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ローカルM&Aマガジン

M&A業者から大量に届くDM!――「キケンな業者」を見分けるポイントは?

[著]:小川 潤也

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M&Aのアドバイザリー契約を結んでいるお客さまのオフィスでその段ボールを見せられたとき、私は唖然としました。

段ボールのなかには、100通はあろうかというDMの山――すべてM&A業者からの「会社を売りませんか」というセールスレターだったのです。

M&A市場が過熱するにつれ、多くの会社にその種のDMが大量に届くようなりましたが、なかには悪質な業者も存在します。

今回の記事では、大量に送られてくるDMから危ない業者を見極め、自社に適したパートナーを見つけるポイントを解説します。

なぜ、大量のDMが送られてくるのか?

まずは、M&A業者からのDM攻勢が激しくなった背景を分析してみましょう。

M&A市場の競争が激化

近年の中小企業のM&A件数の増加に伴い、M&A業者の新規開業が目立つようになりました。

その結果、M&A業界では顧客の激しい取り合いが起こっています。

従来のM&A業者は、口コミや紹介などの案件をこなせば十分に経営が成り立っていましたが、現在では積極的に新規開拓をしなければ生き残れない時代となりました。

こうした事情から、なりふりかまわず多くの企業にアプローチをするM&A業者が増えているようです。

どんな企業を狙っているのか?

M&A業者によるDM攻勢のターゲットになるのは、売り手候補になりそうな会社です。

M&A業者にとってみれば、M&Aの買い手になる会社の開拓はさほど難しくありませんが、優良な売り手企業というのは大変貴重な存在です。

とくに経営者が高齢の場合、後継者がいない可能性があるため、M&A業者の恰好の的になります。

帝国データバンクや東京商工リサーチに自社の情報を登録している場合は、社長の年齢がデータ上で閲覧可能になるため、両社に登録している高齢社長の会社には、送られてくるDMの量が爆発的に多くなるようです。

冒頭の例で述べた会社もあるリサーチ会社に情報を登録しており、社長の年齢は70代後半でした。

キケンな業者を見分ける3つのポイント

ここで注意すべきのは、DMでアプローチしてくる会社のなかには怪しい会社や実力不足の会社が多く混ざっているということです。

DMの山からキケンな業者を弾くための、3つのポイントを紹介しましょう。

ポイント①大手だからといって安易に信用しない

大量にDMが届くと、名前を知っている大手仲介業者をつい選んでしまいがちです。

しかしM&Aにおいては、大手業者には注意が必要です。

大手業者のなかには、契約すると最初に「着手金」を請求する業者もいます。しかも、この着手金は、相場が100万円前後と非常に高額です。

さらに大手のなかには、着手金を受け取ったあとはなにもしてくれない会社もあります。

大手は取り扱い件数が多いので、優良な売り手候補企業を常に一定数抱えています。

優良案件を優先してさばこうとするため、大半の「普通の案件」は優先順位が低くなり、着手金を支払った後はなしのつぶて……というケースも少なくありません

通常は、着手金は急ぎの支払いを求められるうえに、M&Aが決まらなくても返金されない契約になっています。

実は冒頭に挙げた企業も、当社と契約する3年前に某大手仲介会社と契約したものの、着手金を払って以降はまったく動きが見られなかったといいます。

ポイント②開封させることばかりに腐心するDMは危ない

証券会社や先物業者のような「営業会社」的なM&A業者は、DMにも以下のような特徴があります。


●派手なデザインで「とにかく会いたい」と大文字で訴えかける
●和紙に毛筆で案内が書いてあり、巧妙にコピーして使用している
●営業担当者の個人名が強調され、「一生懸命頑張ります!」と情に訴えかける
●封筒の宛名が筆で書いてあって目立つ

奇をてらったDMは目を引くもので、つい手にとってしまいますが、封を切ればその内容は、どんなアプローチ先にも当てはまるような定型文言が並んでいるだけ。

送り先の会社のことなどちっとも下調べしていないのがすぐに見てとれます。

このように大量に営業して、「引っかかればいい」「契約が取れればいい」という会社ほど、サービス面を軽視する傾向があります。

DMの反響を得ることばかりに注力した中身のないDMは弾いてください。

ポイント③代行業者や個人名から送られてくるDMは要注意

さらに、M&A業者自身ではなく代行業者から送られてきたDMは、それだけで除外すべきです。

M&Aは、当事者となる企業にとって一世一代の大事業です。

そのような大事なM&AをサポートするためのDMを、自社で発送すらしないという怠慢な業者は、そもそもの企業姿勢が疑わしいといえます。

ほかには、「丸の内や銀座のオフィス住所が書いてあるが、送り主が個人である」というDMも弾きましょう。

都心にバーチャルオフィスを構えているだけの個人事業主という可能性もあり、実力のほどはまったく信頼がおけません。

業者を選ぶコツは?

それでは、M&Aにおいては、どのような業者をパートナーとして選べばいいのでしょうか?

地元で実績を積んできた業者がおすすめ

とくに地方企業がM&Aを試みる場合、地元に詳しい業者に依頼することをまずおすすめします。

全国の経済とローカルの経済はまったく事情が異なり、エリア事情に精通している業者のほうが圧倒的に有利となります。

さらに、東京に拠点をおいた大手は出張回数に制限があったりして細やかに対応してくれないケースが多いのに対し、地元業者であれば細かな対応が期待できます。

ほかのポイントとして、なるべくM&A業者の担当者自身がベテランであることが望ましいでしょう。

ネームバリューのあるM&A業者は人の入れ替えが激しく、経験のない新人が出てくる場合が多くあります。

そうした若い担当者は会社からの業績ノルマを達成するために無理にM&Aを成立させようとしがちで、売り手企業にとって信頼できるパートナーにはなりません。

複数の提案から選ばせてくれる業者が理想

最も安心できるのは、早い段階で複数の買い手候補を提案してくれる業者です。

買い手候補を複数出せるということは、その業者が相応のネットワークを持っている事実を意味するからです。

買い手候補の提案以外にも、常に複数の選択肢を提示してくれる担当者は知識の引き出しが多いと考えられ、信用できるでしょう。

逆に、アプローチの段階で「御社を指名している買い手がいます」というセールストークをかけてくる業者は、絶対に信用してはいけません。

買い手企業が売却ニーズを表明していない会社を指名してくるはずがないからです。

まとめ

M&Aの成否は、関わる業者の知識やネットワーク力で天と地ほども変わります。

大量のDMが送られてくると、つい見栄えがよいものに注目してしまいがちですが、しっかりとDMの中身を精査しましょう。

「M&Aのプロなんだから、きっと信用できるはず!」という甘い考えはご法度です。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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