「会社をたたむ」という選択肢は経営者にとって苦渋の決断。
経営のバトンをつなぐ後継者がいない、会社が債務超過状態にあるなど、やむを得ず会社をたたむ決断を迫られているケースが日本全体で増えています。
ですが、後戻りはできない慎重な決断です。会社をたたむには費用がどの程度発生するのか、必要な手続き、廃業を回避するためにできることを解説していきます。
そもそも「会社をたたむ」とは?
会社をたたむとは、解散・清算の手続きを行い、会社を廃業することを指します。
設立した法人が廃業したことを登記します。その過程において、買掛金や借入金をすべて弁済するほか、事務的な届出に進む前に、関係者に対する説明が必要です。
なお、廃業と倒産は異なります。
なお、会社をたたむ方法には会社法に則った「清算」と、債務超過の疑いがある場合などスポンサーが事業を引き継いでもらうことが決まったり、債権者の同意がある場合などにできるのが「特別清算」です。また、倒産となると破産法に基づいて、弁護士に申立てしてもらう、「破産」の3種類です。
本記事では「清算」による会社をたたむ方法を解説しますが、廃業しない選択肢について先に説明しましょう。
あなたの会社は本当にたたむべき?判断基準を知ろう
会社をたたむ企業の多くの理由は後継者不在の問題が解決しないことです。
国民の5人1人が後期高齢者(75歳以上)となる2025年問題が社会課題にあるように、企業経営者の高齢化が深刻化しています。
後継者不足が廃業の理由であれば、M&A(会社売却)によって第三者に事業を引き継ぐという選択肢があります。
業績が良かったり財産があったりする会社であれば、創業者が創業者利益を得られる可能性が高いです。
業績が下降気味で借金がある場合でも、事業の魅力や社会的意義があれば、「再生型M&A」や「救済型M&A」という選択肢があります。
金融機関と債務返済について調整しながらM&Aが実現するケースもあるのです。その場合は難易度が高いですが、実現できれば当事者の方はハッピーになれます。
「うちを買ってくれる企業なんかない」と最初から諦めてしまう経営者は多いのですが、再生型M&Aができる、M&A専門家や弁護士に相談してみると道が開けるかもしれません。
会社をたたむという具体的な選択を見てみると?
すでに会社をたたむという決断をされている場合は、費用や手続きについて知っておきましょう。ここからは廃業手続きの方法やかかる費用について解説します。
一般的な手続きで、債権者への支払いは残余財産で可能であることが前提です。
残余財産で借金の返済ができない場合は、債権者が同意してくれないので、この清算は難しくなりますので、ご注意願います。
廃業手続きの方法
会社解散・清算の手続きをして会社を廃業する場合、事務的な届出に進む前に、最初にやるべきは関係者に対する説明です。
従業員や取引先、金融機関などが主な関係者に該当します。
ただし、単に「廃業します」というのではなく、従業員にいつまで給与を支払うのか、借り入れの残高返済はどうするのかなど、現実的な話を詰めなければいけません。
加入している地域の商工会や組合からの脱会、法人で契約する保険の解約などもやっておきましょう。
次に法的に必要な事務処理について。まず、取締役会と株主総会での決議をとります。解散決議は普通決議ではなく特別決議で行なわなければいけません。ここからは事務処理を細かく説明します。
清算人の選任
会社清算の作業にあたる法的な担当者として「清算人」を選任します。清算人は、定款や株主総会で特別に定められない限りは取締役が選任されます。たとえば夫婦で会社を営んでいる場合は一人が清算人になり、社長が代表清算人となります。
解散登記
特別決議を行い、精算人を決定した後は、その2週間以内に解散登記と清算人登記を行なわなければいけません。2週間が過ぎて解散登記がなされないと法人税の納付義務が生じてしまうので注意しましょう。
「異動届出書」と「登記事項証明書」の作成・提出
登記が完了したら「異動届出書」と「登記事項証明書」を作成し、解散のための処理が必要な各公的機関に届出を提出します。会社の状況によって求められる書類が異なります。書類によって税務署への提出だったり都道府県税事務所への提出だったりと役所が異なるため、事前にしっかり調べてから準備しましょう。
社会保険や雇用保険の喪失届関係書類の提出
社会保険や雇用保険などの喪失届関係も提出が必要になります。届出関連はとても煩雑です。税理士や行政書士、社会保険労務士などに依頼することも視野に入れて検討するのがよいでしょう。
官報公告 ※廃業する会社に債権者が存在する場合
たたむ会社に債権者がいる場合は申し出が必要になるため、官報に公告を出します。申し出の期間には2ヶ月を設けます。
決算書類の作成
事業年度の開始日から解散日までの決算書を作成し、会社に残る資産と債務を確定させます。解散日から2ヶ月以内に確定申告を行ない、法人税を納付します。
残余資産の整理
金融機関などの債権者に債務を返済し、残った残余財産を株主、今回は社長様と奥様に持ち株比率に応じて配分します。非上場企業の株式や不動産などは換金しづらい場合があるので、専門家のサポートを借りて時間をかけて残余資産を整理することになります。
以上、最終の決算報告書の作成と株式総会における承認、そして法務局で清算結了の登記を届出して、会社をたたむ処理は終了となります。
廃業にかかる費用は?
上記の通り、廃業にかかる手続きは一人で進行するにはとても難しく、多くの場合、外部のパートナーに依頼する費用が発生します。
事務的な費用では、官報公告が10行で3万6000円。登記を何回かすることになるので、司法書士に頼むと10万〜15万円が登記の回数分かかります。ほかに、税理士に払う決算報酬が発生します。
また、従業員には会社都合で辞めてもらうことになるため、規定になくても退職金や特別手当を支払うケースもよくあります。
オフィスの撤去にもお金がかかります。売却が難しい機械や設備は廃棄するため、撤去費用がかかる場合があります。さらに拠点が賃貸の場合は原状回復の費用もかかってきます。
事務的費用は依頼した分だけ発生し、そのほか従業員の人数だけ退職金や特別手当が発生すること、廃棄やオフィスの原状回復費用などを認識しておきましょう。
費用を抑える方法は?
廃業にかかる費用を抑える方法の一つとして、国や都道府県の補助金の使用があります。
タイミングや自治体によっては、廃業を余儀なくされた会社への補助金や、廃業後に再度起業する場合の補助金、廃業後に経済的に困窮してしまった人に対する家賃支援の制度などが事例としてあります。
事業承継・引継ぎ補助金も存在します。これは事業承継や統合などによる廃業を対象にしており、ただ廃業したいだけの場合には適用されません。
まとめ
以上、ここまでが会社をたたむための手続きや費用、そしてM&Aで企業を存続させる選択について解説してきました。
会社をたたむことは経営者にとって頭を悩ませる大きな決断です。まずは企業を存続させる方法をM&Aという観点から、信頼できる業者に相談するのが、決断を下す前の第一歩として検討してみてください。
また、会社をたたむという決断に至った場合は、企業の関係者(ステークホルダー)に対する説明の仕方やそのタイミングなども重要です。費用はかかりますが、専門家に相談し、第三者の知見や力を借りながら、大切な法人を最後まで後悔ないように手続きを進められるようにしておきましょう。
最後とはなりますが、M&Aの会社は日本国内にもたくさんあります。当社、絆コーポレーションも相談先の選択肢の一つとしてご検討ならびにお問い合わせいただけますと幸いです。

小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役
