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オーナー経営者必見!事業承継3つの手法

[著]:小川 潤也

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どんな経営者にも、いずれは引退のときが訪れます。

特にオーナー経営者にとって、自分の会社は人生そのものといっても過言ではありません。引退するとしても、自社のその後をどのように引き継ぐのかは最大の関心事であるはずです。引退にあたって、自社をどのように承継するかの手法について基本を解説しましょう。

承継方法その①親族内承継

経営者の息子・娘や兄弟をはじめ、親族のうちで後継者を決めるパターンです。年配者などは「後継者=親族」が普通、という認識を持っている人も多いですから、承継に際して社内外から理解を得られる可能性は高くなります。早くから後継指名してゆっくりと承継準備を進めやすい点もメリットでしょう。また、相続によって経営陣と創業一家で株式が分散してしまうリスクも低くなります。

デメリットとしては、オーナー経営者の親族だからといって経営者の資質を持っているとは限らない点。また、後継者以外の親族の持株比率や経営への参画方法に起因してトラブルになるケースにも、注意が必要です。

承継方法その②従業員等への承継

古株の社員など、経営者の親族でない社内外の人材を後継社長に据えるケースです。近年見られるようになった、外部からプロ社長を招聘して後任にする手法もこれに含まれます。

後継者として適正な人材を、広い選択肢の中から募ることができるのはメリットです。また、長年ナンバー2として尽力してきた求心力のある従業員が後継社長となる場合などは、経営者の親族が後継者になるよりも社内外の納得感が得られやすい可能性もあります。

ただ、この承継においてはお金の問題が大きなネックになることが多いです。オーナー経営者を引き継ぐために後継社長が前任社長から株式を買い取る場合、株式を買うための資金力がない、というケースが少なくないのです。

また、オーナー経営者は個人で保証をしている債務がある場合が多いですが、この個人保証債務の引継ぎにも問題が生じがちです。ずっとサラリーマンだった後継者が、会社の債務を全額保証できるほどの個人資産を持っているケースはあまりありません。心情的に絶対嫌だ、と後継者が拒否することも考えられるでしょう。

承継方法その③M&A

M&Aによって会社を売却する方法です。

現経営者としてはなんといっても、買い手企業から売却益を得られることが大きなメリットでしょう。オーナー経営者の悩みの種になる、債務の個人保証の問題から解き放たれるのも嬉しいところです。また、一個人への承継でなく企業への承継であり、買い手は自社よりも経営に成功した大きな企業であることが多くなりますから、売却後の自社の経営についてもある程度は安心していられます。譲渡をきっかけに自社が大成功することもあるかもしれません。

一方、単純に個人に事業承継するパターンと比べて、M&Aは買い手探しや交渉が非常に難しいのがデメリットです。譲渡価格の適正な算定や契約書等の法的手続き、売り手と買い手の希望をマッチングさせるためのスキーム構築など、基本的に売り手企業単独でM&Aを成立させることはほぼ不可能です。

専門のM&A業者へ依頼して、全面的にサポートしてもらうことが不可欠になります。

親も子も、承継に慎重になっている

かつては親族内承継が一般的でしたが、東京商工リサーチの調べによれば、直近の親族内承継は全体の6割以下の水準まで落ち込んでいます。理由としては、時代の変化に伴って「継ぐ側」「継がせる側」の双方の感覚が変化したことが挙げられるでしょう。

継がせる側の親が育った時代と比べ、子の世代は大学を卒業して安定した会社に入ってサラリーマンとして生きるのがかなり一般的になりました。子が大企業や官公庁で働いている場合は特に、安定した収入や将来性を捨てて親の会社を継ぎ、経営者になるという決断に躊躇する人が増えているのです。親の会社が地方に所在するケースでは、子が既に都心で生活基盤を確立しており、教育などの理由から引越しできず跡を継がない選択をすることもあります。

継がせる親の側も、子に対して経営者の資質を感じられず承継を躊躇うパターンだけでなく、子に資質はありそうだが継がせたくない、という人が増えています。引退を考えるほどの経営者歴になれば、社長業の大変さは身に染みてわかっているからです。経済の波にいつも左右されて片時も安心できることはなく、借金の個人保証があるため会社が潰れれば自分も破産する。加えてこの、先行き不透明な時代で会社の業績が維持される保証もない。そんな社長という辛い立場を我が子に継がせるのは気の毒だ……という親の愛です。

悩んだ末に承継問題を「一時棚上げ」にしてしまっているのが、多くの経営者の実情なのです。

まとめ

時代の変化に伴って事業承継が困難になった中、注目を集め、実際に増えているのがM&Aによる事業承継です。

前述のとおり、子をはじめとする親族の多くが会社を継ぐことに積極的でない一方、経営者としても本音では身内に継がせたくない、という人が増えています。とはいえ会社を清算してしまうのも気が進まず、どこかの会社に買ってもらえるのなら一番ありがたい、という感覚なのかもしれません。

しかし、M&Aにおいては専門業者への依頼が必須です。M&A件数の増加とともに問題のあるM&A業者も増えているので、信頼できるパートナーを慎重に選んでください。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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