ローカルM&Aマガジン

会社を買うメリットとは? 成功のポイントを解説

投稿日:2024年4月23日

[著]:小川 潤也

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M&Aは近年、右肩上がりで増えてきました。中小企業庁によると、2011年から増加が続き、2019年には4,000件を突破しました。
コロナ禍で一旦減少しましたが、再び増加に転じ、M&A市場は活況を呈しています。「会社を買いたい」と考えている企業はもちろん、サラリーマンら個人も確実に増えているのです。
それでは、どのように会社を買収すればいいのでしょうか? 成功のポイントを解説します。

個人で会社を買うメリット・デメリット

2010年代末、三戸政和著『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門』 (講談社+α新書)がベストセラーになったり、NHKの『クローズアップ現代』で取り上げられたりするなど、個人M&Aの注目度が一気に上がりました。

今や個人M&Aは、特別なことではありません。日本政策金融公庫によるスモールM&A向け融資は、すでに個人企業への融資が7割を占めているほどです。

それでは、個人が会社を買うメリットとデメリットはどのようなものなのかを見ていきましょう。

◆メリット

1. 起業の手間が省ける
自ら起業することなく、既存の会社を買うことで、ビジネスをすぐに始められます。従業員や顧客もすでに存在しているため、ビジネスをゼロから立ち上げる手間や時間を省けます。

2.事業の成功で金銭的なメリットの享受!
長期にわたり、事業に成功すれば、サラリーマン時代よりも多くの役員報酬を得られたり、事業に必要な接待交際費であれば費用計上できたり、社有車を利用できたりと金銭的なメリットを享受することができます。まずはその経済的に豊かになりたいという欲求を満たすことができます。

3.本当にやりたかった仕事ができる
「本当はお店を持ちたかった」「地域誌を発行して地元に貢献したい」など、やりたいことを胸に秘めている人もいるでしょう。M&Aによって、自分がやりたかった仕事を始めることができます。

4.社会貢献ができる
中小企業の後継者不足が深刻。廃業の危機にあるものの、地域に必要とされる企業を事業承継することによって、社会に貢献できます。

5.将来売却できる可能性がある
収益を上げれば、将来、買った値段よりも高く売却できる可能性があります。

◆デメリット

1.事業を続ける苦労
ある程度出来上がっている事業を引き継いでしばらくはそれなりに経営できると思います。しかし、市場環境の変化や景気、不景気など平穏無事に毎日が過ぎていくばかりではないのが事業です。従業員に任せることができず、休みも仕事したり、資金繰りの責任は負うことになりますし、売上がさがえれば眠れぬ夜をすごすこともあります。

2.自己資金で買える会社はそんなに大きくない
脱サラしてM&Aで事業や会社を買うには自己資金ということになります。M&A資金を金融機関から調達するのはかなり難しいです。よって、自己資金の範囲内ですとせいぜい数千万円になると思います。事業規模も小さく、自己資本もそんなに大きくない会社ということなので、例えば、2000万円で買ったとすると収益力は3年から5年で値付けされることが一般的なので、2000万円÷5年=400万円が見込める利益です。この事業を成長拡大させないと自分の報酬も多くはもらえない現実があります。だから、やりたい事業とリターン、投資額のバランスをは自己責任となります。

3.従業員の反発を招くリスクがある
従業員ごと承継できるのがM&Aのメリットである反面、従業員の反発を受けることも。キーマンの退職によって事業が立ちゆかなくなることもあります。
私も父から人材派遣会社を引き継いだとき、業績推進に一気にドライブをかけたら、それまでの社員3人が反発して辞めてしまった苦い経験があります。

法人で会社を買うメリット・デメリット

次に、法人が会社を買う場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。

◆メリット

1.ゼロから事業を立ち上げるリスクを減らせる
買収先の会社が持つ設備や従業員を引き継ぐことが可能。新規事業を立ち上げるよりも、時間をかけずに早く新規事業に着手できます。

2.既存のビジネスとのシナジー効果を得られる
既存のビジネスと関連する会社を買えば、生産効率の向上や顧客の拡大など、シナジー効果を期待できます。

3.多角化による経営の安定
景気の波は業界によって異なります。既存の事業とは異なる分野に進出することによって、事業領域を多角化して経営を安定させられる可能性があります。

