M&Aには、買収企業の株式の譲渡費用にくわえ、デューデリジェンス費用やM&A業者への報酬など、さまざまな費用がかかります。
今回は、買収にかかる多額の費用を調達する方法について解説します。
なぜ、M&Aには資金調達が必要なのか?
まず、M&Aにおいて新規の資金調達が必要になる理由を見てみましょう。
M&Aにかかる費用は売買代金だけではない!
M&Aには、単純に相手の会社の購入代金だけが必要だと考えてしまいがちです。しかし実際は、株式譲渡代金のほかにも、下記のような費用がかかります。
・M&Aの実行に伴う諸経費
・仲介会社やアドバイザリー会社に払う報酬
・引き継ぎ時にかかる税金
これらの費用は、ディールの規模によっては非常に高額にのぼるため、調達しないと資金が足りないケースが多いのです。
投資リスクを軽減する意味合いも!
同時に資金調達には、M&Aに伴う投資リスクを軽減させる意味合いがあります。
仮に、M&Aの実行にかかる費用をすべて自社のキャッシュで賄えたとしても、それによって内部留保が激減してしまえば、会社の財務体質がかなり脆弱になってしまいます。
会社が持っているキャッシュが少なくなれば、黒字経営でも思わぬ出費が生じた際に一気に倒産する危険があります。せっかくのM&Aがきっかけで、倒産を招いては本末転倒でしょう。
資金調達すれば金利などの余分なコストを支払う必要はあるものの、自社のキャッシュを潤沢に保つために、現金があってもあえて資金調達を行なう企業も多いです。
資金調達方法は「直接金融」と「間接金融」の2種類
ここで、M&Aに際しての具体的な資金調達方法を説明しましょう。
資金調達には、ご存じのとおり「直接金融」と「間接金融」の2つの種類がありますが、それはM&Aのための資金調達でも同様です。
直接金融で資金調達する場合
上場企業や米国系のムーデーズ、S&P訪米系のフィッチ・レーティングス、日本では格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)などの格付け機関から格付けを取得してたりすると、直接金融で、市場から社債を発行し、調達も可能です。その他にも「株主割当」あるいは「第三者割当」で新株の発行やで調達は可能です。
しかし、中堅中小企業の場合は下記の間接金融での調達となります。
間接金融で資金調達する場合
間接金融とは、銀行をはじめとする第三者を介して資金を調達する方法で、つまりは借り入れです。
M&Aにおける借り入れも通常の融資と同じく、事業計画書や自社の業績資料を提出して金融機関の審査を受ける流れになります。
ただ、M&Aのための資金調達では融資金額が大きくなりがちなため、預金量の少ない信用金庫などでは対応が難しいかもしれません。
最低でも、ある程度の規模を持つ地方銀行以上の金融機関に融資を依頼する場合が多くなるでしょう。
M&Aにのみ有効な「LBO」とは?
以上の資金調達方法は、M&A時に特有のスキームではなく、経営においては当たり前の手法ですが、M&Aに限った資金調達方法として「LBO」があります。
LBOとは「Leveraged Buy-out(レバレッジド・バイアウト)」の略称で、金融機関から融資を得る間接金融スキームの一種です。
LBOが一般的な融資と異なるのは、融資審査の際、「M&Aで買収する先の企業が生み出す将来的な利益」を担保にできる点です。
つまり、自社が大企業であったり価値の高い不動産などを持っていなかったりする場合でも、買収後にグループとして大きな利益を生む将来設計を示せれば、融資がおりるのです。
LBOは、小さな企業が低リスクで大きな企業を買収する手段にもなりえます。
中小規模のM&A件数が増加しつづける昨今、LBOを試みる会社は増加しています。
まとめ
資金調達は、M&Aにおける大きな関門のひとつ。
順調にM&A交渉が進行していても、資金調達に失敗して頓挫するケースも珍しくはありません。
資金調達に際しては、お取引のある銀行やM&Aアドバイザリー会社などの専門家に相談に乗ってもらいながら手続きを進める必要があるでしょう。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役