当社が拠点を置く新潟県においても、後継者不在に悩む中小企業と起業家人材をマッチングすることを主な目的として、2015年に新潟県後継者バンクがスタートしています。
後継者人材バンクについて、制度の概要や使い方、また活用のメリットについて解説しましょう。
後継者人材バンクとは?
中小企業の多くが後継者不在に悩んでいることを背景に、スムーズなM&Aの促進、また起業を目指す若手人材への機会提供を目的として、後継者人材バンクはスタートしました。
まずは申し込みが必要
後継者人材バンクを活用するためには、まず申込書に記入をして地域の商工会議所、事業引き継ぎ支援センターなどの支援機関に申し込みます。
申込書は提出先の役所に雛形が置いてあるほか、事業引き継ぎ支援センターのホームページからダウンロードすることも可能です。
申込書を提出すると事業引き継ぎ支援センターから連絡が来るので、面談をセッティング。その後、後継者人材バンクに自社を登録することになります。
匿名で情報開示
後継者人材バンクにあなたの会社が登録される場合、まずはノンネームシートと呼ばれる資料を提出することになります。
この段階では、売り手企業がどこなのか特定できない程度の情報を開示して、承継者候補を募集します。売り手サイドからの情報漏洩にさえ気をつければ、会社が特定される心配はありません。
以降、M&Aディールに入る
その後、承継者候補とのマッチング、秘密保持契約の締結、基本合意、デューデリジェンス、最終交渉……と、M&Aのディールが進んでいきます。
M&Aのプロセスに進んでからは、民間のM&A業者が間に入る場合と変わりありません。事業引き継ぎ支援センターが仲介役に入る、というだけです。
M&Aのプロセスについては、以下の記事で詳しく解説しています。よろしければそちらも参考にしてください。
・オーナー社長のための再生M&A入門その③業者選びと進め方
https://www.kizuna-corp.com/column/ma-basic3/
後継者人材バンクはまだまだ発展途上?
信頼できる公的機関の旗振りによって、M&Aによる事業承継をサポートしてもらえる……そう聞くといいことづくめな後継者人材バンクですが、まだまだ課題はあります。
知名度に乏しい
2018年の中小企業白書によれば、2016年1月時点で事業引き継ぎ支援センターを「知らない」と答えたのは全体の77・1%、後継者人材バンクについては全体のうち「利用(相談)してみたい」と答えたのは15・1%。事業承継の方針を「承継したいが、現時点で後継者が見つからない」とした者に限定しても36・7%です。
まだまだ認知度が低く、事業承継の主役となる中小事業者からの関心も低い現状がうかがえます。
未設置の自治体も
現状は知名度の低い後継者人材バンクですが、そうなると当然、実績不足も課題になります。
2014年から設置の始まった後継者人材バンクは、まだ設置が済んでいない都道府県もあるのです。
M&Aにおいて、仲介者の実績や経験値は非常に重要です。
あなたの会社において後継者人材バンクの実績が足りない場合、望ましいマッチングができない可能性があります。また、そもそも登録数が少なくプラットフォームとして未発達である拠点の場合、マッチングして交渉に進むこと自体が難しいかもしれません。
まとめ
日本は国を挙げて中小企業の承継問題の解決に乗り出しており、後継者人材バンクの取り組みも、政府肝いりのものです。
しかし、現状はまだまだ開始より日が浅く、その可能性についてはなんとも言えないのも事実。M&Aの相談に訪れ、あまり過度に期待しても、うまくマッチングできないまま時間ばかりが過ぎてしまうかもしれません。
事業承継において、時間は最も大切なファクターと言っても過言ではありません。
実際、タイミングを逃して経営者の健康状態が悪化したり、業績が低下したりして売り時を逃してしまうケースは多いのです。
公的機関への相談でスムーズに話が進まなそうであれば、民間業者への相談も並行して進めるなどの選択肢を検討したほうがいいでしょう。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役