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ローカルM&Aマガジン

あなたの会社を食い物にする「ハイエナM&A業者」の見分け方

[著]:小川 潤也

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M&A業者を名乗るのに、免許や資格は必要ありません。結果、M&Aの世界には非常にレベルの低い業者や悪質な業者が跋扈しているのが実態です。

本記事では、「ハイエナM&A業者」ともいえるようなひどい業者に依頼して、とんでもない後悔を招かないための知識をまとめました。

自社が勝手に売りに!?秘密保持すらできない業者

ハイエナM&A業者とは

「お宅の会社、売りに出るって噂ですよ」取引先からこう言われて、経営者は絶句。不安になって教えてもらったWEBサイトを見てみたところ、見る人が見れば自分の会社だと分かるような情報が、譲渡希望企業として掲載されていました。

この経営者は確かに売却で事業を手放すことを検討しており、M&Aの仲介サイトで問い合わせをして、何社かの担当者に相談しました。

そのうちの一社と、「お金もかからない」というので、契約書にハンコを押しました。でも、急がないし、「いいところがあれば考える」というそんな気持ちでした。

なぜ、M&Aの検討という会社の重大機密がだだ漏れになっているのか……。

上記は、当社が多数のM&A案件に関わる中で見聞きした実際のケースです。この会社の場合、経営者の将来計画の一環として、インターネットで探した業者にM&Aの基礎知識についてヒアリングしたのが原因でした。

その業者はなんと、M&Aの情報サイトに会社名は載せていなかったものの、地域や取り扱い商品、サービス、特徴などを掲載し、譲受先を募っていたのでした。

このケースでは経営者自身が取引先を一社ずつ訪問して、「悪質な業者と面談してしまっただけで、現状M&Aの具体的な予定はないので忘れてほしい」と釈明して回るはめに。従業員の間でも「うちは売られるらしい」と噂になってしまったので、社内の火消しにも大変な労力がかかりました。

M&Aのプロにとって秘密保持は絶対の掟。

クライアントと契約する際に機密保持契約も同時に結び、買い手候補の企業がかなり絞られて話が具体的になってこない限り、売り的企業の特定に繋がるような情報は絶対に外部に出さないのが当たり前です。

たとえ契約に繋がらなくても、相談に来た企業の秘密を守ることは職業倫理として徹底されています。

しかし、そんな最低限のことも守れない業者が実際に存在しているのが、M&A業界のお寒い実態なのです。

本業の片手間でM&Aを手掛ける業者には要注意

本業の片手間でM&Aを手掛ける業者

M&A業者には、経営コンサルティング会社や不動産会社が片手間で「M&Aもできます」とうたっているところが少なくありません。しかし、これらの兼業業者には要注意です。

経営コンサルティング会社や不動産会社はオーナー経営者にアドバイスをしたり、大きなお金をやり取りしたりする関係上、「会社の所有不動産を売りたい、場合によっては会社も売ってもいい」と相談を受けることが多いようです。

その結果、最近流行っているM&A案件だと、自身の取引先に片っ端から不動産情報と同じように紹介するのです。そんなにいろいろな業者が持ち回っている案件は誰も手を出したがりません。何か裏があるのではと考えてしまうからです。

そして、彼らのほとんどはM&Aについて全く知識がありません。成約実績すらないケースも珍しくないようです。

特に不動産会社については、売却価格の査定すら、M&Aにおける手法を理解していない業者が存在します。

M&Aの場合は会社にある資産の単純な積み上げではなく、事業のリターン等の様々な要素を加味して企業価値を算定しますが、不動産会社は単に保有不動産の総額をベースに積み上げるだけなのです。

売却価格の算定が全然違っていれば、M&Aの成約はもちろん実現しません。素人業者には相談するだけ時間の無駄なのです。

また、個人でやっている業者にも注意しましょう。個人業者が全てダメというわけではありませんが、M&Aの業界でやってきた年数や、個人としての成約実績を具体的に教えてもらい、信用に足る業者かどうか見極める必要があります。

中小企業のM&Aについては、「小規模M&Aの支援を行うべき地域金融機関、公的機関、士業等は、十分なリテラシーを有していない場合が多く、人材を含めた体制の整備も十分に出来ていない」(近畿経済産業局「関西中小企業の事業承継時におけるM&Aの活用の実態」より)という自治体のコメントも出ているほどです。業者選びにはくれぐれに慎重になってください。

信頼できる業者を見極める方法

業者を見極める方法

M&Aにおいて相手が信頼できる業者かどうか見抜くには、以下のような条件を満たしているか面談で確認してみましょう。

M&Aの進め方や注意点を理解している

M&A専門業者や税理士事務所が大手を提携してM&Aを扱っている場合、本当に安心して、最後まで任せられるか、という経営者の目利き力をフルに発揮して、見極めることおすすめします。

その際に注意するのは3点です。

M&Aの目的を理解しているか

譲渡した対価(お金を誰が、どのくらい、どのような方法で欲しいか)の受け取り方などの提案がスムーズに出てくるか。

会社を売りたい、引退したい、従業員を守って欲しい、など、売り手の希望は多種多様です。そして何より、創業者利益として譲渡対価をどのような方法で得ることができるか。

そこについて親身に相談にのり、提案してもらえるかが重要です。要は、手段はなんであれ、会社を売ること、M&Aをやることだけが目的になっていないか、というところがポイントです

成約実績はどんな業界、業種か

M&Aの実績は豊富であれば、一見頼りになりそうです。しかし、どんな業界で、どんな規模の会社をM&Aしたのかを聞いてみてください。

自分の業界や規模と同じような成功体験を聞くことができれば、大丈夫です。しかし、ある業界に特化した経験や大きな会社ばかりであると、慎重に見極める必要がありそうです。

M&Aの専門知識を持った士業と連携している

M&Aにおいては弁護士や会計士、税理士など士業のプロとの連携が必須です。「企業法務に詳しい弁護士を紹介してもらえますか?」と質問したときに「うちの顧問弁護士を紹介します。」というのであれば要注意です。

M&A仲介会社、アドバイザリー会社も中立の立場である必要があるので、自社の顧問を紹介することはM&A会社にとって有利なアドバイスをするかもしれないというふうに受けとられる可能性があります。

当社はそのような場合は当社の顧問ではなく、その道のプロを案件によってご紹介し、サポートしてもらいます。

まとめ

M&A業者の中でも、プロとして十分な能力を有しているのはほんの一握りです。

本記事で紹介した優良業者の見分け方はほんの一面で、ハイエナ業者に引っかからないための注意点は他にも無数に存在します。

慎重に業者を見極め、信頼できるパートナーを選定しましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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