M&A用語集
ネットキャッシュ
現預金と短期保有の有価証券の合計額から有利子負債を差し引いた金額をいう。キャッシュリッチ(金余り)の度合いを示す。企業の実質的な手元現金を指し、通常、潤沢な企業は財務の安全性が高く、不況時の抵抗力が強い。
その反面、大量の現預金等を抱えながら、時価総額の低い(市場評価が低い)企業は、成長投資や株主配分など手元資金の有効な使い途を市場に対して十分に示していないと見られる傾向にあり、設備投資や配当などに回せる余裕があることから、投資対象として魅力がある。そのため、M&Aなど企業買収の候補にもなりやすく、株式市場で注目されることが多い。
ネットキャッシュが時価総額よりも大きい場合、その企業の株式を時価で100%買収した際に、会社を清算(税金は未考慮)しても現預金が残るという計算になる。その意味で、かなり割安感が強い状態と株式市場では考えられる。
ネットキャッシュとは反対に、負債の方が現金より多い場合はネット・デッド状態となる。(ネット・デッド計算式:実質有利子負債—現金及び現金同等物)
ネットキャッシュの計算式
(現預金+短期保有の有価証券)-(短期借入金+長期借入金+社債+1年以内返済の長期借入金+1年以内償還の社債+割引手形)
ネットキャッシュ利用したM&Aの有効性判断方法
M&Aの有効性をキャッシュリッチの観点で判断する際、時価総額をネットキャッシュで割ったネットキャッシュ倍率を用いる。ネットキャッシュ倍率が1倍以下ということは、時価総額以上にネットキャッシュを持っているということになり、財務健全性が高いと判断できる。その反面、ネットキャッシュ倍率が小さいと、預金や現金が活用されていないキャッシュリッチ企業として株価が割安と判断され、買収候補となりやすくなる。
また、企業価値としてのEVにネットキャッシュを加えた値を、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)で割ったEBITDA倍率が小さい場合などには、買収資金をより短い期間で回収できるとみなされる。