件によって様々
経営の引き継ぎについては、売り手によって心理が様々です、すぐにリタイアしたいと考える経営者もいれば、最低2年ほど顧問として会社に残りたいと望む人もいます。残留する場合、売却前と同等額の役員報酬を欲しいという人もいるでしょう。
逆に買い手のニーズも多種多様。業績低下を阻止するために、現経営陣に2年ほど残ってほしいと望む場合もあれば、抜本的改革のためにすぐさま経営陣を入れ替えたいというケースもあります。
売り手と買い手の心理は食い違いがち
以上のように、M&Aでは買い手と売り手の間で利益相反が生まれがちで、トップ面談ではお互いの思惑を詳細に確認しなければいけません。
ほか、細かい争点となりそうな項目としては以下の通りです。
・キーパーソンである従業員の継続的雇用があるか
・社内外への告知の方法とタイミング
・事業とは関係のない資産の取り扱いについて
・顧問の税理士、弁護士を継続するか、買い手のそれぞれの顧問を起用するか
・チェンジオブコントロール条項の確認
チェンジオブコントロール条項とは、M&Aにより経営権の移動があった場合の対応について言及した条項です。たとえば、同条項が契約に規定されていた場合、会社を譲渡後に以前からの取引先との契約に解除事由が発生したとき、契約相手に対して通知するもしくは承諾を得なければなりません。
まとめ
会社をM&Aで売買する際には、売り手・買い手双方に様々な心理が働きます。思惑の行き違いを整理できないまま本格的な交渉に進めば、破談は必至。今回紹介した心理や争点のパターンを頭に入れたうえで、M&Aアドバイザーの力を借りるなどして有利に交渉を進めていきましょう。
以前、トップ面談の秘訣を解説したコラムを公開しています。合わせてこちらもお読みください。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役