ローカルM&Aマガジン

データでわかる! M&A市場のトレンドを徹底解説

投稿日:2021年8月10日

[著]:小川 潤也

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我が国では、以前と比べてM&Aという事業承継手法は一般的になりました。

では、実際に数字で見ると、M&Aの市場はどのように推移しているのでしょうか?

発表されているデータをもとに、M&A市場の推移とトレンドを具体的に見てみましょう。

M&Aの市場規模は?

まず、M&Aの市場規模について中小企業庁のデータを紹介します。M&Aの市場規模推移というテーマに絞った国の分析としては、最新のものです。

参考:中小企業庁「M&Aの現状」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_2_2.html

増加傾向を続けるM&A件数

中小企業庁「M&Aの現状」内にあるレコフデータ調べの数字から、M&Aの市場規模の変遷を見てみます。

まず、調査開始年度であった1985年におけるM&Aの成立件数は260件。

これが1986年になると、531件まで増えます。バブル崩壊により多くの会社がダメージを負った関係で、競争力を失い買収される会社が増加したという背景がうかがえます。

さらにその後もM&A件数の増加基調は継続し、1999年には1169件のM&Aが成立。1000件の大台を史上初めて超え、調査開始時と比べると約4倍の市場規模になりました。

00年台に1度目のブレイクスルー

さらに、翌年となる2000年のM&A成立件数は、なんと一気に1635件に。1年間での増加幅はこの時点での過去最大です。

大きな増加要因としては、いわゆるネットバブルでしょう。現在の大手ネット企業が成長過程で多くのネット企業を吸収していた時代です。

そして2006年には年間のM&A成立件数が2775件となり、1度目のピークを迎えます。

リーマン・ショックで件数落ち込み

ところが、2010年ごろにトレンドが変わります。

2009年には1957件、2010年には1707件と、それまで一貫して増加傾向にあった件数が突如、減少に転じたのです。

その理由として真っ先に思い出されるのは、2009年のリーマン・ショック。M&A市場に対する影響が大きかったのは、リーマン・ショックでは特に金融機関が深い傷を負ったためでしょう。

M&Aに際しては買い手が多額の資金を用意する必要があり、多くの場合は金融機関からの融資によって資金が調達されます。リーマン・ショックで金融機関が大ダメージを受けたせいで、本来できたはずのM&Aの多くがストップしてしまったのだと考えられます。

再び件数が増加!

しかし、リーマン・ショックによるM&A件数の低下はあくまで一時的な現象でした。

2011年に底を打ったM&A成立件数は、その後再び増加基調に。2016年には2652件と、リーマン・ショック前の水準まで回復しました。

そして、資料内の最終年である2017年には、3050件のM&Aが成立。史上最多を記録したのです。

なお、レコフデータの継続調査を見ると、2019年にはさらに増加して4000件を超えるM&Aが成立しています。

参考:マールオンライン「グラフで見るM&A動向」
https://www.marr.jp/genre/graphdemiru

トレンドはどう移り変わっているのか?

ここまで、M&Aの成立件数から市場規模の推移を見てきました。次に、特徴的なトレンドを分析します。

中小企業が買い主となるケースが増えている

かつてM&Aといえば、「買い主は大企業」が常識になっていました。ところが、実際の数字を見ると近代の実態は変わってきています。

2006年を100とした場合の、2015年に買収を実行した企業の推移を見てみると、大企業では89.4と減少しています。

ところが、中小企業の買収実行は179.5に。10年間で2倍近くも増えているのです。

なぜ中小企業こそM&Aが有効なのか

中小企業の多くが規模拡大や新規事業のためにM&Aを選択するようになった……その理由は、裏を返せば、規模が小さな企業ほど自力での発展が難しいからでしょう。

採用をかけて規模を拡大しようとしても、社内に育成キャパシティがなく新人がすぐに辞めてしまう。

新規事業をやろうにも資金的余裕やリソースがなく、新規事業が軌道に乗るまでの赤字に耐えられない。

社長が事業のエースプレイヤーとして駆け回っており、経営戦略や計画をしっかり作り込む余裕がない。

こうして一度ジレンマに陥ると自力での脱出は困難で、どうにか現状維持で経営を続けていくしかありません。そんな企業がブレイクスルーを果たすために、M&Aという突破口を選択するようになったのです。

まとめ

M&Aの市場規模の推移と、特徴的なトレンドを解説しました。

数字で見ると、ここ20年程度でM&A市場が大きく発展しているのは間違いありません。

買う側としても買われる側としても、経営者であれば誰もがM&Aに関わる可能性がある世の中なのです。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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