優良企業であるのにもかかわらず後継者不足が深刻になっている昨今、金融機関は「隠れ優良企業」に融資しようと血眼になっており、ファンドや大企業もM&Aの対象として「隠れ優良企業」を求めています。
事業承継を円滑に進めるため、「隠れ優良企業」になるための条件を解説します。
「隠れ優良企業」とは?
まず、「隠れ優良企業」とはどんな企業であるのかを定義しましょう。
ポイントは次の3点です。
売上高は問わず、安定経営である
企業の多くは、売上高を基準にその価値を測られます。
しかし、売上高が低くても財務的に評価すべき面が多い企業も多く、そういった企業は「隠れ優良企業」であるといえるでしょう。
知名度が低い
どんな優良企業であっても、知名度が低ければ埋もれてしまいます。取引先数が少ない、業歴が短い、広報施策をまったく打っていない……そういった企業は、「隠れ優良企業」の可能性が大きいのです。
財務資料に出ない強みがある
金融機関などが企業を判断するにあたっては、その企業の財務資料に頼る部分が大きいですが、財務資料に出てこない有形・無形の強みがある場合は、「隠れ優良企業」になりえます。
隠れた強みにどのようなものがあるのかについては、以降で詳しく解説します。
隠れ優良企業の条件
では、具体的にどのような特徴を備えた企業が「隠れ優良企業」になりえるのか?
その条件としては、次の5つが挙げられます。
①「粗利」を安定して稼ぎ続けている
売上高や経常利益が低いとしても、注目すべきは「粗利」と「営業利益」です。
粗利=売上総利益を継続して高い水準で稼いでいる企業とは、商品、サービスの粗利率が高いということです。粗利率が高くとも売れるということは商品、サービスの付加価値が高いということが言えます。それが営業利益を生み出し、キャッシュフローにつながっていきます。現状の最終利益は良くなくとも、資金調達によるレバレッジをかけたり、大企業の傘下に入ってコストメリットを働かせたりすることで、高収益企業に化ける可能性があります。
金融機関やM&Aの買い手からの、高い評価の対象になりえるでしょう。
②優良資産を持っている
事業自体の収益力が高いとはいえなくとも、本社所在地や工場用地の不動産の活用価値が高いなど、保有資産が高付加価値である場合は「隠れ優良企業」であるといえます。
地元の優良企業と株の持ち合いをしており、多くの含み益が出ているというのも、「隠れ優良企業」にしばしば見られます。
こういった場合、保有資産に価値を感じてM&Aのオファーが来る可能性もあります。
③取引先に将来性がある
強い信頼関係で結ばれた取引先が多く、しかもその多くが業績を伸ばしている……といったケースも、「隠れ優良企業」と見なすに値します。
取引先が飛躍すればするほど、自社に対する恩恵も増す可能性が高いからです。
④体制が安定している
業績としては苦戦を強いられているものの、従業員の忠誠心が高く、離職率が低く、一人ひとりが稼いでいる利益で見ると優秀……こういった要素も、「隠れ優良企業」の資質です。
体制的な強みについて経営者が具体的に説明できる、経営改善さえできれば飛躍できる、と外部に納得してもらえるようであれば、「隠れ優良企業」といえるでしょう。
特に、実務を仕切る「番頭」の実力は重要で、トップ直下のナンバー2がまだまだ現役の世代で、番頭以下の社内が一丸となっている体制は、金融機関やM&Aの買い手に好まれます。
⑤社長が優秀
外部要因によって業績が落ちたとしても、社長の能力次第では、充分に「隠れ優良企業」となりえます。
金融機関では「人を見て貸す」という格言があり、融資環境がかなりシビアになった昨今でも、社長の器に期待して融資を決めるようなケースが存在します。
短期的に業績が厳しくなっても、社長の過去の実績がしっかりしており、今後の改善のビジョンが明確に語れるようであれば、救 いの手が差し伸べられるかもしれません。
まとめ
以上、金融機関やM&Aの買い手から隠れ優良企業と見なしてもらいやすい条件について解説しました。
あなたの会社が事業継承に悩んでいたり、業績不振に喘いでいたりしたとしても、実は「隠れ優良企業」である可能性は大いにあります。
その場合、あなたの会社の強みを、経営者自身が外部に対して具体的に説明できるかどうかが重要です。
あらためて、会社の強みがどんなものであるのか、社内で議論しながら棚卸ししてみることで、活路が見出せるかもしれません。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役