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M&Aの最終試練!デューデリジェンスの切り抜け方

[著]:小川 潤也

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M&Aのディールにおける最後の試練が、デューデリジェンス(DD)です。DDとは買い手企業による売り手企業の徹底的調査で、売り手企業は丸裸と言えるほど精査されます。

M&AにおけるDD対応のコツを解説しましょう。

デューデリジェンスとは?

M&Aにおいて、大まかな譲渡価格や条件が固まると、基本合意として秘密保持契約を結ぶことになります。その後、最終交渉の前段階として、買い手候補企業が売り手企業を徹底的に調べるのがDDです。

DDには、財務・税務上のリスクを調査する財務DD、法律上のリスクを調べる法務DD、土壌汚染の有無や産業廃棄物などを調査する環境DD、労務問題などを確認する労務DDなどがあります。

売り手側が用意する資料には、たとえば以下のようなものがあります。

・直近3年分の決算書、税務申告書、科目内訳、総勘定元帳、固定資産台帳
・直近の商業登記簿謄本
・銀行の通帳、現預金、過去の納税記録
・株主名簿および各株主の関係一覧
・株主総会議事録、取締役議事録
・役員名簿、役員略歴、担当業務一覧
・就業規則、定款

これらはほんの一部です。

デューデリジェンスは買い手企業が依頼した会計士や税理士、弁護士などが行います。

順調なディールがDDで破談になることも

DDでは、会社の内状がすべてわかってしまいます。ここで多くの場合に問題になるのが、売り手企業の「決算書に表れない部分」です。

取引先へのリベートなど商慣習で契約書に書いてないこと、就業規則にはのってない従業員へのインセンティブ、資金繰りで役員からの貸付金、会社経営には教科書通りにいかないことが多いのも事実です。そんなことは当たり前と思っていて、隠すつもりはなったけれど、譲渡契約に影響を及ぼす可能性があろうとは売り手の社長はその時になって初めて知ることになります。

だから、DDを受けて会社がどのような経営をしてきたのか、表面的には内部的にも隠し事が露見しないことはまずあり得ないと認識しておいたほうがいいでしょう。

DDでやって来るのは企業調査のプロ。どのような部分が問題になりやすいのかを知っていて、あなたの会社を丸裸にしてしまいます。

問題としてよくあるのは、簿外債務や未払い残業代、コンプライアンス的に怪しい契約など。経営者は会社法、税法、労働基準法などの法律が変化していることを看過して、「俺ルール」でやってきたことを正当化してしまっていることもあります。

平時の経営は清濁あわせ飲んで乗り切ってきたとしても、M&Aに際してはすべてをきれいにして譲渡する、あるいは問題を売り手・買い手の双方が認識したうえで譲渡価格に反映させて譲渡する必要があるのです。

デューデリジェンス(DD)で不備が見つかったら?

DDで売り手企業の不備や不正が見つかった場合、買い手企業からは譲渡価格の値下げを要求されます。

値下げ要求で済めばまだいいほうで、深刻な問題が見つかったり多くの不正が発覚したりした場合、買い手としては危なくて買収できない、という判断をすることもありえます。

実際、順調に進んでいたディールがDDの段階で破談になるケースもあるのです。

また、もう一つ気をつけたいのが情報漏洩です。DDでは担当者が売り手企業に出入りすることになり、資料の提出も多く生じるため、M&Aディールが進行中であることがDDによって漏れ、社内の反対などで破談になってしまうこともあります。

DD対応の極意

DDは売り手企業にとって、M&Aの最終試練。

基本合意となると一息ついた気分になる経営者がいますが、大きな間違いです。DDこそ天王山だと認識して対応にあたってください。

まとめると、DD対応の極意は次の3つです。

・情報漏洩に注意する
・必要資料は速やかに準備する
・隠し事をしない

変に隠し立てをしようとしたり、資料の準備が遅かったりすると当然、DDは長引きます。DDが長くなれば長くなるほどに情報漏洩のリスクも高まりますし、買い手企業の心証も悪くなっていくでしょう。

情報漏洩で気をつけたいのは、とにかく一番に社内です。うっかりDDの関係者を従業員に対応させたりしないよう、経営者のあなた自身の案件として最後まで取り組んでください。

素早く的確に、誠実に取り組むのが、円満にDDを乗り越えるためのポイントです。

まとめ

上場の経験でもあれば別ですが、普通M&AするまでDDを受ける経験はほぼないはずです。したがって売り手企業の経営者はDD素人の状態ですから、切り抜けられる局面を切り抜けられなかったり、悪くすると買い手企業からの値下げ交渉の材料づくりとしていいようにされてしまったりする可能性もあります。

売り手企業がDDにおいて頼れるのは、売り手側のM&Aコンサルタント会社しかいません。DD対応の経験が豊富で、会計士や弁護士などとの連携がスピーディに取れる会社であることが条件です。

M&Aの最終試練を乗り越えるため、優秀なパートナーの存在が必須になります。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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