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新潟の中小企業経営者も無視できない! 事業承継の補助金制度活用とは

[著]:小川 潤也

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事業承継に補助金が付与されることをご存知でしょうか。

「事業承継補助金」は経営者が後継者に会社を引き継ぐ際に、多額の贈与税や相続税が円滑な承継を妨げることから、負担を減らす目的で設定されている制度です。

2021年2月16日には、新潟県新潟市において対象要件の拡大が発表されました。一時的な期間限定の施策ではありますが、対象拡大を機に、補助金制度について解説しましょう。

事業承継の補助金制度とは

事業承継補助金とは、事業承継をきっかけに新たな取り組みをする中小企業や小規模事業者を対象とした補助金制度です。

積極的に事業投資を行なって、会社を存続・発展させようと努力する中小企業の後継者を応援する目的で制定され、事業承継にかかる経費の一部に充当することができます。ここ数年、後継者不足にあえぎ、仕方なく廃業する中小企業が後を絶たないことから、国としても事業承継を支援しようという意図で生まれました。

承継の方式は問わず、親族内事業承継でも、M&Aによる事業承継でも適用対象です。

事業承継が決まったら各都道府県独自の制度も確認を

事業承継補助金は国(中小企業庁)による制度ですが、各都道府県や地方自治体ごとに独自の補助金・助成金制度を採択している場合もあります。

たとえば、新潟市では2021年1月12日〜2月26日までの申請受付で、新潟市事業承継支援事業を発表しています。新型コロナウィルス感染症の影響下にありながら、事業承継や経営資源引き継ぎによって事業活動を継続し、雇用の維持を図ろうとする中小企業を支援することが目的です。

対象は、「新潟市内に本社を有する中小企業者」とありましたが、同年2月16日に発表された対象要件の拡大により、医療法人や農業法人、NPO法人など会社以外の法人も対象になりました。

補助率は、「企業価値評価に要する経費の3分の2以内」とされており、補助の上限は50万円までです。企業価値評価とは、株価の算定や、事業・財務の詳細調査など、経営状況の見える化に資する取り組みをいいます。

事業承継には贈与税や相続税に加え、専門家への委託料など多額の経費がかかるため、後継社長にとって支援が得られるのはありがたいことでしょう。

事業承継補助金制度活用における注意点

事業承継の補助金制度を申請するにあたっては、いくつか注意しておきたいポイントがあります。申請後、補助金が採択されるかどうかに関わってくるため、押さえておきたいところです。

①加点ポイントがある

事業承継補助金の採択可否や補助金額の判断に大きく影響するのが、自社に加点ポイントがあるか否かです。

・債権放棄などの金融支援を含む事業再生計画を策定していること
・交付申請時に経営力向上計画の認定を受けていること
・「中小企業の会計に関する基本要領」もしくは「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていること
・地域経済へ貢献していること

上記のいずれかに該当するようであれば、証明用として参考資料を提出しましょう。

②新たな取り組みや事業の発展がある

補助金を受け取るには、新しい取り組みをしており、事業が発展している、という証拠を事業承継補助金事務局に提出する必要があります。

証拠ができなければ、補助金の支払いを受けることはできません。財務資料などをベースとして、補助金採択用の資料を新しく作成する必要があるでしょう。

③審査条件を満たしている

事業承継補助金事務局の審査は、「資格審査」と「書面審査」の2回にわたって行なわれます。

資格審査については、補助金申請対象者である要件を満たしているかどうかが見られます。

書面審査は、事務局に提出する資料内容の審査です。以下のようなポイントに沿って審査されます。

・独創性技術やノウハウを持っている
・商品やサービスのプロセスが明確である
・事業実施のスケジュールが明確である
・事業の収益性の見通しが妥当で信頼性あること

事務局に提出する資料は、外部専門家に作成をサポートしてもらうことも可能です。

④補助金は後払い

補助金を受け取るには、企業として新しい取り組みをした成果を見せる必要があります。成果を出したうえで、審査用の書類を提出し、そこから2〜3ヶ月で補助金が交付されます。

注意したいのは、新しい取り組みをするための費用は、いったん自社で捻出する必要があること。後払いという性質上、補助金を原資にした事業投資はできません。

まとめ

事業承継の補助金制度について、国や地方自治体の施策を紹介しました。

国の補助金制度については、例年、公募開始の前月にアナウンスされています。年によっては一次と二次募集があったり、地方自治体ごとの募集が都度あったりするため、事業承継を予定している場合は、公募されている補助金制度を調べて国や各自治体に相談することをおすすめします。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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