ローカルM&Aマガジン

企業価値を左右する! デューデリジェンスの基本と種類

投稿日:2022年8月9日

[著]:小川 潤也

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M&Aをはじめとした企業買収や組織再編において、「デューデリジェンス」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

今回の記事では、企業の資産価値を測るうえで無視できないこのデューデリジェンスの基本的な知識と具体的な種類を解説します。

デューデリジェンスとは?

デューデリジェンス(DD)とは、企業の買収や投資等を行なうときに、対象となる企業の価値やリスクを調査する作業です。

M&Aでは、買い手が買収を検討する対象会社にデューデリジェンスを実施するのが一般的です。

デューデリジェンスを直訳すれば、「当然尽くすべき努力」。M&Aを実施するにあたっては当然実施する調査だとも解釈できます。

このデューデリジェンスをしっかりと行なうかどうかで、M&Aの結果は大きく左右されるのです。

【デューデリジェンスについては、「デューデリジェンスを甘く見るな!その意義を徹底解説」でも詳しく解説しているので、参考にしてください。】

デューデリジェンス(DD)の種類は?

それでは、デューデリジェンスの具体的な種類を解説していきましょう。

①財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスとは、企業の財務情報に関する企業価値評価を調査することです。

ファイナンシャルデューデリジェンスともいい、あらゆるデューデリジェンスの中で最も重要といっても過言ではありません。

財務デューデリジェンスを実施する目的は、次の4つです。

●収益性の過去実績や将来の収益性見込みの確認
●債務や負債が適正範囲かの把握
●キャッシュ・フローの分析
●不正な経理処理がないかの確認→粉飾決算していないか
●簿外債務があるか、どうかの確認

デューデリジェンスを実施した結果、財務内容が良好だと判断されれば、買い手も売り手も納得したうえでM&Aを実行することができます。

上記に加え税務面も一緒にデューデリジェンスを実施します。それは過去の税務リスクを調査することです。

主に法人税の未払いや税務申告書の閲覧、過去の税務処理の確認、将来発生しうる税務リスクの把握などが調査されます。

M&Aでは合併や買収前の税務申告、および買収後にかかる税金の調査を行ないます。

税務デューデリジェンスはさほど重要視されていませんが、税務リスクを見落としてしまうと重加算税のペナルティを課されるなど、大きな損失を被る可能性があるので注意が必要しましょう。

この財務デューデリジェンス会計事務所や監査法人などの専門家に依頼して実施することが多いです。

②法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスとは、企業が締結した契約や取引が法律の範囲内で適正に遵守されているかどうかを調査することです。

法務デューデリジェンスを実施する目的は次の2つです。

●所有権等の法的権利が訴訟対象になっていないかの確認

●許認可や登記が適切かどうかの確認

法的なリスクを抱えていると、訴訟や和解、任意整理などに莫大な時間やコストが費やされてしまいます。

法務デューデリジェンスはとにかく確認すべき項目が多いため、弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。

この財務と法務がデューデリジェンスの2大項目です。この二つをメインに実施することが多いです。

③ビジネスデューデリジェンス

この③ビジネスデューデリジェンスや④人事⑤ITは中小企業のM&Aでは総務の責任者や担当者が訪問して、確認することで済ませるケースがほとんです。というものこれはその会社の運営部分で、企業評価にもあまり加味されない部分だからです。

ビジネスデューデリジェンスとは、対象企業の事業に直結する市場全体の調査をすることです。ほかのデューデリジェンスとは異なり、企業内部ではなく市場といった外部要因が査定対象となります。

M&Aのような買収のときには、商品やサービスのニーズだけでなく、営業やマーケティングなどのビジネスモデルのポジションやポテンシャルも確認されます。

投資や統合を実施するリスク評価も行なわれ、専門の経営コンサルティング会社に依頼することが多いです。

④人事デューデリジェンス

人事デューデリジェンスとは、企業の人事や労務に関する調査のことです。

具体的には、人員数や人件費、人事戦略、人事制度の仕組みと運用、労使関係などが調査対象となっています。

M&Aなどで組織再編をした後、社員の年金や退職金がきちんと支払えるかなど、企業の資産に関わる重要な調査でもあります。

⑤ITデューデリジェンス

ITデューデリジェンスとは、対象企業の情報システムについて調査することです。

とくに顧客管理や販売管理システム、人事労務システムなどは、買い手と売り手の双方が異なるシステムを利用している可能性も十分にあります。それらをどのように統合するのかといった、工数やランニングコストを抑えるためにも重要な調査といえます。

システムと業務両方の知識がないと対処が難しいため、ITコンサルティング会社に依頼するケースが基本です。

まとめ

M&Aを検討するときには、包み隠さず過去の資料まで開示して、正当な評価をしてもらうことがとても重要です。

適正な評価を受けるためには、デューデリジェンスが不可欠だということをしっかり覚えておきましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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