東京の企業など経済の状況については多くの報道がされていますが、地方経済についてはあまり情報がありません。
当社も拠点を新潟に置く企業です。地方経済の当事者としての実感を伝えます。
コロナショックで地方を襲った2つの衝撃
コロナショックによって大きな打撃を受けた地方経済。その要素は、大きく2つ挙げられます。
①インバウンドの激減
我が国はここ数年、観光立国を掲げて地方経済の発展を図っており、コロナショックによって観光客が蒸発してしまったことは地域経済に深刻な痛手をもたらしています。
外国人観光客は、来年のオリンピックがあるとはいえ、コロナ前の水準に戻るかどうかは未知数。現状がほぼゼロに近い水準で、日本でコロナが収まっていても世界のどこかでは引き続き蔓延している状況が推定されるので、オリンピックだからといってそれほど観光客は戻ってこないかもしれません。
政府はGoToキャンペーンによって、まずは国内の観光客を呼び戻して地域経済を再興しようとしています。政策の効果が出るのが待たれるところです。
②下請け企業であることの難しさ
地方経済は、グローバルな大企業との取引を主軸にする「関連会社」によって支えられています。いわゆる自動車会社の下請け企業などを想像するとわかりやすいでしょう。
このようにサプライチェーンの中流に位置する企業は、大手メーカーの工場稼働停止、また中国などからの原材料の供給がストップしてしまったことで、営業することが不可能な状態に陥ってしまいました。
現在では徐々に回復してきてはいますが、依然として海外との取引はスムーズにいかない状況が続いているようです。
今はまだ目立った展開にはなっていませんが、下請けメーカーなどがこらえきれずに今後バタバタと倒産していくリスクは十分にあります。
オペレーション見直しの好機に
コロナショックの影響を大きく受けた会社が、すぐに自力で売り上げを以前のように戻すのは難しいでしょう。環境要因に大きく依存する以上、自然に経済が回復するのを待つしかない部分もあります。
その間でできることは、生産性を向上させ、低コストで効率的に営業する仕組みを整備することです。デジタル化の推進、テレワークへの対応、外国人労働者やオフショアの活用……コロナショックによってできた時間を使い、オペレーションや仕組みの見直しを図るのです。
また、この機会に、インバウンドや特定の企業、国に売り上げを依存する体制からの脱却を図らなければいけません。今回はたまたま新型コロナウイルスが原因でしたが、今後も何かの原因でインバウンドが再度減少したり、海外と取引ができなくなったりする可能性は十分に考えられます。
経済ショックが起こったとき、最低限、営業がほぼできないという状況に陥ることは避けなければなりません。
経営者に迫られる決断
とはいえ、すべての企業が改革によって再建を図ることができるとは限りません。この先ひとまず持ち直したとしても、今回のコロナショックで気持ちが折れてしまった、という経営者も多くいます。
そうすると、自分の代での廃業もしくはM&Aといった出口戦略を決断することが求められます。
当社がコンサルティングしたM&A案件も、今回のコロナショックで今後経営を続けるよりも、余力のあるうちに有力企業の傘下に入る、という決断された経営者もおられます。
経営者としては最後まで戦い続けたい、と考えるのも当然でしょうが、戦略的撤退も重要な経営判断です。問題を先送りにしているうちにじりじりと業績が悪化して、M&Aの買い手もつかなくなってやむなく廃業、という末路は避けなければいけません。
何よりも自社の10年後、20年後を見据えて、従業員や関係者にとって最善の道を決断したいところです。
まとめ
コロナショックによって、地方企業の様々な問題点が露呈しました。いわば「歴史が加速した」状況で、いずれ深刻な問題になったであろうことが新型コロナウイルスによって一気に顕在化した面もあります。
大きなトレンドに逆らうのは、時として難しいことがあります。時代によって成長産業が変わるのは世の常で、旧来産業が持っているリソースや技術を新興産業が得たい、というニーズは既に高まってきているのです。
多くの中小企業経営者にとって、将来を考えた決断のときが来ていることは間違いないでしょう。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役