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ローカルM&Aマガジン

Q「中小企業を経営していますが、後継者がいないので、どうすべきか悩んでいます」

[著]:小川 潤也

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(ご相談者様)
新潟市内で内装工事会社を経営しています。

もうすぐ60歳になるので、私がいなくなった後の会社のことを考え始めているのですが、後継者が不在で悩んでいます。

祖父の代から続いている会社なので、なんとか廃業は避けたいと思っているのですが……。どんな選択肢があるのでしょうか。

(小川)
事業承継の悩みですね。3つ聞きたいことがありますが、よろしいでしょうか?

(ご相談者様)
はい。

(小川)
一つ目、社長は現場に入っていますか?それとも現場は任せる人はいますか?

(ご相談者様)
現場は任せているので、私は営業というか、取引先との段取りとか、お金のやりくりが中心です。

(小川)
それはいいですね。現場は任せる人がいるというのは企業としてはいいですね。

二つの質問です。会社の売上と利益、それに借金はどのくらいですか?

(ご相談者様)
そんなに大きくはないのですが、なんとか3億円を超えるくらいです。利益は税理士と相談して、トントンで終わらせるようにしています。借金はなるべくしないように細々と経営してきたので、当座貸越しの枠が3千万円ありますが、ほとんど使ってません。

(小川)
素晴らしいですね、売上3億円で、利益も出ているようですね。実質無借金なんですね。

三つ目の質問です。
お子さんが継ぐという選択肢はどうですか?

(ご相談者様)
子どもは息子が一人、東京でサラリーマンしています。ただ、もう向こうで孫を私立中学に通わせているので、「戻ってきてうちを継いでくれ」というのは厳しそうです。

そもそも、親の私から見ても地味でのほほんとしたタイプで、とても社長の器じゃないんですよね。

(小川)
なるほど、状況はなんとなくわかりました。
息子さんと会社の状況や事業承継の話はしたことはありますか?もしかして、帰ってくるという選択肢もあるかもしれませんよ。

(ご相談者様)
いやあ、ないと思いますよ。嫁さんが東京の人なので、新潟に一緒に帰ってくることはないですね。

小川さん、その他の選択肢は考えられるでしょうか?

(小川)
従業員承継ですね。社員の中にこの人なら、任せてもいいなあという人はいませんか?

(ご相談者様)
いませんね……。番頭役の常務は私とほとんど年齢が変わりませんし、若者の集まらない業界なので従業員はみんなおじさんばかりです。

若くても40代といったところですが、会社を任せられそうな優秀な人材は見当たりません。

(小川)
そうですか。失礼しました。そのあてがあるようなら、相談には来ませんよね。

(ご相談者様)
で、うちの会社はどうしたらいいでしょうか?実はM&Aで買ってくれそうなところがあるかどうか、それを相談したくて、実は今日、来たのです。


(小川)
もちろん、M&Aも、ひとつの選択肢として、あります。質問の1と2で現場は任せられる、利益はでている、実質無借金ということであれば、買い手が見つかる可能性は十分あると思います。

(ご相談者様)
それはよかった。それで、どんなところが買ってくれそうですか?M&Aにはリスクとかはないんでしょうか?

(小川)
同業他社もそうですし、近い業界の会社が新規事業で始めたいというところも可能性はあります。

M&Aのリスクは条件が折り合わず、交渉が不調に終わる可能性もあることです。また、社員さんや取引先に秘密で探したり、交渉したりすることです。また、買い手からいろいろと調べられたり、聞かれたり、資料を用意したり、その手間が大変です。

M&Aの交渉の過程でデューデリジェンスという買収監査というものがあり、決算書や税務申告の状況が実態と乖離ないかとか、簿外債務がないかとか、買い手候補からの様々なことを調べられたり、聞かれたりします。

長年事業を経営していても、そんな数字をまとめたことがなかったというような資料を求められる場合も多いですし、相手が大手企業だったりするとさらに厳密です。

(ご相談者様)
なあるほど、そういうことなんでね。まずはM&Aで買ってもらえる可能性があるということを聞いて少しは安心しました。

(小川)
M&Aはだいたい半年から1年くらいかけて成約に向かいますが、相談者様の状況でしたら、時間的にも問題ないかと思います。

(ご相談者様)
ありがとうございます。繰り返しますが、3代続いている会社なので、そのまま継いでいけるのが理想ですが、教えてもらった3つの選択肢から自社の行先を真剣に検討してみます。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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