単なる資金提供にとどまらず、経営支援まで一体となって提供するこのファンドは、まさに地域に根ざしたサステナブルな成長戦略の核ともいえる存在。
本記事では、地域創生ファンドの仕組みや特徴、活用事例、今後の展望までをわかりやすく解説します。
地域創生ファンドの仕組みと特徴!
地域創生ファンドとは、地方の中小企業や地域産業を支援する目的で組成される投資ファンドのことです。経済産業省や地方自治体、地域金融機関、民間の投資家などが出資者となり、「投資事業有限責任組合(LPS)」という形で設立されることが一般的です。
資金の出し手である出資者は、一定のリターンを期待しつつも、単なる利益追求ではなく“地域活性化”という社会的リターンを重視しています。
また、対象となる投資先は、ベンチャー企業から伝統産業の中小企業まで幅広く、地元の雇用や産業の持続可能性に貢献する事業が中心。
ファンドによっては、単年度で分配金を求めるのではなく、長期的な企業成長や事業継承を見据えて、3〜10年といった中長期の投資スキームを採用している点も特徴といえるでしょう。
参考:経済産業省「地域経済の持続的発展に向けた地域創生ファンドの取組状況」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sme_chiiki/jizoku_kano/pdf/006_04_00.pdf
地方を支える投資スキーム――なぜファンドなのか?
そもそも、地域振興の手段としてなぜ「ファンド」という形態が選ばれるのでしょうか?
大きな理由の一つは、銀行融資だけでは支えきれない成長投資ニーズを補完できる点にあります。とくに創業間もないベンチャー企業や、M&Aによる事業承継を目指す企業は、財務基盤が弱いため融資を受けにくい状況です。
そこで、地域創生ファンドが「出資」という形でリスクマネーを供給し、資金面から成長を支える役割を果たします。しかも、出資だけにとどまらず、ファンド運営者や支援機関が「ハンズオン支援」として経営課題の解決にも関わるのです。
このように、「金融×支援」を一体で提供できる点が、地域創生ファンドならではの大きな強みです。
出資だけじゃない! 経営支援や事業伴走の実態
地域創生ファンドは、単に資金を提供するだけではありません。投資先企業の経営戦略立案、人材採用、販路拡大、新規事業の立ち上げ、SDGs対応など、経営のあらゆる側面に対して支援を行います。
たとえば、支援機関に登録された公認会計士やコンサルタントが定期的に企業を訪問し、経営課題をヒアリング・改善提案を実施するケースもあります。
また、ファンド運営主体によっては、地域の商工会議所や大学・研究機関などと連携し、技術支援や産学連携を後押しする仕組みを設けている場合もあります。
こうした「伴走型支援」によって、出資後の企業成長を継続的に支えていくのが、従来のVC(ヴェンチャーキャピタル)や融資機関との大きな違いといえるでしょう。
地域創生ファンドの具体的な活用事例!
たとえば、新潟県では以下のような取り組みが行われています。
地方創生新潟2号ファンド(地方創生新潟2号投資事業有限責任組合)
2023年10月設立、約15億円規模のスタートアップ支援ファンドです。主に県内のシード〜ミドル期企業へ投資し、グローカルマーケティング(TOKYO PRO Market上場)などの投資実績があります。県と公的機関が連携しており、IPO支援も含む幅広い成長支援を目的としています。
参照:https://www.pref.niigata.lg.jp/site/sangyorodo/venture-fund.html?utm_source=chatgpt.com
にいがた産業創造機構関連ファンド
公益財団法人にいがた産業創造機構(NICO)が、創業や新事業展開を支援する「にいがた創業応援基金」などのファンドを運用しています。中小機構と連携し、地域資源を活かす中小企業支援に注力しています。
参照:https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/sangyoseisaku/1356884770352.html?utm_source=chatgpt.com
Future Food Fund(フューチャーフードファンド)
新潟市が推進するフードテック拠点「新潟フードテックタウン」構想の一環として、オイシックスとNSGグループが運営する食分野専門のベンチャーキャピタルです。培養肉や代替肉、農業DX領域への投資を通じて地域のイノベーションを支えています。
参照:https://www.kotora.jp/c/50494/?utm_source=chatgpt.com
ほかにも四国地域では「四国地域創生ファンド」が運営されており、観光業や伝統工芸分野におけるベンチャー企業への出資を通じて、地域の雇用創出と観光資源の活用を推進しています。
また、北海道や九州の一部では、地元信用金庫と民間企業が連携し、食品加工業や福祉事業など地場産業を支える中小企業を中心に出資・支援を行っている事例もあります。
いずれの事例でも、投資判断の基準として「地域経済にどれだけ波及効果があるか」「持続可能なビジネスモデルか」といった点が重視されており、ただの投資ではなく、地域政策の一環として機能しているのが特徴です。
活用に向けたポイントと今後の展望!
地域創生ファンドの活用を検討する企業にとって重要なのは、単に資金が必要かどうかだけでなく、「支援を受けながらどのように事業を成長させるか」という視点です。
投資先として選ばれるためには、財務状況だけでなく、事業の成長性や地域貢献度が問われます。また、ファンドとの契約条件や分配金の仕組み、ファンドの運営期間など、細かい制度面を把握したうえでの慎重な検討も必要です。
今後は、観光DX、地域医療、脱炭素社会などの分野においても、ファンドの活用領域が広がると考えられており、地域創生ファンドはさらに多様な形で進化していくでしょう。
まとめ
地域創生ファンドは、資金と支援の両輪で地方企業の成長を後押しする新たな投資手法です。経済産業省をはじめとした支援のもと、地域金融機関や民間事業者が連携することで、地方の中小企業やベンチャー企業にとって非常に心強い味方となります。
これからの地域経済を考えるうえで、地域創生ファンドの活用は不可欠な選択肢のひとつです。支援を必要とする企業にとって、持続可能な未来を実現するための第一歩として、この制度を上手に活用してみてはいかがでしょうか。

小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役
