経営者たちにとって共通の「頭痛のタネ」ですが、実際に後継者不足で悩む企業は、どんな末路を辿るのでしょうか。
今回は、東京商工リサーチが発表したデータから、後継者難の企業について最新の状況を見てみましょう。
参考:東京商工リサーチ
「https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210513_03.html」
後継者不足による倒産の実態
まずは、後継者不足によって倒産した企業の件数を見てみましょう。
後継者不在による倒産は過去最大割合に!
2021年1月から4月において、「後継者難」に起因して倒産した企業は114社。前年同期の143社と比べて29社減少しました。
倒産件数自体は減ったものの、すべての倒産に対する構成比では5.6%と、調査を開始した2013年以降で最も高い比率となっています。
全国の企業で、かつてないほど後継者不足が加速していることがわかります。
具体的な倒産理由は?
「後継者難に起因する倒産」といっても、具体的にはどのような理由で倒産するのでしょうか。
上記のデータを見ると、後継者難に起因する倒産114件のうち、「代表者の死亡」が61件、「体調不良」が35件。この2つの要因は、後継者難による倒産のじつに84.2%を占めているのです。
この結果からは、とくに中小企業において社長が果たす役割の大きさがよくわかります。
たとえ何十年も経営を続けてきた企業でも、社長が死亡や体調悪化で仕事ができなくなれば、倒産に直結してしまいます。
会社が倒産してしまえば、従業員の生活も窮地に陥りますから、事態は深刻。
経営者にはエネルギッシュなかたが多いですが、自身の健康を過信して対策をなにも講じなければ、万が一の事態が突然訪れて焦ることになるでしょう。
後継者難による倒産は、どんな会社に多い?
続いて、後継者難で倒産する会社の内訳について見てみましょう。
後継者難がとくに深刻な業種は?
後継者難で倒産した114社の業種内訳を見ると、「製造業」と「サービス業他」がいずれも25社で最多。以下、卸売業が19社、建設業が18社、小売業が10社と続きます。
とくに製造業の会社などは、金融機関の借り入れが残っている場合が多く、代表死後の債務処理は深刻な問題。
データには表れていませんが、倒産した25社のなかには、社長が個人保証した債務の返済のために家族が住む家を奪われたケースもあるかもしれません。
さらに、後継者難で倒産した企業の業種は、高齢化の著しい業種と当然ながら一致しています。
この調査結果からは、後継者がいないまま経営を続けるリスクの高さを、あらためて感じます。
小規模倒産が圧倒的に多い!
続いては、倒産した企業の規模に注目してみましょう。
後継者難により倒産した企業のうち、資本金1000万円未満の企業は60社で、全体のおよそ半分。一方で、資本金が1億円以上の企業はゼロ。これは前年同期でも同様の結果となりました。
負債額別では1億円未満が78件で、全体の7割近くを占めます。
小規模倒産が多くを占めており、中規模以上の企業では後継者不足は問題になっていないことがうかがえます。
こうして見ると、後継者不足で事業を引き継げない事態を防ぐ一番の方法は、企業をある程度まで拡大することだという真理が浮かび上がります。
厳しい言い方をすると、リスクを取って事業規模を拡大しようとせずに、会社を維持することだけを漫然と考えているような状態であれば、いずれ破綻して関係者に大きな迷惑をかけてしまうことになるでしょう。
企業は経営を維持するだけでも大変ですが、それでも経営者には常に挑戦が求められています。
まとめ
これからも、後継者難に起因する倒産が増えてくることは間違いありません。
経営者がいない会社の経営者には、ぜひともまだ間に合ううちに手を打っていただきたいところです。
昨今増加するM&Aによる事業承継をはじめ、自治体や商工会議所などの窓口で事業承継をサポートしてくれる制度などもあるようです。
「息子や娘が継がないから、廃業するしかない」などとあきらめるのではなく、せっかくの会社を次代に引き継ぐためのなんらかの手段を、積極的に模索してみましょう。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役