KIZUNA ローカルM&Aの
絆コーポレーション

ローカルM&Aマガジン

Q「M&Aにはさまざまな手法があると聞きましたが、具体的に教えてください」

[著]:小川 潤也

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(質問者様)
食品メーカーを経営しております。売上は約10億の中堅企業で、製品に特徴があり、利益もいい時は数千万でています。しかし、設備投資するたびに借金をして、返済が進むと設備投資しての繰り返しです。
後継者と思っていた息子は大手商社に勤めているのですが、跡はつがないとはっきりと先日、言われてしまいました。
そろそろ引退を考えているのですが、M&Aを検討するようになりました。M&Aにもさまざまな手法があると聞いたのですが、具体的に教えてもらえますか?

(小川)
もちろんです。M&Aには事業再生型や事業承継型など、さまざまな手法があります。それぞれの手法を順番に説明しますね。

・事業再生型M&A

 事業再生型M&Aは、経営破綻寸前の企業をスポンサー企業が資金を出して、買収して再生させる手法

・事業承継型M&A

 事業承継型M&Aは、後継者のいない企業を引き継ぐ企業がその会社の株式や事業を買い取る手法

・成長戦略型M&A

 成長戦略型M&Aは、企業の成長戦略を実現するために行なわれる手法

・垂直統合型M&A

 垂直統合型M&Aは、同じ業種、業態の企業同士で行なわれるM&Aの手法

これらがM&Aの代表的な手法です。ご自身の企業の状況や目標に合ったM&A手法を選定することが重要です。

(質問者様)
それぞれの手法には、どのようなメリットがあるのでしょうか?

(小川)
事業再生型M&Aの主なメリットは、経営が破綻寸前の会社を再生できる点です。
経営難に陥った企業を買い取ってもらい、経営改善や業務再構築を行なうことで、新たな成長のチャンスを創出できます。経営難から救済されることで従業員や取引先に安心感を与えることもできるでしょう。御社には再生の必要はなさそうなので、これ以外の方法ですね。

事業承継型M&Aのメリットは、後継者問題を解決し、企業の事業継続ができるようになる点です。
引退を考えている経営者が後継者を持たず、自社の事業を他社に承継してもらうことで、企業の存続が可能になります。また、承継先の企業が事業を引き継ぐことで、シナジー効果を生み出し、両社の成長に寄与することができます。

成長戦略型M&Aの主なメリットは、会社を売却することで他社の市場シェアの拡大や新規事業領域への進出に貢献しながら、事業が引き継がれる点です。
買い手企業にとっては業績を拡大し、競合他社との差別化を図ることができるメリットが挙げられます。
さらに、成長戦略型M&Aによって得られるシナジー効果により、経営効率の向上や新たな収益源の確保が期待されます。

垂直統合型M&Aは、どちらかというと買い手にとってメリットが大きい手法です。
売り手は自社を売却して資金を得ることができるのがメリットですが、買い手は自社の事業を補完し、競争力を高めることができるのです。
買い手は自社の供給チェーンや生産工程に関わる他社を買収することで、原材料や仕入れコストの削減、販売ルートを安定化させることが可能になります。

これらが各M&A手法の主なメリットです。ただし、M&Aにはそれぞれの手法に応じたリスクも存在しますので、慎重な計画と実行が必要です。

(質問者様)
M&Aに失敗するリスクを減らすためには、どのような注意点がありますか?

(小川)
以下のような注意点があります。

①急な変化や業績向上は期待せず、長期的な視野で判断する

M&Aにおいて、急な変化を買収した企業に求めたりせず、企業文化の違いを認め、ビジョンを共有し、一緒に成長するマインドをセットできるかが、重要だと思います。売り手にとっては会社を評価してもらい、その対価をもらえることもオーナーにとっては大事です。そして、自分の会社が末長く成長し、社員がやりがいを持って、働いてもらうこともより重要です。

そのために買い手の買収の目的が何であるか、シナジーはどんなことを求めているのかを確認することが大切です。
「統合後のシナジー効果に期待できるか」や「理念や企業文化が合致するか」などを総合的に判断しなければなりません。目先の利益にとらわれず、長期的なビジョンを持つことが重要です。

②デューデリジェンスの実施

M&Aを進めるうえでデューデリジェンスはもっとも重要と言ってもいいでしょう。
絶対にやってはいけないのは、隠し事をすることです。M&Aを有利に進めるために誤った情報を伝えてしまうと、その不備が発覚した段階で、買い手企業の信頼を大きく損ないます。些細な情報でも正確に伝えることを徹底しましょう。

ネガティブな情報を隠すことのデメリットは「M&Aの注意点は?――ネガティブな情報こそ、隠してはならない!」でも解説しているので、こちらも参考にしてください。

②情報漏洩による取引の中止や従業員の流出

M&Aを実行するにあたり、M&Aを検討して、交渉していることは絶対に社内外とも秘密を守ることです。

社外の取引先に意図せぬタイミングで情報流出してしまうと余計な不安を抱かせてしまい、取引が縮小する、あるいは取引中止になる恐れもあります。
社内の情報共有のタイミングを間違えると、従業員の士気が低下したり、不信を買ったりすることがあり、優秀な人材の流出にもつながりかねません。だから、情報の公開は慎重に進めていく必要があります。

③無理な条件交渉や不誠実な態度

M&Aは大きなお金が動く取引です。M&Aの諸業務は煩雑な分、知識と経験が必要になります。M&A仲介会社に相談して、相手との交渉のうまく進めることがいいと思います。自分で相手を探して、交渉して、決めとうと動く経営者の方もおられますが、結局、うまくいかずに私どもに相談に来られます。

どんな金額で、どんなスキームで、契約書はどうするのかと相手を決める以外にもいろんな知識を手間が求められます。交渉を円滑に進めるためにも、経験豊富なアドバイザーのサポートを受けながら、買い手企業と信頼関係を築くことを意識しましょう。

⑤M&A中の業績悪化

M&Aは長期間におよぶ取引となります。交渉の最中の業績悪化が著しい場合は、契約破棄につながる可能性もあります。会社を売却し、正式に引き継ぎが完了するまでは、気を引き締めて経営に取り組むことが重要です。

(質問者様)
ありがとうございました。M&Aは手法が複数あるだけでなく、メリットやリスクを把握するだけでも大変ですね。M&Aアドバイザーに相談することの重要性もよく理解できました。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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