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敵対的買収とは? 仕組みや特徴を徹底解説!

[著]:小川 潤也

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「敵対的買収」という言葉を聞いたことはありますか?

ドラマや小説の影響か、「企業買収=敵対的買収」と思う人が多いようです。ひと昔前のホリエモンがニッポン放送を買収しようとしたのが一例です。

最近は光通信が上場企業450社の株式を3573億円(簿価ベース)投資している例もありますが、これは買収ではなく、純投資として行われているようです。

しかし、光通信が10%以上の大株主になっている企業の経営者はいくら純投資とIR資料に書いてあっても、何か仕掛けてくるのではないかと戦々恐々ではないでしょうか。

今回の記事では、そんな企業の敵対的買収について、仕組みや特徴を解説します。

敵対的買収とはなにか

まず、敵対的買収とはどんな買収を指すのか、説明しましょう。

非上場企業には無関係!

敵対的買収で狙われる買収先は上場企業のみに限られ、非上場企業には無関係です。

なぜなら、非上場企業は株主が公開されていないので、買収しようにも株主を特定できません。また、買収することを掲げたとしても、市場での売買ではなく、相対での取引なので、不可能に近いです。

また、仮に売却しようとする株主がいたとしても、ほとんどの会社は定款に株式譲渡を制限する条項が含まれております。譲渡制限条項がある場合、取締役会の承認を得なければ、株式の譲渡は実行できません。経営陣とは関係ない第3者への株式譲渡の承認をする会社はないに等しいです。

つまり、いくら強引に株式を取得しようとする企業が現れてもガードは鉄壁なのです。

中小企業の敵対的買収が行われないのは、こうした理由があるからです。

相手の合意を得ずに行なう買収

さて、本題に戻り、敵対的買収とは、買収先となる会社の合意を得ずに実施するM&Aで、「敵対的TOB」とも呼ばれます。

一例を紹介すると、ひと昔前のホリエモンのライブドアがニッポン放送買収しようとして、子会社のフジテレビを傘下にしようと大騒ぎになったことありました。

その敵対的買収の目的は、株式の過半数51%以上を(株や委任状を含み)取得できたら、現経営陣を退任させ、新しい役員を送り込み、取締役会を支配し経営することです。

上場企業なので、株を買われることは当たり前のことで、買い集められたといって、それが悪いことかというとそういうわけではありません。

しかし、日本人の感情として、突然、ルールに乗っ取っているからと言って、他所様が経営している会社をお金に物言わせて、買い集め、社長を交代させるということを受け入れ難いものがあります。

どのような方式で行なうのか

敵対的買収は、友好的買収と同じく、買収先企業の株式を取得することで実施されます。

敵対的買収が友好的買収と異なるのは、「公開買い付け」という方式で株式を集める点です。
公開買い付けとは、買収先企業の株式を買い付ける日付と価格を公表したうえで行なう買い付けのこと。

日本では、金融商品取引法で「強制公開買付制度」という規制があります。上場企業の株式を3分の1以上取得する場合、原則として公開買い付けを実施しなければいけません。そのうえで、株式市場を通じて他の株主から株式を買い集めるのです。

敵対的買収はあまり行なわれていない

イメージだけが先行している敵対的買収ですが、現実にはあまり行なわれていません。

その理由を説明しましょう。

敵対的買収の3つの欠点

敵対的買収が少ない背景には、次のような理由があります。

理由① 多額のコストがかかる

公開買い付けで提示する株価は、株式市場で通常取引される価格よりも高くする必要があります。そうしなければ、他の株主が買収に協力する形で株式を手放してくれないからです。

多くの場合、かなり割高なプレミアムをつけて一気に株式を買い集めようとする戦略が取られます。そのため、敵対的買収のコストは友好的買収に比べて非常に高額になります。

理由② 買収防衛策が豊富にある

多くの上場企業では、なんらかの買収防衛策が取られています。防衛策は豊富にあり、株式の買い付け自体を不可能にする策や、買収を実行した際のメリットを消してしまうトラップなどが仕込まれています。

買収防衛策をかいくぐって敵対的買収を実行するのは現実的に非常に難しく、実行する企業は非常に少ないです。

理由③ 世間のイメージが悪い

一般的に、敵対的買収は「ハゲタカによる乗っ取り」のような悪いイメージが持たれています。

公開買い付けで高いプレミアムを付けても、ニュースなどで悪評が広がれば、株主は売却を躊躇してしまうかもしれません。

さらに、敵対的買収に成功しても、「親会社は悪徳企業」といったイメージが定着してしまえば、その後の営業活動に支障をきたすと考えられます。

まとめ

なにかと世間の注目が集まりやすい敵対的買収ですが、中小企業の経営者はほとんど無縁の世界です。

ただ、上場企業なのに買収防衛策を取っていないようであれば、早急に対応を検討したほうがいいでしょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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