経営者個人が得られる利益や自社の事業とのシナジーなど、M&Aで会社を売却するメリットは様々にあります。ただ、それらの実利的な面以上に、M&Aには大きな意義があるのです。
見過ごされがちな「M&Aの真の目的」について考えてみましょう。
M&Aは実利的な面だけではない
後継者問題、会社の業績への不安、経営者保証の借金……売り手企業の経営者が抱える問題を解決するための、M&Aは有効な手段です。加えて、うまくいけば大きな利益を創業者は手にすることができます。
しかし、当然ながらM&Aはそうした売り手側のメリットだけのために行われるものではありません。売り手と買い手の双方を取り巻く様々なステークホルダーが皆幸せになるために、M&Aは行われるのです。
いいM&Aが成立すれば、社員の待遇は向上したり、より安定したりします。お客さんにとっても、M&A後に業績が改善するのは嬉しいことです。外注先にしても発注が増えるチャンスがあります。
M&Aは、このように皆が幸せになるための手段。それ自体が目的ではありません。
M&Aの真の目的
「M&Aの真の目的は何か?」と問われれば、私(小川)は「会社を永続企業にすること」だと答えます。
近年、多くの企業が「サスティナビリティ経営」を掲げるようになりました。
地球環境に優しい経営といった意味合いで使われていることも多いようですが、サステナビリティとは本来は持続可能性という意味。事業を営み続け、利益を継続して挙げ、ステークホルダーに長きにわたって貢献する経営、というのが本来です。
サステナビリティ経営の成立する条件には、同じ体制をずっと続けていくことは含まれません。サステナビリティ経営を実現する手段は、一定の体制でただ安定した経営を継続することだけではないのです。
必要なときにはオーナーをバトンタッチし、会社のありようを変えて経営を持続するのも立派な手段です。M&Aは、サステナビリティ経営をずっと続ける企業になるための有力な一手になりえます。
会社は社会の公器
松下電器産業(現・パナソニック)の創業者であり、「経営の神様」と言われる故・松下幸之助氏は、次のような言葉を残しました。
「会社は社会の公器である」
会社とは、社会のために存在する。経営者や従業員、他一定の関係者の個人的利益のために会社が存在するわけではなく、会社とは存在そのものが社会性を帯びている。そういった意味合いです。
私はこの言葉がとても好きで。社会の公器としての役割を次世代も全うするために、M&Aという手法が存在するのだと思うのです。
当社、絆コーポレーションは本社を新潟に置き、東京や他の大都市の案件だけでなく、地元企業のM&A案件を多く手掛けています。そんな事業をやっていると、地元の優良企業や、心から尊敬できる経営者にたくさん出会います。そんな出会いを得るたび、「日本の経済の屋台骨を支えているのはこういう地元の企業なのだ」と実感するのです。
このような、地域経済を引っ張る会社をM&Aを通じて適切に事業承継させ、サステナビリティのある経済を次代に受け継いでいくことこそ、当社の使命だと考えています。
そしてもちろん、当社もそうした地域経済の一部です。私はM&Aコンサルティングの会社だけでなく介護系の人材会社も経営しているので、地方で実業を営むプレイヤーの一員として少しでも地元に貢献したい、という思いをいつも抱いています。
まとめ
ひと昔前はM&Aといえば「身売り」のイメージがあり、実際、経営が傾いた会社を大資本が吸収する形の案件が多くありました。
しかし最近では経営者の側も、経営を持続させるための手法として前向きにM&Aを決断するケースが圧倒的に多くなっています。
M&Aの件数自体も全国的に増えている状況だからこそ、経営者には流されることなく、「何のためのM&Aなのか?」というテーマをしっかりと考えてほしいと思います。
経営者の軸がブレない姿勢に基づいてM&Aを実行してこそ、自社が長期的に経営を続けていくための正しい決断となるはずです。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役