本記事では、当社が再生型M&A案件に強みを持って取り組んできた実績から、基本的な進め方とスケジュールを解説しましょう。
再生型M&A案件の進め方
再生型M&A案件の基本的な進め方は、以下のようになります。
1.初回相談
2.秘密保持契約
3. 再生への具体的な提案
4 アドバイザリー契約締結
5.専門家チームの組成
6. 再生計画の作成、再生スケジュールの目処調整
7.バンクミーティングで金融機関との再生計画の調整
8. スポンサー候補の選定
1)スポンサー候補へ打診
2)スポンサー候補と秘密保持契約締結
3)詳細資料開示
4)トップ面談
9.スポンサー選定(入札の場合もあり)、優先交渉権付与
10.バンクミーティング(金融機関とスポンサーの調整)
11.基本合意(独占交渉権)
12.デューデリジェンス
13.バンクミーティング 金融機関と弁済額の調整
14.最終契約締結
15.クロージング
再生型ではない通常のM&Aの進め方については、以下の記事でも解説しています。
こちらもご参照ください。
オーナー社長のための再生M&A入門その③業者選びと進め方
本記事では、主に再生型M&Aが通常のM&A案件と異なる点を中心に解説します。
金融機関との交渉が最大のポイント
再生型M&A案件においては、売り手企業が債権を全額返済できないことが前提になります。そのため、「再生計画」を策定し、スポンサー選定の前に金融機関とのバンクミーティングで合意することが必須です。ここが通常のM&Aと最も違うポイントになります。
金融機関としては、M&Aによる売却に協力するかどうかを「破産させるよりも返ってくる債権が多いか少ないか」という基準で判断します。スポンサーを見つけることで弁済される債権を多くできるような計画が重要になるのです。
買い手候補企業の選定についても、金融機関側の「なぜ、ここの会社にオファーしないのか」「この会社に買収されるのはやめてほしい」といった意向との調整が発生します。関係者全員の合意を得て交渉に進んだという前提が大事なので、買い手候補企業の選定にあたっては入札が行われることもあるのです。
最終契約の前にも、バンクミーティングによって債権者それぞれの弁済条件を詰めるプロセスが発生します。
再生型M&Aでは、このバンクミーティングが鬼門です。交渉が難航しがちなだけではなく、関係者全員を集めて開催するのは月1回くらいになるため時間がかかってしまいます。
通常のM&A案件では3ヶ月程度で決着がつくケースもありますが、再生型M&Aでは半年から1年程度かかるのが普通です。当然、その間の売り手企業の経営は自社のキャッシュフローによって維持しなければいけません。
専門の再生チームの協力が必須
通常のM&Aにおける参加者は、売り手・買い手の双方とM&A業者(M&A仲介会社やFA会社)です。
しかし、再生型M&Aではそれ以外にも弁護士、公認会計士、フィナンシャルアドバイザー、不動産鑑定士、司法書士などから組成される専門の企業再生チームの協力が必須になります。
金融機関関連のやり取りは基本的に弁護士の対応になりますし、弁済の計画も公認会計士のお墨付きがついたものでないと金融機関から相手にしてもらえないのです。また、弁護士や公認会計士であれば誰でもいいというわけではありません。事業再生に関する分野は非常に専門性が高く、士業のプロであっても再生案件の経験が豊富でないと対応が難しいのです。
しかし、だからといって企業再生案件の経験が豊富な士業のプロを売り手企業が自ら探せるかというと、難しいでしょう。自社の顧問弁護士にお願いしても、十分な働きはしてもらえないはずです。そこで、企業再生の専門家をチームとして集められるM&A業者に依頼することが必要になります。
たとえば当社がFAに入った案件では、会社分割や事業譲渡など最適な売却スキームをアレンジした上で、その案件に合った弁護士や公認会計士などのチームを都度、組成しています。
まとめ
再生型M&Aにおいては通常のM&Aのように売り手と買い手さえ合意すればいいわけではなく、売り手企業がお金を借りている金融機関に了承してもらうことが必要になります。
売却のスキームから再生計画の作成、スポンサー選定、バンクミーティングのセットなど、通常のM&Aより非常に専門性が高いのが特徴です。
ただ、再生型M&Aのプロセスは困難ではありますが、実現すれば売り手企業の融資を減免してもらったうえで、オーナーの手元にお金を残す形での売却が可能になります。
大手のM&A仲介会社などの場合、再生型案件は時間がかかるために敬遠されることも多く、再生型M&Aを検討するにあたっては経験豊富なFA会社を見つけることが重要になるでしょう。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役