トップ面談とは、顔合わせ程度のものでも本格的な交渉の場でもありません。
トップ面談の位置づけを正しく理解し、うまく立ち振る舞うにはどうしたらいいか。その秘訣をお話しましょう。
トップ面談とは?
M&Aコンサルタントが売り手企業に提示した買い手候補の中から交渉相手を絞り込んだ後に行われるのが、双方の企業によるトップ面談です。それまではお互い書面上でしか知らなかった両者が、ここで初めて顔を合わせることになります。
初回のトップ面談が行われるのは通常、買い手・売り手どちらかの会社か仲介会社のオフィス、もしくはホテルの会議室です。買い手が大企業の場合では社長ではなく、M&A担当の役員が出てくる場合もあります。
トップ面談の目的と機能
トップ面談の主な目的は、お互いの人柄を理解することです。
両者の創業からの経緯や直近の業績、来期の見込みなど、様々なテーマが話題にのぼります。
トップ面談で最も重要なのは、つまるところ両者の相性です。経営に関する双方の考えがぴったり一致して意気投合し、ほぼM&A確定となるようなケースもあれば、条件的には合意しているのに、お互いがなんとなく折り合わないことで不成立になるケースもあります。
初回だけでなく2回、3回と、双方の距離感を詰めて信頼関係を作っていく場としても、トップ面談は機能します。
トップ面談の注意点
トップ面談に臨むにあたって売り手企業の経営者が注意しておきたいこととしては、まず妙な見栄を張らないことです。
売却を希望している会社の経営者は、つい自分の会社を良く見せるような話をしがちです。数字は嘘をつけないとしても、社風や従業員の頑張り、取引先の質のよさなどを誇大に伝えてしまいます。しかし、そんな姿勢は買い手に見抜かれ、違和感を持たれるものです。
また、買い手企業への過剰なリップサービスも必要ありません。逆に胡散くさく思われます。基本的に売り手と買い手は対等。売り手の経営者であり、自分の会社を売るための営業マンではないので、媚びへつらう必要はありません。
必要なのは普段どおりで誠実な応対です。見栄を張るのでも媚びるのでもなく、自社のありのままを見せるつもりでフラットに対応してください。聞かれたことには素直に答えましょう。
また、売上など数字で見せられる資料は最初からまとめて、トップ面談に持参してもいいと思います。対応がスムーズな方が当然、その後の交渉は進みやすくなります。
交渉はコンサルタントに任せる
中には、トップ面談を交渉の場と勘違いして、M&A仲介会社を介さずに具体的な条件や金額などの交渉を始めてしまう経営者もいます。双方に金額、条件などについての話はしないでくださいと事前にお伝えしているにもかかわらずです。勝気な性格であったり先走りがちだったりする経営者の場合、その傾向が顕著です。
しかし、話が盛り上がり、予防線を張るためか、売り手の弱みを見つけたと思ったのか、「こんな金額では買えない」とか、「こんなに悪い点があるから、条件は下げてもらわないと」などという方がおられます。結果、交渉がうまくいかなくなることは言うまでもありません。
なお、もし買い手候補の経営者がこのように勝手に交渉を進めようとするタイプだった場合、相手のペースに巻き込まれてはいけません。
何を言われても必ず、M&Aコンサルタントに相談して返答する旨を伝え、決してその場で返事をせず引き取るようにしてください。あるいは、そのようなスタンドプレイがしばしば生じる相手が買い手候補の場合、それは売り手からの交渉打ち切りを決断する十分な理由になります。
まとめ
トップ面談は本格的な交渉ではないにせよ、M&Aを成立させるために必ず通らなければいけない関門です。決して難しいことが求められるわけではないですが、変な失態を演じないように気をつけましょう。
一方、トップ面談はこれから自社の経営をやってくれる相手に初めて出会えるポジティブな場、というのが本来です。
相手企業の顔が見えない中で検討していた段階では湧いてこなかったイメージも、トップ面談で顔を合わせればグッと膨らんでくるはずです。
運命の相手との顔合わせの場、と期待して臨んでください。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役