中小企業の大半はオーナー企業です。ところが、改めてオーナー企業とは何かを考える機会は意外と少ないものです。
今回は、オーナー企業の特徴やメリット、デメリットを徹底解説します。
オーナー企業とは?
オーナー企業とは、経営者とその親族が過半数の株式を持っている企業を指すのが一般的。
ただ、経営者の持ち株比率が過半数までいかなくても、大株主ならオーナー企業と呼ばれることがあります。
オーナー企業は、同族経営やファミリービジネス、ファミリー企業などともいわれます。
オーナーとは、所有者のこと。オーナーが所有だけして経営はいわゆるサラリーマン社長に任せるケースもありますが、多くはオーナーが経営も担っています。つまり、所有と経営が分離していません。
周りを見渡してください。オーナー経営ではない中小・零細企業は思い当たらないでしょう。中小企業の約72%をオーナー企業が占めています。
参考:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/index.html
一方、大手企業は上場企業では、所有と経営が分離しているケースが少なくありません。
とはいえ、イオンやキヤノン、ブリヂストンなど、上場企業でもファミリー企業は多い。オーナーが所有はしていても役員に一族がいなかったり、経営に関与はしているものの持ち株比率が低かったりといったケースもありますが、日本の上場企業の半数近くはファミリー企業が占めています。
オーナー企業のメリットは?
ファミリービジネスが多い日本は長寿企業が多いことでも知られています。それでは、オーナー企業にはどんなメリットがあるのでしょうか?
1.意思決定が早い
オーナー社長が自社株の過半数を握っていれば、外部からの干渉を受けずに意思決定できます。それだけ迅速に経営できるのです。
ましてや株式の100%を所有していたら、他の株主を気にすることなく好きなように経営判断を下せます。
2.目先の利益より長期的な視点を重視できる
非オーナー企業では、株主の利益の最大化が求められます。
とりわけ上場企業の場合、株価や配当などを考えて、短期的な利益を重視しなければなりません。
一方で、オーナー企業なら、外部株主の顔色をうかがうことなく、長期的なビジョンを重視して事業を運営できます。
3.創業の精神や企業理念を貫ける
オーナー社長の考えのもとで、ブレない経営を貫けるという利点もあります。
創業の精神や企業理念に基づいて自社ならではの企業文化を築き上げていくことができるのです。
オーナー企業のデメリットは?
日本のファミリービジネスの優位性は世界的にも注目されていますが、いいことばかりではありません。デメリットもあります。
1.オーナーへの依存度が高い
企業の規模にもよりますが、とりわけ中小企業ではオーナー社長の発言力が圧倒的に強い。良くも悪くもワンマン社長が少なくありません。
どんなに有能でも、オーナー経営者も人間です。経営判断を誤ることがあるでしょう。
周りがイエスマンばかりだと、時代の変化についていけずに経営が迷走する恐れがあります。
経営の方向性を決めるのはオーナーの責任なので、いい方向にむかっているときは急成長、急拡大しますが、よくない方向へ向かい始めると誰にも止められません。
2.資金調達の手段が制約される
企業の成長度合いによっては外部投資家や資本市場からの資金調達が必要でしょう。
しかし、所有権を手放したくないオーナーが難色を示すと、事業拡大のチャンスを逃しかねません。
逆を言えば、資金調達が必要で、外部資本を入れたくない場合はオーナーが増資に応じる必要があります。オーナーに資産がないとできないことですが。
3.後継者不在
オーナー社長が高齢化すると、情報収集力や判断力が鈍ってきます。
後継者の選定や育成を進めなければ、オーナー社長であるがためのリスクが大きくなるでしょう。
万が一、オーナー経営者に何かあれば、その途端に会社の屋台骨が揺らぎかねません。
また、顧客との関係もオーナー経営者個人の力によるものが大きいケースがあります。時間をかけて後継者へのバトンタッチを準備していかないと、後継者不在が大きなリスクになりかねません。
オーナー企業の事業承継はM&Aがおすすめ!
オーナー企業の場合、子どもら親族にスムーズに事業を承継できるに越したことはありません。
しかし、今は後継者難の時代。有名どころでは、脱ファミリー経営を進めたパナソニック、優秀な婿養子を迎えるなど同族経営の劣化を防いできたスズキ、ファミリーが株を持ちながら経営者を外部からスカウトしたサントリーなど、競争力を保つためのさまざまな方策が取られています。
後継者不在の中小企業の場合、M&Aによって事業を引き継ぐケースが増えてきました。2023年には20.3%がM&Aなどが占めるまでになりました。
参考:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p190705.html
M&Aのメリットは、オーナーが利益を得られること。株式を譲渡することで現金を得られるのです。
廃業という手も考えられ、流動資産>負債の状態であれば、負債を現金などの流動資産で支払うことができるので、清算することも可能です。その場合、事業は廃業、従業員は解雇ということになり、地域経済にとってもマイナスとなります。だから、株式を第3者に譲渡し、事業を引き継いてもらう方が得策です。しかも、純資産が多かったり、営業利益が数千万もあったりする場合は、のれん代も相応につき、株式売却益も期待できます。
廃業よりM&Aによる売却の方がもちろん、大きな現金を手にできる可能性があるでしょう。
また、会社の借り入れの個人保証を解除できるのも大きなメリット。オーナー本人はもちろん、家族も安心できます。
後継者が不在ならば、M&Aで事業を存続させるのがおすすめです。
結局はM&Aの推進かと思われるかもしれませんが、事実です
まとめ
オーナー企業には、オーナー企業だからこその良さがあります。
オーナー経営者は、自社に対する強い思い入れがあるでしょう。せっかく築き上げてきた会社を後世に残していくならば、M&Aを検討する価値は高いといえます。
信頼できる外部のアドバイザーの協力を得ながら、持続可能なスキームを検討してはいかがでしょうか。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役