4.競争力を高められる
自社にない技術やサービスを取り込むことによって、競合他社との差別化を図れます。

5.市場シェアを拡大できる
自社と同じ事業を手がけている企業を買えば、市場シェアを広げることができます。

◆デメリット

1.高値づかみのリスク
人気のある事業やエリア、誰もがいいなと思う事業であればM&Aも競争となり、当初の予算よりも高い価格で買収することもありえます。そうなると投資回収が予定よりも長い期間かかったり、借入の場合、金融コストが高くなるデメリットもでてきます。

2.統合の難しさ
企業文化や業務プロセスが異なることから、社内に軋轢が生じる可能性があります。
M&Aまでは別の会社であったものが急に新しい社長の下で仕事をするとなるとそれなりのストレスがかかるのはいうまでにありません。
だから、少なくとも半年くらいは従前の体制をそのまま引き継いで、ゆっくりと改善を図る方がうまくいっているようです。

3.過去の問題を引き継ぐ可能性がある
買収先の企業が過去に起こしたトラブルが引き継がれる可能性があります。
退職した従業員からのクレームはM&Aで社長が代わったり、大手の傘下になったのを見て、ダメ元でやってくることも稀にあります。

4.簿外債務を背負うリスク
決算書や帳簿に記載されていない、口約束や昔からの慣習で払っていたリベートなど、デューデリジェンスでは見えなかったことが表面化することもあります。これは表明保証などを譲渡契約書でしっかりとして、リスクヘッジしておきましょう。

5.従業員や取引先の理解を得られないリスク
従業員の理解を得られず、人材が流出する可能性があります。買収先の元社長との信頼関係が厚かった取引先が離れていくことも考えられます。また、これまでも辞めたいと考えていて、M&Aを機に言い出す人もいます。辞める人もいるかもしれないと思って、買収後の計画を立てましょう。

破綻寸前企業を割安で買収する「再生型M&A」という選択肢

買収先を探す際、経営状態のいい会社を選ぼうとするのが一般的ですが、そうした会社は割高であることも少なくありません。

そこで、あえて経営難の会社を買収するという手もあります。そうした企業が優秀な人材や優れた技術を持っているケースがあるからです。

“掘り出し企業”を見つけ出せれば、安く買える分だけ買収後にあっという間に採算を取れる可能性があります。
業績が悪化して自力での立ち直りが難しい企業を再生させるのが、「再生型M&A」と呼ばれる手法。

再生型M&Aのためには、債権者である金融機関による支援が不可欠で、これが困難を極めますが、実現できれば買い手としては負債を引き継ぐことなく、割安で事業を買収できます。

実際に、M&Aの経験が豊富で目の肥えた東京の企業は、地方にある掘り出し企業を再生型M&Aで積極的に買収しています。

コロナ融資の返済が始まり、債務超過に陥って行き詰まる中小企業が増えると予想されますが、その中にもキラリと光る技術やサービスを持つ企業は少なくありません。再生型M&Aによって、割安に企業を買収するチャンスが広がる可能性があります。

再生型M&Aのスポンサーとして取り組む際の注意点

会社を買う際は、何を目的で買収するかが大事です。再生型M&Aには社会的使命を担う、責任があります。それは事業を譲受けすることで自社のノウハウと資産を活用でき、成長戦略が見えるか。また、従業員を路頭に迷わせることなく、生活を守ること。さらにはお客さまにこれまで以上のサービスを提供できること。ただ単純に割安だから、買収しようでは再生もうまくいきません。

この社会的使命を譲受先として果たす覚悟をもって買収をする企業は、事業を再生させてさらに成長し、いい会社となっております。なにより、そこではたらく従業員もいきいきと仕事に取り組んでいます。

まとめ

M&Aは新規事業立ち上げや成長発展の手段としては有効です。いろいろな可能性をM&Aで見いだすことができるので、個人でも法人でもチャレンジしていきましょう。しかし、リスクもあります。また、そのリスクをヘッジするためのパートナーとしてのM&A仲介会社は不可避の存在です。うまく利用していくことをお勧めします。

また、これからの時代、コロナ融資の返済猶予が終了し、延命した企業の破産が増えてきます。そこで、破綻予備軍や破綻企業の譲受先として、再生型M&Aに取り組み、事業を成長発展させて、社会的使命を果たす、こんなことも可能です。ぜひ、難度の高い再生型M&Aも視野にいれて、M&A戦略を立てることもいいのではないでしょうか。

この再生型M&AのFA(フィナンシャルアドバイザー)をできるM&A会社は少ないですので、注意して探してみてください。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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