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承継が遅れればジリ貧に?事業承継と企業業績のいま

投稿日:2021年6月22日

[著]:小川 潤也

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経営者の高齢化が進み、多くの企業が事業承継を意識している現代。

中小企業はいわば「事業承継予備軍」ともいえますが、足元の業績はどうなっているのでしょうか?

今回は日本商工会議所のデータを読み解きながら、事業承継を控えた企業の利益状況について分析します。

参考:「事業承継と業界再編・統合の実態に関するアンケート」調査報告

後継者不在企業の業績は?

まずは、後継者がいない「事業承継予備軍」の企業がどのような業績なのか、見てみましょう。

黒字企業が半数以上!

事業承継について「後継者は決まっていないが事業継続したい」「自分の代で廃業する予定」と答えた1309社のうち、黒字なのは48.6%。

収支トントンと回答したのは20.9%で、合わせて約7割が黒字の業績です。

つまり、現状は黒字経営であっても、後継者不足によって廃業せざるを得ない企業が多いことが見てとれます。

こうしたケースは、今後ますます増えていくでしょう。

ベテラン経営者のほうが成績不良!?

次に、経営者の在任期間ごとに分けた業績を見てみましょう。

後継者不在の企業に限らない調査結果全体で、社長が就任後10年未満の企業で前期が黒字決算なのは、61.3%。

それに対し、社長就任後30年以上経っている企業の黒字率は、なんと53.3%です。

ベテラン社長は、経営者経験が豊富であるにもかかわらず、なんと新米社長より10%近くも黒字の割合が低いのです。

なお、このデータでは創業社長は除かれています。

コロナ禍における経営姿勢でも差が?

さらに、新型コロナウイルスの蔓延で経済状況が悪化し、会社がダメージを受けた状況への対応でも、経営者の年代別で差が出ています。

若い経営者ほどコロナ禍でも積極的に挑戦

経営者の年齢別に、コロナ禍で新たな取り組みをしているかを尋ねたアンケート結果を見てみましょう。

「新たな販路拡大・取引先拡大」については、59歳以下の経営者では44.0%が「行っている」と回答しました。

それに対し、60歳代では39.6%、70歳以上では35.9%にとどまっています。

さらに、「テレワーク・時差時短勤務」について「行っている」と答えた割合は、59歳以下が42.1%に対して60歳代は39.6%、70歳以上では31.9%です。

コロナ禍の厳しい経済状況に対して、時代に適合しながら抗っていこうという姿勢では、高齢経営者は若手経営者より大きく出遅れているといえます。

業績悪化企業ほど承継を後ろ倒しに

続いて、コロナショック後の経営成績の変化により、経営者が事業承継をどう考え直しているのかを見てみましょう。

「事業承継時期の変更(後ろ倒し)」と回答している企業を、コロナ禍による売上増減率ごとに分析すると、「売上増加」では後ろ倒しにしようとする割合が4.0%。「概ね20%未満減少」では7.0%、「概ね20〜49%減少」では11.9%、「概ね50%以上減少」では16.4%となっています。

つまり、コロナ禍で大きなダメージを負った企業ほど、事業承継を後ろ倒しにしようとする傾向が見られるのです。

事業承継できない会社はどんどん苦しくなっていく

これらのデータを見ると、後継者不在で事業承継できない会社は、ジリ貧に陥っていく未来が容易に予想できます。

コロナ禍を生き抜く企業のイメージ

以上の分析から、「事業承継で若い社長にバトンタッチを果たした企業ほど業績が良く、コロナ禍を生き抜くための新しい取り組みに積極的」という事実が明らかとなります。

一方、後継者不在のまま社長が年齢を重ねていく企業は、ジリジリと業績が悪化し、それに伴って事業承継がより難しくなっていくでしょう。

60歳を過ぎたらM&Aの具体的計画を

「ベテランの高齢経営者よりも、若手経営者のほうがバトンタッチ直後に自社を発展させてくれる」――このデータをにわかには信じ難いというベテラン経営者も多いかもしれません。

ただ、今回紹介した日本商工会議所のデータからは、早期の事業承継がいかにメリットの大きい施策なのかがはっきりとわかります。

経営経験を重ねるほどにスキルが身に付く分野はあるものの、経験が邪魔して新しい取り組みに挑戦しづらくなるという一面は、決して軽視できません。

中小企業の経営者としては、60歳を過ぎたころをめどに、具体的な時期を含めた事業承継計画をスタートさせたほうがよいでしょう。

まとめ

事業承継において最も恐ろしいのは、時間が経つにつれて業績が悪化し、承継がより難しくなっていくという展開です。

「まだ会社が赤字転落する前」等の早い段階であれば、たとえ後継者がいなくても、M&Aなどによって事業をスムーズに引き継げる可能性が残っています。

「引退」という可能性がすこしでも頭をよぎった時点で、まずはいちど専門家に相談してみましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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