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M&Aを実施する理由は? 主な戦略を4つ紹介

[著]:小川 潤也

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ひとことにM&Aといっても、実施の目的は各社によってさまざま。

どのような戦略に基づいて実行するのかで、M&Aの対象となる企業も変わります。

今回の記事では、M&Aの戦略で多い4つの目的を解説しましょう。

M&Aの目的とは?

かつてM&Aといえば、「自社の規模拡大を目的とした単純な買収」といった類いのものでした。

しかしビジネス環境が複雑化した現代、M&Aの目的は多様化しています。

現代のM&Aがどのような効果をねらって行なわれるのかを解説しましょう。

目的①既存事業の売上拡大

いまも昔も変わらず最も多いのが、買い手の営む事業と同業種の会社を買収することで事業規模の拡大をねらうM&Aです。

特に店舗系のビジネスなど、ハコモノの集客が売り上げのカギを握るような事業では、買収によって店舗数を増やせれば、M&Aこそが効率的で長期的な成長戦略となりえます。

メーカーなどにおいても、生産能力の拡大はグループ全体の成長に直結するうえに、グループ規模の拡大によって原材料などの仕入れが増えれば、コストの効率化をもねらうことができます。

一方で、統合によって借入金が多額になりやすい点には注意が必要です。

目的②新規事業への進出

新規事業に進出するために、自社事業と近い業種の企業を買収するM&A事例もしばしば見られます。

たとえば、メーカーが自社商材の小売り業者や卸業者を買収すれば、製品をエンドユーザーに届けるまでの流れを一括して管理できるようになります。

このパターンのM&Aにおける最大のうまみは、買収先の「ノウハウ」と「実績」を自社に統合できる点。

新規事業への進出を考えるにあたって、資金に余裕がある会社ならば、自社で新しく設備投資を行なって事業人員を揃えることができます。とはいえ、自社の既存事業と異なるビジネスを経営するノウハウ、また実績に基づく取引先からの信用などは、一朝一夕で得られるものではありません。

しかし、進出したい事業をすでに成功させている会社をM&Aで買収することで、競合他社への優位性をスムーズに発揮できるでしょう。

目的③保有資産と人材のシナジー発揮

単純な足し算的発想のM&Aだけでなく、買い手と売り手がもつ数字に表れない価値を最大化するM&Aも、近年では増えています。

数字に表れない価値の代表的な例は、「特許」と「人材」です。

売り手企業が保有する特許が買い手にとって有用であると、会社ごと買収することもあります。

また、優秀な人材を採用する手段としてM&Aで会社の買収をしている企業もあります。中途採用で優秀な人材をヘッドハウンティングするにも時間と費用がかかります。それならば、会社を丸ごと買収できるのであれば、顧客と技術、そして、人材も手にいれることができます。

さらにIT化が進んだ近年では、M&Aによって売り手側の企業と買い手側の企業とのITシステムを統合することで、生産性が劇的に向上するケースもあります。

ただし、こういった知的財産権(知財)は、M&Aにおける譲渡価格に換算する場合はかなり高額となるケースが多いので、注意が必要です。
しかし、人材もその会社の財産でありますが、優秀な人材がいるかといって、譲渡価格にプレミアムが付くケースはあまりないのが現実です。

目的④海外進出のためのM&A

「海外で事業を展開するためのM&A」というと、総合商社をはじめとした大企業のイメージが思い浮かぶかもしれません。

しかし、近年では中小企業やベンチャー企業でも、海外企業とのM&Aを行なうケースが増えてきました。

その背景には、多くの日本企業が国内の人口減少を見据えて、長期的な成長戦略の鍵を海外市場に見出していることがあります。

海外進出するには、現地の人脈づくりから法制度や商習慣の理解、その国特有のカントリーリスクの管理など、多岐にわたる準備が必要。

ゼロから海外事業を作りあげるのは非常に困難ですが、そこで現地企業のM&Aという方法が注目されるようになったのです。

ただし海外M&Aでは、買い手企業と現地企業との文化の違いをはじめとする統合プロセスの難しさが、大きな懸念点となります。

最悪のケースでは、買収しようとしていた会社が実際にはペーパーカンパニーだったり、仲介会社が悪徳業者だったりなど、詐欺被害に遭ってしまうこともあるようです。

日本よりも物価の安い国の企業を買収する場合は、お買い得なM&Aになることも期待できますが、簡単に成功する施策でないことをしっかり認識しておきましょう。

まとめ

M&Aはリスクのある施策だからこそ、実行する側が買収後の事業展開などについての綿密なプランを立てておく必要があります。

M&Aがもたらす効果をきっちりと認識し、ビジョンを明確化することで、成功率を高めることができるのです。

昨今は中小企業もM&Aがブーム化している兆しがあり、仲介業者やアドバイザリー会社から「御社は高値で売れます!」という甘い声かけを受け、舞い上がってしまう経営者も多いようです。

勉強不足や準備不足で失敗しないよう、M&Aを検討する場合はくれぐれも安易に決断しないようにしましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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