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赤字会社は売却できる? 売るポイントを徹底解説

[著]:小川 潤也

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「赤字の会社なんて、売れないのではないか……?」

そんな疑問を抱いている経営者もいるでしょう。赤字だからといって諦めるのはまだ早い。たとえ赤字会社でも、何かしら強みや魅力があれば売れる可能性は大いにあります。

ただ、黒字会社と比べれば、買い手を探すのが難しいのは当然。売却価格も安くなってしまいがちです。

それでは、赤字会社を売るにはどうすればいいのでしょうか?今回は、赤字企業の売却のポイントについて解説します。

中小企業は6割以上が赤字!

赤字とは、支出が収入を上回って、利益がマイナスの状態を指します。

損益計算書(PL)には売上総利益や営業利益など5つの利益が記載されていますが、一般的にはこのうち「当期純利益(税引後当期純利益)」がマイナスだと会計上、赤字と見なされます。

国税庁が2023年に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2021年度の赤字法人率は65.3%でした。つまり、半分どころか6割以上の企業が赤字なのです。

それではなぜ、赤字会社が倒産せずに事業を続けているのでしょうか? たとえ会計上は赤字でも、現金が手元にあれば企業は簡単にはつぶれません。

逆に「黒字倒産」という言葉があるように、たとえ黒字でも現金が手元になくなると倒産してしまうことがあるのです。中には、本当は儲かっているのに、意図的に赤字決算にしている中小企業もあります。これは法人税を節税するためです。

単に決算が赤字だからといって、必ずしも事業がとん挫しているとは限らないのです。

赤字会社でも売却することができるのか?

赤字会社だからといって一概に売れないとは言えません。事業に強みがあったり、独自のノウハウを持っていたり、優秀な人材がいたりする会社なら、売却できる可能性があります。

あるいは、設備投資などによって一時的に赤字になっているケースもあるでしょう。買収先を探している企業の中には、早期の市場シェア拡大を優先していて短期的な損失を許容するケースもあります。将来の収益性が見込めるならば、売却できる可能性が高まります。

ただし、赤字会社の売却は甘くない

赤字会社でも、M&A仲介会社から営業をかけられることもあるでしょう。営業担当は案件獲得がミッションですから、「売れる」と言って提案してくるのは当然です。

そのため、「着手金を払ったのになかなか売れない……」というケースもあり、筆者も実際にそうした相談を受けたことがあります。

こうした場合、しびれを切らして他のM&A仲介会社に相談したところで、状況がすぐに改善するとは限りません。赤字会社の売却は可能だといっても、決して簡単ではないからです。

当社にも、赤字会社の売却の相談が入ってきますが、よく聞かれるのが「もう少ししたら業績が良くなるから」「来年、再来年は利益が出るから、高い価格を付けてほしい」「今はボトムだから」という言葉。

しかし、根拠のない将来予測は現在の価値には含まれません。

赤字会社を売却するなら、あやふやな将来を語るよりも、現在の価値を少しでも高めるように準備することが大切です。

赤字会社を売るためのポイント

それでは、赤字企業を売却するために、どんな準備をしたらいいのでしょうか?

1.事業の再評価と再構築

なぜ赤字になっているのか? 赤字の原因をきちんと特定したうえで、業績向上のための計画を策定します。業務効率化やコスト削減などを検討して、収益性向上を図りましょう。

2.資産の見直し

財務状況を詳細に分析して、資産と負債を正確に把握しましょう。よくあるのが、会社の資産と経営者個人の資産が混在していること。この2つを明確に切り分けておくことも大切です。

3.トラブル要因の解消

買い手は買収後に発覚するリスクを恐れています。代表例が従業員への残業代の未払い。こうしたものがあれば、きちんと清算しておきましょう。

4.企業価値の評価

信頼できる専門家やアドバイザーに依頼して、企業の実際の価値を評価します。これによって、妥当な売却価格を設定できます。

5.交渉戦略の検討

売却価格や契約条件に関する交渉戦略を検討します。赤い字会社の売却では、自分の希望がすべて通るとは限りません。売り手として、譲れる部分と譲れない部分があるでしょう。そこは柔軟性を持って、妥協点を見極めるようにしましょう。

まとめ

赤字会社の売却のプロセスは複雑だからこそ、十分な準備が欠かせません。プロフェッショナルの協力を得つつ、戦略的かつ慎重なアプローチを取ることが成功の鍵です。

たとえ赤字でも、買い手企業が「投資する価値がある」と魅力を感じる会社になっていることが重要。そのためには、早めに準備することをおすすめします。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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