ローカルM&Aマガジン

M&A業者の残念な実態とあるべきコンサルティング

投稿日:2020年7月14日

[著]:小川 潤也

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M&Aは今や、大企業だけのビジネス戦略ではなくなりました。売上数十億円、中には売上数億円の中小企業がM&Aによる買収を検討することはもはや当たり前になり、譲渡価格も1億円に満たないというスモールディールが増えています。

本記事では当社自体の成り立ちや現在に触れながら、M&Aの大きな潮流を振り返りました。

もはや当たり前になった中小企業M&A

かつて「身売り」や「敵対的買収」、「ハゲタカファンドによる乗っ取り」といったネガティブなイメージで語られたM&Aですが、そういった悪い価値観は既に過去のものとなりました。

かつてはM&Aコンサルタントが提案に来ただけで死神が来たとばかりに追い払われた時代もありませんが、経営者としての前向きな判断でM&Aによる売却を積極的に考えるケースが随分と増えています。

そんな中で、高額の着手金だけ取っておきながら誠実な買い手探しを行わない、不動産などの資産の売買にしか目がいかずM&A成立後の事業継続を全く考えていない、そもそも実態は素人である自称プロ……といった、売り手企業も買い手企業も不幸に陥れるようなM&A業者もまた増えました。

M&A関連業は名乗ることに資格が不要です。需要が高まっていることを背景として玉石混交の業者が現れ、M&A市場は混乱の最中にあると言えるでしょう。

M&A業者に求められるバックグラウンド

当社は、都市銀行で法人担当として経営者と仕事をして、M&Aや事業承継案件に携わったこと、地方都市の一つである新潟での事業会社を経営してきたことをバックグラウンドに創業されました。

ベストなM&A業者とは

ベストなM&A業者とは、財務の専門知識を基盤としてM&Aをコンサルティングできる知見と、顧客である事業会社の経営者層の気持ちを深く理解できる、自分自身の経営経験を兼ね備えている業者です。プロとして専門知識があることはもちろん必須ですが、実は「事業会社の経営を実経験から知っている」ということも非常に重要です。なぜ、その決断をするのか、相手の気持ちがわかる、相談相手になれることがお客さまから求められていると思います。

M&Aコンサルタントとしていい仕事をするためには、売り手企業の経営者に深く踏み込むパートナーであることが必須。専門知識だけはあっても経営は自分の領域外と仲介業者の都合で話を進める担当者やビジネス書を読めばわかるような教科書的な正論で乗り切ろうとするM&A業者の担当者は、実は多いのです。

社長の気持ちは社長にしかわからない、というのは一面の事実であり、M&Aという究極の経営判断を関わる業者の条件としては重要なファクターになります。

企業の承継問題は日本全国の問題

ご存知の通り日本は超高齢化社会にあり、中小企業の承継問題はどこの都市でも顕在化しています。

地域の経済を支える地元企業の衰退は、地域経済そのものの衰退と直結します。そして、企業の力で地域を再び活性化させていくために、M&Aが大きな役割を果たすことになるのは間違いないのです。

3つの問題でM&Aにすすめない中小企業

当社がM&Aのコンサルティングに取り組む中で、売却を検討する経営者が抱える
「誰に相談すればいいのかわからない」
「世間体を気にして相談できない」
「自社の価値が客観的にわからない」
という3つの問題によく遭遇します。これは当社が拠点を置いている新潟の案件でも、他の都市の案件でも同様です。

これら3つの問題が邪魔をしてM&Aが進んでいかないのだとしたら、非常にもったいないことです。

会社が創業されてからの年月において、どの会社も何度も、倒産の危機を乗り越えてきたことでしょう。魅力がないはずがありません。それどころか、地方の企業ほど土地柄に合ったオリジナルの魅力を持っており、他の企業からすれば喉から手が出るほど魅力的である場合も少なくないのです。

中小企業のM&Aを阻む問題を経営者に寄り添って丁寧に取り除き、地方経済の再編と活性化に貢献する。これこそ、M&A業者としてあるべき姿です。

まとめ

どの会社にも、創業の思いや経営の指針があります。それを永続させていくことこそ経営者の役割であり、そのために避けることができないのが事業承継問題の解決です。

M&Aの件数が増えてきたとはいえ、まだまだスムーズに自社を手放してハッピーリタイアに成功した経営者は多くありません。

当社としては。企業を永続させていく一つの戦略としてのM&Aがさらに発展し、M&A業界のレベルもまた向上していくことを願っています。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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