社長を引き継ぐにあたっては、中小企業庁の制度による「事業承継・引継ぎ補助金」、いわゆる「事業承継補助金」を得られる可能性があります。
今回は事業承継補助金について、その制度の仕組みと補助金を受ける方法を解説します。
社長引き継ぎで補助金が受けられる「事業承継補助金」とは?
まずは、事業承継補助金の概要を説明しましょう。
補助金制度の概要
事業承継補助金は、中小企業庁が掲げる「事業承継・世代交代集中事業」に沿った具体的な取り組みの一つです。
後継者の不在という問題により、多くの中小企業が廃業の危機に陥っています。
こうした状況を憂い、社長交代やM&Aを機に新しくチャレンジする企業を支援しようというのが、事業承継補助金の主旨です。
2021年の補助金実施についても、すでに決定しています。
「新しいチャレンジ」に対して支給される
事業承継補助金を受けるには、承継に伴って新しいチャレンジを試み、古い事業を廃業する企業である必要があります。
具体的には、以下の取り組みにかかる経費が、補助金の対象になります。
・新しい商品を開発または生産する
・新しいサービスを提供開始する
・商品の生産方式や販売方式を刷新する
・サービスの新たな提供方式を導入する
・販路拡大や新市場開拓、生産性向上などの施策
・事業転換による新分野への進出
事業承継補助金には2つのタイプがある
事業承継補助金は、2つのタイプに分かれます。それぞれ説明しましょう。
タイプ1:経営者交代型
経営者の交代を前提に、経営革新に取り組む事業者に支給されます。
詳細な適用要件は、冒頭に挙げた「中小企業庁 ミラサポplus」に記載がありますが、後継社長が「経営革新や事業転換に挑戦する」「一定の知識と実績がある」「地域の需要や雇用を守る」という3要件に当てはまる場合、補助金を受給できます。
なお、経営者交代型補助金は株式譲渡や事業譲渡による承継は対象外です。M&Aによる承継の場合は受給することができないので、ご注意ください。
この補助金は、主に親族内で事業を承継する場合が想定されます。
補助率はかかる費用の2分の1、補助金額の上限は250万円ですが、旧事業の廃業を伴う場合はさらに200万円が上限に上乗せされます。
タイプ2:事業再生・事業統合支援型
M&Aに伴う合併や会社分割などの事業再編を行なう場合に支給されます。
補助金を受けられる後継社長の要件については、経営者交代型と同様です。
「M&A型補助金」ともよばれ、経営者交代型に比べて補助金の上限額が高くなります。
補助率はかかる費用の2分の1、上限額は500万円ですが、やはり旧事業の廃業を伴う場合は、200万円が上乗せされます。
補助金の採択を受けるには?
それでは、どうすれば事業承継補助金を受けられるのか。その具体的な方法を説明しましょう。
経営革新等支援機関の確認書が必要
事業承継補助金の申請には、経営革新等支援機関から「確認書」を受領する必要があります。
経営革新等支援機関とは、企業から経営に関してアドバイスするうえで必要な知識と実績を備えていると、国から認定された機関のこと。
金融機関やコンサルティング会社のほか、税理士や公認会計士、司法書士や弁護士などの士業をはじめとした、幅広い業種が認定されています。
支援機関の実力がカギを握る?
補助金の申請は、支援機関からの確認書を得てからは、基本的には自社で必要資料をまとめて申請を出すことになります。
資料をきちんと正確に揃えて提出するのは当然ですが、いかに自社の取り組みが補助金の要件と合致しているのかを示す補足説明資料を添付することで、採択率を上げられるかもしれません。
補足説明資料については、経営革新等支援機関からのアドバイスを受けて作成するとよいでしょう。
その意味では、支援機関が書類に対し、いかに的確なチェックをできるのかが、補助金の採択に影響するといえます。
まとめ
事業承継補助金は非常にメリットの大きな制度ではありますが、注意点が一つあります。
それは、補助金は、費用を使ってからの後払いになること。
そのため資金繰り策などには使えないので、その点はしっかり留意しておきましょう。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役