ローカルM&Aマガジン

M&A仲介会社か、アドバイザリー会社か? ベストな業者の選び方

投稿日:2021年7月20日

[著]:小川 潤也

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M&Aを考えているが、どの会社にサポートを頼めばいいのかわからない――中小企業の経営者から、しばしば聞かれる悩みです。

M&A業界には、大手M&A仲介会社から少数精鋭のM&Aアドバイザリー会社まで、専門業者が無数に存在します。

数ある業者からどこを選べばM&Aの成功に近づくのか、M&A初心者である経営者からすれば、わからなくて当然。

今回の記事では、M&Aを成功させるためにベストな専門家の選び方について解説しましょう。

無数に存在するM&A業者

そもそも、M&Aをサポートしてくれる業者には、大きく分けてM&A仲介会社とM&Aアドバイザリー会社の2種類が存在します。

それぞれの違いを解説しましょう。

M&A仲介会社は不親切?

M&A仲介会社とは、日本M&Aセンターなどがその代表例で、その名のとおり売り手と買い手の間に立って仲介役を務める会社です。

基本的には、着手金と成功報酬を売り手・買い手の双方から得るビジネスモデルになっています。

注意すべきは、M&A仲介会社はその性質上、どちらか片方だけの立場に立ったアドバイスはしてくれない点。

初めてのM&Aをなんとか好条件で成功させたい経営者からすると、自社に寄り添うパートナーとしては、物足りない場面が多くなるかもしれません。

とくに大手のM&A会社の場合は多くの案件を同時に持っており、「とにかくM&Aを早く成立させて成功報酬を得よう」と乱暴な進行をするケースもあるようです。

M&Aを経験した経営者の多くから、総じて「大手の仲介会社は不親切」「着手金だけが目当てに感じた」といった声がよく聞かれます。

現在のM&Aは仲介会社が入るケースが多いのですが、その場合も、大手企業より対応が細やかな中堅・中小の会社を選ぶことをおすすめします。

契約先に専属でつくのがM&Aアドバイザリー会社

次に、M&Aアドバイザリー会社について解説しましょう。

M&Aアドバイザリー会社はFA(ファイナンシャル・アドバイザー)とも呼ばれ、売り手企業あるいは買い手企業のどちらか一方と契約してさまざまなアドバイスをしてくれます。

M&Aアドバイザリー会社と契約してM&Aを実行する最大のメリットは、M&Aアドバイザリー会社は、契約先の利益を最重視してディールを進めてくれる点です。

M&A仲介会社のように中立の立ち位置ではなく、自社専属のパートナーとして知恵を振り絞ってくれます。

M&Aを試みるのであれば、売却の候補先選定をはじめ、譲渡金額や諸条件の調整まで、可能な限り自社の利益を高めたいところ。

しかし、実情は大手証券会社やメガバンク、監査法人の子会社などで、ディールサイズを10億円以上などとお客様を選ぶが傾向が強いです。だから、M&A成立のために売り手の意向を尊重し、経済合理性を突き詰め、理論武装をし、クライアントのため、フィーのために戦ってくれます。大企業向けといってもいいかもしれません。

M&A会社の選び方

以上のように、M&A会社には仲介会社とアドバイザリー会社があります。

それでは、どのような基準でパートナーとしてベストな会社を選べばよいのでしょうか。

選定にあたっては、次の4つのポイントが大切です。

ポイント①自社の規模に合ったパートナーかどうか

M&Aは、規模の大小やジャンルによって求められる知識やネットワークが大きく異なります。

たとえば、中小企業が大企業案件を多く手掛けているM&A会社に相談しても、求めるスキルを相手が持っていない可能性が高いのです。

さらに、「会社譲渡ではなく事業譲渡で一部だけ売ろうと思っている」「海外の企業に売りたい」などとニーズが明確な場合、求めるジャンルの知識を持っているM&A会社かどうか、よく調べる必要があります。

ポイント②報酬体系が納得できるかどうか

M&A会社の報酬体系は、各社一律ではありません。

業務委託契約を結んだ時点で着手金が発生する会社もあれば、全額がM&A成功後の成功報酬となる会社もあります。

さらに、「基本合意後に中間報酬」など、途中段階で費用が発生するシステムになっている場合もあるようです。

中小企業の場合、できれば着手金のない業者を選んだほうがよいでしょう。

最初の着手金が高額な報酬体系は、ディールが結局失敗に終わった際に着手金を丸々失う危険があるからです。

ポイント③事例があり、スキームを提案している会社かどうか

M&A会社を採用する最低条件として、事例やスキーム(株や事業を譲渡する方法)をきちんと提案できるかどうかということがあります。

実は、M&Aの専門家を名乗るのには、とくに資格などは必要ありません。

なかには専門家として不適格といわざるをえない会社も存在するのです。

「実態は不動産会社で、物件売買の延長でM&A案件もこなせると考えて多角化した」「創業者が自分の会社を売却した経験があるのでアドバイスができると思い込んでいるだけ」など、怪しいM&A会社もあるようです。

そのため、その会社にどんな実績があるのかは、事前にしっかり確認しましょう。

ポイント④地域に強いかどうか

売り手企業が地方の中小企業である場合、そのM&A会社が地元に強いかどうかも、重要なポイントです。

なぜなら、M&Aには知識だけでなくネットワーク力が求められ、M&A会社が地元の金融機関や有力企業、優秀な弁護士・会計士などと深い関係性を持っているかどうかで、ディールの結果がまったく変わってくるからです。

たとえば、当社は新潟と東京に拠点を持っていますが、2つの地域に持つネットワークが決め手となってM&Aが成功する事例も多くあります。

まとめ

残念なことですが、M&A業界には怪しい会社も多く、なかには実績がゼロに等しいのにプロを名乗っている会社も存在します。

そのような業者を避けるために、上記のポイントを事前にしっかり確認して、M&Aを信頼してまかせることのできるベストなパートナーと契約しましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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