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経営者は万が一に備えよう

[著]:小川 潤也

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日本には、社長が70歳以上で後継者未定の中小企業が100万社以上存在します。

そんな中小企業の経営者が突然死して、いきなり廃業か売却するかの選択を迫られるケースが相次いでいます。

今回の記事では、経営者が急逝した場合、残された社員たちが困らないためのポイントを解説しましょう。

経営者が突然死したらどうなる?

「社長の突然死」とはあまり考えたくない出来事ですが、実際に中小企業では、「社長が突然亡くなったのに、承継の準備がなにもできていない!」というケースは決して少なくありません。

残された配偶者や子供の選択肢は、基本的には「廃業」か「売却」の二択です。また、配偶者が継ぐという選択肢もありますが、ほとんどが嫌がります。まれに配偶者が継いで、飛躍的に業績を伸ばしたというケースもあります。

どちらを選択するとしても、中小企業では社長が多くのことを管理しているワンマン経営が多いため、残された人たちにとって厄介なことになる場合が多いようです。

「社長がそんなに早く亡くなるなんて考えもしなかった」――残された大抵の役員や社員がそんな気持ちを抱くかと思いますが、「後悔先に立たず」なのです。

社長が亡くなったあとに事業承継を進めようとしても、株を持っている親族が全国各地に散らばっていたり、土地や建物といった不動産が会社所有と個人所有でバラバラだったりと、情報を把握するだけでも非常に大変です。

なかには、社長が個人的に仲の良い会社へお金を貸していたことが、社長が亡くなった後に判明するというケースもあります。

社長の生前から事業承継の準備を進めておかなければ、残された社員たちがとても困ることになるのです。

残された社員たちのことを考えよう

経営者が突然亡くなってからそうした事実が明るみに出ても、残された社員たちはそもそも経営者ではありませんから、自分たちの仕事の範囲を超えた内容をどう処理してよいかわからないものです。

いざ親族に分散していた株をまとめようとしても、「もらった当事者が既に亡くなっており、よかれと思って子供に分けた」「もらったものだから売りたくない」などと言い出す人が出てくるかもしれません。これは実際にあった話です。

残された社員たちには生活がありますから、できれば事業を続けたいと考えることでしょう。お得意先のお客さまにしても、突然廃業したら困るはずです。

そのため、先々から「自分がいなくなったとき」を想定し、早めに準備しておくというのは、社長の職責の一つです。

もしもの事態を見据えた対策の選択肢として、M&Aも有効です。

M&Aは長い期間を要する大型プロジェクトですから、しっかりと事前の準備期間を設けて備えていれば、成功する確率もぐんと高くなるでしょう。

残された人が困らないための準備の4つのポイント

それでは、経営者が突然亡くなったときに残された人たちを困らせないためには、どのような準備をすればいいのでしょうか。

①株式はまとめておく!

会社の株式は、経営者が元気なうちにきちんと整理しておくことをおすすめします。

株式は会社の議決権を左右するため、誰に承継するかが非常に重要となります。

もし自分が亡くなったときに誰に引き継ぐべきかは、事前に考えておかなければなりません。

会社を誰に継ぐのか、もしくはM&Aするのか……。それらをあらかじめ決めておいたほうが、残された人たちも判断がしやすくなります。

②万一が起こったときの相談先を指示しておく!

いくら準備しておいても、残された社員だけですべてを難なく処理できるとは限りません。

そこで、社長が亡くなったときの相談先をきちんと決めて指示をしておけば、安心です。

まずは弁護士、そして、税理士です。弁護士は遺産を誰に譲るのか、その内容を確定させるための手段を相談することです。そして、その遺産に対して、税金がいくら発生するのか、その申告をお願します。

また、会社を売却するのが前提であれば、どこに相談するのかも決めておくと安心です。大手のM&A仲介会社なのか、地域のM&Aコンサルなのか、銀行なのか、それぞれ得意不得意がありますので、社長として見極めて道筋をつけておくべきでしょう。

③万が一が起こったとき、継がせるか売るかの方向性を決めて指示しておく!

経営者急逝後の選択肢は、非常に限られています。

先代の経営者として必ず決めておくべきことは、「誰かに継ぐのか」あるいは「売るのか」ということ。

この方向性が明示されていなければ、相続人である、配偶者や子供が判断に迷うことにおなります。そして、社員たちは不安を抱えたまま働くことになります。

残された人たちが判断しやすいよう経営者としての考えをあらかじめ指示しておくことが大切です。

④会社の財務状況を整理しておく!

なかには、借金がある企業もあるでしょう。負の財産は、事業承継において大きなネックとなります。

たとえば、相続放棄も含めた手段で借金の個人保証の引き継ぎを拒否するよう家族に指示しておくのも、ひとつの手です。

相続放棄をすれば、連帯保証人であっても借金を継ぐ必要はありません。相続放棄した人は遺産をいっさい取得できなくなりますが、借金が重くのしかかる場合は有用な選択肢になりえます。

まとめ

事業承継でもM&Aでも、長期的なビジョンが必要で、早め早めに行動するに越したことはありません。

絆コーポレーションでは、長期的な視点での事業承継の計画についての相談も歓迎いたします。

すぐに会社を売却するつもりでなくとも、今回ご紹介した「社長の突然死」のようなケースを考えてその道のプロに相談してみることで、万一の事態の大きな備えとなるのです。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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