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M&Aの手法はさまざま!――吸収・合併・提携の特徴と各メリット・デメリットを徹底解説

投稿日:2024年12月9日

[著]:小川 潤也

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後継者問題が社会化するなかで、M&Aに注目が高まっています。

ひとくちにM&Aといっても、その手法は多岐にわたります。

本記事では、主なM&Aのスキームと、売り手・買い手から見たそれぞれのメリットとデメリットを解説しましょう。

M&Aとは?

そもそもM&Aとは、「Mergers and Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジションズ)」の略語。簡単にいえば「企業の合併や買収」です。

「Mergers(合併)」とは、複数の会社が一つに統合されること。「Acquisitions(買収)」は、ある会社が他の会社の支配権(経営権)を取得することです。

買い手企業にとっては経営戦略のひとつであり、買収する側の企業は他社の人材や技術、設備や資金、人脈などの経営資源を手に入れることができます。とくに大企業の場合、事業を強化したり拡張したり、新規事業の立ち上げを見込んでM&Aが活用されます。

売り手企業の場合、とくに中小企業であれば、後継者がいなかったり業績が低迷していたりといったときにM&Aが活用されます。主として「事業承継型」と「事業再生型」の2つがあります。

M&Aの手法(スキーム)は大まかに分けて3つ!

M&Aの手法は、大まかに分けて次の3つがあります。

①買収
終章企業の場合、買収は「株式譲渡」と「事業譲渡」の2種類があります。

・株式譲渡
売り手企業が発行する株式を買い手が買い取り、経営権を移転するスキームです。

売り手と買い手の間で株式を直接売買する「相対取引」と、上場企業の株式証券取引所で買い入れる「市場買付け」、市場外で不特定多数の株主から株式を買い集める「公開買い付け(TOB)」の3種類に大別されます。非上場会社であれば、株式を公開していないので「相対取引」の手法のみとなります。

・事業譲渡
会社が保有する事業の一部または全部を買い手が買収するスキームです。権利義務や事業用資産のほか、ノウハウなどの無形資産が移転されます。

②合併
複数の会社をひとつにまとめる手法で、「吸収合併」と「新設合併」がありますが、いずれも主な目的は組織の再編成です。

独立した企業同士で行う場合もあれば、同じグループ企業内で行われる場合もあります。

合併する側は、合併される側の権利義務をそのまま引き継ぐのでシナジー効果が発揮されますし、スケールメリットも期待されます。

③提携
「資本提携」や「業務提携」などに分けられますが、買収や合併と違い、経営や事業に関する権利は移転しません。ただし、他社の経営資源を活用して事業成長を目指す点においては同じです。

資本提携では、それぞれが株式を持ち合ったり、提携先の株式を取得したりして資本面での協力関係を築きます。企業の経営に影響が及ばないように、持株比率は1/3を超えないのが通常です。

買収・合併・提携の種類ごとのメリットとデメリット

ここで、買収・合併・提携の種類と、それぞれのメリット・デメリットをご紹介しましょう。

M&Aの手法を検討するポイントは?

売り手側

・支払い方法
売却側のM&Aの大きな目的は、創業者利益の獲得と事業の承継。ただし、すべての形態で現金で支払われるわけではありません。
株式交換などが用いられる場合の対価は譲り受け会社の株式となります。上場企業に限ります。

創業者利益は株式保有者が売却益を享受しますが、事業譲渡の場合は事業譲渡した会社に譲渡対価を受領するので、株主は直接、対価を享受することにはなりません。

・時間や手続きの面
売却益の獲得や従業員の雇用先の確保などで、早急にM&Aを行なわなければならない場合は、成約までにかかる時間もポイントです。

必要な手続きが少ない形態であれば、それに伴う人件費を抑えることにもつながります。

・発生する税金
M&Aの売却益も、株式譲渡なら、譲渡益に対して税金が発生します。事業譲渡は譲渡対象の取得対価として所得を得るため、個人事業ならば所得税や住民税、法人なら法人税が発生します。

第三者割当増資の場合は、所得ではなく増資とみなされるため、税金が課せられません。株式発行によって取得した資金は、すべて事業のために使うことができます。

買い手側

・M&Aの目的
買い手側としては、なぜその企業を買収したいのか、M&Aの目的を明確に持つことが重要です。

たとえば、優秀な人材や技術力を獲得したいのか、事業をスピーディーに成長させたいのかなど、企業によって目的はさまざまですが、なにを実現したいのかによって選ぶべき手法が見えてきます。

まとめ

M&Aは、売り手企業にとっても買い手企業にとっても、自社や従業員の行末を左右する重大なイベントです。

双方が何の目的でM&Aを実現したいのか、それを見据えることで、どのスキームを選ぶべきかが見えてくるでしょう。

M&A仲介会社やM&Aコンサルタントなど、専門家のアドバイスも受けながら、最善の選択をとるようにしましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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