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M&Aを税理士・会計士に相談するメリット・デメリット

[著]:小川 潤也

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当サイトのコラムでも再三繰り返してきましたが、M&Aにおいては相談相手の選び方は非常に重要なファクターとなります。

経営者が重要な相談をしたいという場合、真っ先に顧問の税理士や会計士の先生を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、この判断は要注意です。

本記事では、オーナー経営者が税理士・会計士に相談することのメリットとデメリットを解説します。

自社に対する理解度の高さはメリット

税理士や会計士は、自社と長く付き合ってきている場合が多いです。2代目以降の社長であれば、先代の頃から付き合いのある老先生で、財務上のアドバイスのみならず従業員のマネジメントからちょっとした日常の愚痴まで、いわば経営者の先輩として相談に乗ってもらっている、というケースは少なくありません。

孤独になりがちな経営者にとっては、数少ない心を許せる相手であるケースも多いでしょう。したがって、M&Aを検討している、という場合も相談するハードルは低いことと思います。従業員や取引先に情報が漏れる心配もほとんどありません。

長い付き合いのある税理士や会計士へ相談する場合、自社のことを深く理解してくれているのは大きなメリットです。

財務諸表の内容を知っているだけでなく、昔からどのような会社であったかという財務的なストーリー、中核的な役割を果たす従業員、また経営者自身の特長やクセも把握しています。こと重要な経営判断となった場合、意見を仰いで見るのは決して悪いことではありません。M&Aを実際的に進める前の検討段階であれば、相談してみるのもいいでしょう。

税理士・会計士はM&Aのプロではない

しかし、だからといって税理士や会計士がM&Aの判断における的確なアドバイスをくれることはあまり期待できません。なぜなら、彼らはM&Aのプロではないからです。

当社もM&A案件を手がける際、協力関係にある会計士に依頼をすることはあります。しかし、これはあくまでM&Aにおける正確な企業価値の算定を助けてもらうため。M&Aの実務自体をサポートしてもらうわけではありません。

税理士の株価算出とM&Aの企業価値算定の違い

M&Aにおける企業価値の算定は、あくまで適正な譲渡価格を導き出すために行います。

税理士が普段、企業の株価を算出する方法は相続税を計算する際に株価を計算する方法です。類似業種比準価額や純資産価額がその計算方法です。しかし、M&Aにおける株価評価、企業評価はあてはまらないことがほとんどです。算定結果をもってどのような判断をするのかは、当社がアドバイスしながらクライアントの企業が判断します。

つまり、そういう意味では、顧問の税理士や会計士に「どれくらいの価格で売れるの思うか?」といった意見を仰いでも、理論値としての株価は参考値として算出できますが、あまり意味はないのです。M&Aの場合は買い手があってこその企業価値だからです。

そして、相続税の評価する場合はより、株価を低くする方が税金が安くなるので得ですが、M&Aの場合はその反対に高くなったほうが、売り手には得になります。

この会社には買い手がつきそうだ、という判断一つとっても、M&Aのプロにはプロなりの明確な根拠と、現場経験に基づいた勘があります。うっかり無責任な意見を聞いてしまえば、決定的に判断を間違えてしまう危険性もあるのです。

大切なのは「士業との連携」

ただし、税理士や会計士が皆、M&Aにおいて全くサポート役にならないわけではありません。

前述したように、プロのM&Aコンサルティング会社が中心になって、M&Aの実績の多い士業の先生の助けを部分的に借りることは、M&A成功の確率を多いに高めます。言い換えれば、M&A案件を依頼するM&A仲介会社やM&Aコンサルティング会社が、それぞれの専門領域におけるプロをチームとして組成する力をどれほど持っているのかが非常に重要なのです。

したがって、顧問の税理士や会計士の先生は経営相談の相手としては最適です。長くにわたり御社の経営状況や財務内容を一番身近に見ていた専門家ですので、社長の人柄や考え方もわかった上で相談にのってくれるはずです。しかし、実際にM&Aをするかどうかを相談するのはお奨めしません。税理士として顧問先がなくなるということもありますし、利害が一致しないからです。

もし相談するにしても、M&Aの判断というより一般論として質問するか、あくまで自社の経理、財務的な部分を確認するのに留めてください。特に老先生の場合は、時代的にM&A案件に関わった経験もほとんどないはずです。

まとめ

M&Aは言うまでもなく、非常に重要な経営判断です。相談相手を間違えることは、それだけで大きなリスクになります。

下手に素人に知ったかぶりをされてしまっては、重要な決断を誤ることにつながりかねません。

M&Aを検討するのであれば、まず自分でよく考えた上で、必ず専門のM&A仲介会社やM&Aコンサルティング業者に相談するようにしてください。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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