政府系金融機関であることを生かした支援資金制度やM&Aマッチング、各種の情報提供など、日本政策金融公庫では事業承継に役立つ支援制度が目白押しです。
今回の記事では事業承継を意識する経営者に向け、日本政策金融公庫の各種制度を紹介します。
事業承継の際に使える特別融資制度がある!
まずは、事業承継向けの特例融資制度である「事業承継・集約・活性化支援資金」について解説しましょう。
参考:事業承継・集約・活性化支援資金
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jigyoukeisyou_t.html
適用を受けられる要件は?
事業承継・集約・活性化支援資金を受けるには、次の条件のいずれかに当てはまる必要があります。
●現社長と後継者が一緒に事業承継計画を立てている
●事業承継によって経営権の安定化や集約を試みている
●事業承継を機に新規事業進出や事業転換をしようとしている
●中小企業経営承継円滑化法に基づいた認定を受けている
●借入金の経営者個人負担などの免除を求めたために金融機関から融資を止められ、資金難に陥っている
上記の事情に基づいた設備投資資金や、運転資金の貸付を受けることができます。
事業承継を本気で検討している会社であれば条件のどれかに当てはまる場合は多いでしょうし、後から条件を満たすよう取り組むことも、十分可能なはずです。
気になる融資条件は……
事業承継・集約・活性化支援資金においては、最大で7億2千万円の融資を受けることが可能です。
利率はどのような条件に当てはまる会社なのかによって特別利率か基準利率が適用されますが、いずれにせよ上限は3%です。
設備資金については20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金については7年以内(うち据置期間2年以内)の借入期間です。ただし、公庫融資借換特例制度を適用する場合は8年以内(うち据置期間原則1ヵ月以内)の借入期間になります。
担保の有無については相談しだいですが、通常の借入に比べて有利な条件で資金調達できるので、ぜひ日本政策金融公庫の各窓口に相談してみましょう。
無料で使える「事業承継マッチング支援」とは?
続いては、Webサービスとして提供されている「事業承継マッチング支援」を紹介します。
参考:事業承継マッチング支援
https://www.jfc.go.jp/n/finance/jigyosyokei/matching/
事業承継マッチング支援とは
事業承継マッチング支援には、次のようなコンテンツがあります。
●事業承継についてのお役立ち情報
●譲渡を希望している企業の検索システム
●M&Aの成功事例
実際に譲渡を希望している企業を見てみると、システム会社から工事会社、地元の居酒屋からアルプスの山小屋までじつにさまざま。眺めるだけでもおもしろいので、おすすめです。
さらに、事例についてはたとえば次のような具体的なケースも掲載されているので、自分の会社に近いパターンを見つけて参考にできるかもしれません。
●業歴約10年、売上約1億円のWeb広告会社を印刷会社に譲渡
●売上高約4千万円のうどん屋を居酒屋チェーンに譲渡
●売上高約1億円の電気工事会社を個人へ譲渡
3つ目のケースは、買い手がM&Aを実行した動機が「東京都移住のため」。
売り手側がM&Aを行なう動機はほとんどが後継者不在ですが、買い手は規模拡大から事業多角化をはじめとして、さまざまなニーズでM&Aに踏み切っている実情がわかります。
事業承継お役立ち情報も!
事業承継マッチング支援でもM&Aについての情報が公開されていますが、日本政策金融公庫のサイトでも事業承継の役に立つ情報が多く公開されています。
参考:事業承継お役立ち情報
https://www.jfc.go.jp/n/finance/jigyosyokei/index.html
サイトに掲載されているのは、資金制度の紹介、刊行物情報、事業承継支援機関のリスト、事業承継支援動画など。冊子のPDFなど、無料でダウンロードできる資料もたくさんあります。
情報量は豊富であり、本気で学ぼうとすればいくらでも勉強できるサイトになっています。
まとめ
「金融機関との付き合いは民間金融機関だけで、日本政策金融公庫はノーマークだった」という経営者のかたは少なくないでしょう。
実は、公庫は事業承継を考える会社にとっては非常に役に立つ機関なのです。ぜひ、この機会に積極的に活用してみましょう。

小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役
